11月末の感謝祭(サンクスギビング)が終わると、ニューヨークは1年で1番、街がキラキラするホリデーシーズンが始まります。
ニューヨークのクリスマスといえば、ロックフェラーセンターの巨大ツリーがお馴染み。街中では至る所で生のもみの木が売られていて、その場で買うと配達してくれますし、購入したもみの木を車のボンネットにくくりつけて走る車もよく見かけます。担いで持って帰る人もチラホラ。
でも、ニューヨークは言わずと知れた人種のるつぼ。クリスマスを祝わない人も多く、一般には「メリー・クリスマス!(Merry Chritsmas!)」と言い合うより、「ハッピー・ホリデー(Happy Holidays!)」と言う場合が多いです。そこで、ニューヨークのクリスマスに欠かせない「エルフ」の存在と、ユダヤ教の「ハヌカ」についてご紹介します。
クリスマスは「エルフ」とともに
モミの木ツリーに他に、クリスマスに欠かせないのが、「エルフ」です。
エルフとは、サンタクロースと一緒に北極に住んでいる妖精のこと。感謝祭後に各家庭にやってきて、子供がいい子にしているかどうか見守り、夜になるとサンタのところへ飛んで行き、その子がどんな1日を過ごしたか、クリスマスまで毎日報告するのです。
1番大切なのは、エルフに触ってはいけないこと。触ると「魔法」が解けてしまい、北極に帰ってしまいます。
その「魔法」のおかげで、子供はエルフが来ると「つい」良い子になってしまうのです!
我が家も幼稚園の頃からエルフが来るように。毎年感謝祭後にツリーを飾ると、そのツリーにちょこんと座っています。
エルフは毎晩旅をする設定なので、夜子供が寝てからか、朝起きる前に場所を移動させるのが親の役目(笑)たまに寝落ちして焦る場合もありますが、ソファーに移動したり、机の近くにいたり、いろんなところにいるので、探すのが日課にもなります。
子供が可愛いのは、「絶対に触ってはいけない」決まりを守ること。8歳の娘は、サンタクロースが実在するのか疑いながらもまだ信じており、今年も毎朝エルフの場所を確認し、時には「あ!トイレ行ってる間に動いた!!」と本気で驚いていたり・・・。
学校のお友達の家にもエルフが来ているようで、「あの子のエルフはタンスから落ちちゃって、お父さんがマグカップで拾ってタンスの上に戻したんだって」とか、みんな「触らず」に大事にしている様子が微笑ましいです。
8つのプレゼントがもらえるユダヤ教の「ハヌカ」
この時期、赤と緑のクリスマスグッズとともに、街中で多く見かけるのが青と白の「ハヌカ」(Hanukkah)のグッズ。ハヌカとは、ユダヤ教が迫害されていた時代の歴史に由来するもの。弾圧から逃れたユダヤ教徒たちが神殿に戻ると、ロウソクに火を灯すための油壺が汚されていたそう。唯一、汚されていない油壺に残っていた少しの油で火を灯すと8日間燃え続けた奇跡を、「ハヌカ」としてお祝いすることになったのがはじまりだそうです。
毎年ユダヤ暦によって日にちが決まり、今年は12月22日の日没後からスタート。
この「ハヌカ」に欠かせないのが、9本のロウソクが立てられる「メノーラ」(Menorah)と呼ばれる台。デザインにより、真ん中にあったり、下の写真のように左にあるメインのロウソクに火を灯し、そのロウソクの火で、1日1本ずつ火を灯していきます。ロウソクを立てる順番も決まっており、初日はメインのロウソクと1番右、2日目には1番右から2本立て、新しい方のロウソク(左側)から順番に火をつけるそう。「ハヌカ」用のロウソクが売られているので、お誕生日用のロウソクが余ってるから代わりに、なんてことはダメ。
そして「ハヌカ」が続く8日間、子供は毎日プレゼントがもらえるんです!
ユダヤ系アメリカ人の旦那さんと国際結婚したゴリン友理佳さんも毎年親戚で集まり「ハヌカ」を祝います。
「国際結婚の家庭では、クリスマスとハヌカを両方祝う家もあるので、私たちも子供を持つ前に、旦那さんとハヌカについてよく話し合いました」という友理佳さん。しかし、義理の祖母がホロコーストを経験しアメリカに移住した経緯があるだけに、クリスマスは祝わずハヌカだけ祝っているそうです。
8つのプレゼントは、子供の「欲しい物リスト」を作成し、友理佳さん夫婦で8つ用意。さらに、親戚からも「欲しい物リスト」から買ってもらうため、プレゼントが多すぎると「夫婦喧嘩の元になる(笑)」と言いますが、「クリスマスになんでサンタさんが来ないの?と子供がネガティブな気持ちにならないよう、ハヌカでよかったと思ってもらいたい」と、長男と長女には一大イベントになっています。
長男のエリオット君(1年生)には、「うちにはサンタさんは来ないよと小さい頃から言っているので、サンタさんが来ない理由をわかっているみたい。だから、『サンタさんを信じている子には言わないでね』と言うと『オッケー』って。幼稚園に通う妹は、クラスでサンタさんの塗り絵をしたりもしますが、セサミストリートやキュリアスジョージ(おさるのジョージ)でもハヌカの絵本が沢山あるし、学校にもユダヤ系の子供もいるし、疎外感は感じていないです」と言う。
同じように、ユダヤ系アメリカ人のご主人を持つ牧野佐絵さんファミリーは、「ハヌカをお祝いするけど、うちはプレゼント1つ」。各家庭によってハヌカの祝い方も様々のようです。
ハヌカでは油であげたものをお供に
「ハヌカ」が8日間燃え続けた奇跡の油に由来していることもあり、ジャガイモの薄切りをかき揚げのように揚げたラッカ(Latkes)やドーナッツなど「揚げ物」を食べて祝うのが一般的。
友理佳さんファミリーは、8日間の週末に親戚が集まり、伝統料理などを持ち寄ります。義理の母が集めているメノーラは20個ほどあるんだとか。そして、それぞれメノーラに火を灯すと、圧巻の光景はこちら!
そして友理佳さんご夫婦が2014年12月に当時のオバマ大統領によるハヌカパーティーに招待された時のホワイトハウスのメノーラがこちら。
赤と緑の「クリスマス」と青と白の「ハヌカ」。ほかにもアフリカ系アメリカ人がアフリカ文化を祝う「クワンザ」(Kwanzaa)もこの時期にあり、本屋さんには関連した絵本が、エルフやハヌカの絵本と一緒に売られています。こんな日常の一コマも、ホワイトハウスでクリスマスとハヌカを祝うのも、お互いの文化を尊重しあうアメリカらしい光景です。
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田辺幸恵 Sachie Tanabe
ライター/ライフコーチ
1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。