
新しい年が始まりました。普段離れて暮らす両親や親族と年末年始を過ごした人もいいのではないでしょうか。
親の顔を見ると、「お互いに年を取ったなあ」と感じるものです。個人的な話で恐縮ですが、昨年末に親族が亡くなり、正月休み中に葬儀を行うことになりました。その体験から、離れて暮らす親にもしものことがあったとき、誰に連絡を取ればいいのか、現在の親の交友関係を知らないことに気づかされました。もちろん、入っている保険や預金口座のある金融機関はどこかなどの情報もです。突然、遠方にいる親が倒れた時に、本人の保険証のありかやかかりつけの病院はどこなのか、そういうことがわからないのでは家族が困ります。「いざという時」の話は普段はなかなかしにくいものです。
例えば親との会話で、周囲で入院した友人がいるとの話が出てきたときに、「もしそうなった時に何もわからないと困るから、スムーズに手続きできるように元気なうちに教えておいて」と切り出すとよいかもしれません。
介護のお金は、本人である親が出すのが原則
2019年に大きな話題になった老後資金2000万円問題ですが、あれはあくまで毎月の生活費ベースで試算したものでした。誰もが一生自立して暮らせればよいですが、高齢ともなれば介護サービスに頼る時期も来るでしょう。介護保険の加入者は親御さんなので、自己負担分は親自身が支払うのが原則です。親御さんのお金を使って支払うためには、どこにいくらの預貯金があるのかということも知らなくてはいけませんね。
介護費用のヒントになるデータとして、生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年度)では、一時的にかかった費用が平均で約70万円、月額の平均が約8万円、介護を行った年数が約4.7年となっています。これで単純計算すると500万円ほどに。また、第一生命が行った認知症の介護費用と期間の調査では、一時費用に平均41万円、月額が10.7万円、介護期間が約4.1年とあり、こちらも合計で500万円以上にのぼります。さらに、こちらは一人当たりの金額ですから、両親ともダブル介護となる想定もしておかなくてはいけません。
この数字を見ると子ども世帯が抱え込むのは難しいとわかるでしょう。正月に元気な顔を見たからこそ、いずれ来るだろう入院・介護を他人事にせず話題に出すことも大切。お金のことというよりも、この先どんな暮らしをしつつ人生を全うしたいか、まずそんなことから話し始めるのはどうでしょうか。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。
















