“いくつになっても恋がしたい！”のは、今や当然の感覚として認識されている。でも、大人になるほど恋に臆病になるのも、また事実。だってもう情熱だけで突っ走れない……なんて本当！？ 人生の酸いも甘いも十二分に知った本作のヒロインが、思いがけない激情にズブズブとハマっていく姿は他人事と思えず、“イタいよ、もう！！”とイラッとしつつ、心の裏側で共感を覚えるのも否めない。さて貴女は？

知的で美しい大学教授のクレールは50代、2人の息子を持つシングルマザー。子どものいない週末は、若い建築家リュドと情事を楽しむ。ところが、彼が突然連絡を無視するように。クレールは彼の動向を探るためFacebookを開くが、承認も拒否される。そこで新たなアカウントで、リュドの友人アレックスに近づく。FB上でクララと名乗り、アレックスとチャットで親しくなり、つい24歳と偽ってしまう。やがて、どうしても写真を見たがるアレックスに、若い女性の写真を送ってしまう。連絡は電話に変わり、いつしか昼夜を問わず熱愛状態に。当然アレックスは、狂おしいほどクララと会いたがるが……。

誰かに恋焦がれられる悦び、その至福感！　フランスの大女優ジュリエット・ビノシュが、恋する可憐な表情、クールな大人の妖艶さ、さらに絶望にあえぐ老いた女の痛々しさまで、変幻自在に体現して観る者の感情を揺らす。年下男にポイ捨てされジタバタ騒ぐのも、24歳になりきって一途に恋に走るのも、息子よりコソコソ電話を優先し愛をささやく状態にも、誰より驚いているのは聡明なクレールに違いない。アレックスに正体を明かすかどうかの中盤以降、クレールが抱える衝撃の過去も明らかになり、さらに意表を突かれる展開に！

ヒッチコックが引き合いに出されるのも納得！ 追い詰められたクレールとアレックスがたどる運命、二転三転するサスペンスフルな展開に、もはや白昼夢を見ているように心が彷徨する。もう、誰かに話さずにいられない！
（1月17日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開）

■「私の知らないわたしの素顔」公式サイト

『グエムル－漢江の怪物－』などのポン・ジュノによるカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。半地下に住む全員失業中の一家の長男が、裕福な家の娘の家庭教師代理に。経歴詐称し気に入られた彼は、妹を絵の先生に、次に父親を運転手に推し、遂に一家全員が入り込む。あれよあれよの展開に爆笑必至、彼らを待ち受ける運命に驚愕。またもソン・ガンホの熱演さく裂！ オチにも痺れる傑作コメディ。
（1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開）

■「パラサイト 半地下の家族」公式サイト