いざという時に備えるお金と言えば思い浮かぶのが保険でしょう。生命保険協会の調査では、平成30年度の新契約件数の内訳を見ると、最も多かったのが医療保険だったそう。特に女性の場合は、医療・ガン保険などの病気にまつわる商品が6割近くを占めています。死亡した時のお金はともかく、医療保険には入っておきたいと考える人が多いのでしょう。
では、実際に入院したとき、医療保険はどのくらい役に立つのでしょうか? ある疾病で長期に入院または通院しているという人もいると思いますが、LEE世代ではまだそう多くはないでしょう。どのくらいお金がかかるのか、ピンと来ないかもしれません。今入っている医療保険だけで本当に足りるのか、心配な人も多いでしょう。昨年末に実際に入院・手術を経験し、意外なものがネックだとわかりました。参考にしていただければと思います。
病院の都合なら払わなくてもいいお金も
日本の保険制度には「高額療養費制度」があり、たとえ医療費が高額になっても自己負担額には上限が設けられています。所得に応じてその金額は決められており、およそ月収28万円~50万円の人の場合だと、だいたい月額で8万円まで。預金があればわざわざ保険に入らなくても足りる程度の金額です。
ただし、ここには含まれないお金もあります。病院で出される食事代や借りた備品代、そして差額ベッド代です。
本来、病院のベッド代は無料のはずですが、患者本人が有料ベッドを希望すれば支払いが発生します。さらに大部屋よりも個室がいいとなると、よりその金額が上がります。そして、これは高額療養費制度の範囲には含まれません。もし医療費の負担上限が8万円だとしても、それにプラスで差額ベッド代が発生するわけです。「じゃあ、希望しなければいいじゃない」と思うのですが、これがなかなか難しいことも。私のケースでは入院前にいろいろヒアリングがあり、希望するベッドについて第三希望まで聞かれました。あれ? 第三希望ということは、それは「患者が希望しました」という意味では…と気づき、第二希望までにしておきましたが。
つまり、憶えておきたいことは「希望したらお金を払う」という点。
逆に患者は希望していないけれど、有料の部屋しか空いていなかったという病院側の都合であれば、たとえ有料の部屋を使っても差額ベッド代を払う必要はありません。ここが重要なのですね。多くの人がつけている医療保険は入院日額5000~1万円だと思います。手術給付金が出る場合は、入院日額の10倍・20倍・40倍が受け取れる額となります(倍数は手術内容により決まり、約款に記載がある)。もし、入院・手術が決まったら、全体でいくら給付金が出るかはなんとなく計算できます。日額5000円で5日入院、倍率10倍の手術だとすれば、計7万5000円ですね。「使用するベッドの希望は?」と聞かれる前に計算しておくと、出せる金額の目安になるでしょう。
ベッドの希望を聞かれると、多くの人は、第一は無料ベッド、次の希望は大部屋の有料ベッド、その次は…と順に高い方に行きがち。個人的には第三希望まで答えない方が、と思っています。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。