岩波ホールで謎解きを! 伝説の児童文学作家の“なぜそんなに子どもの気持ちがわかるの?”の答えを見つけて!
2019.12.12

伝説の児童文学作家の、大きな愛の源泉をたどる感動作
『リンドグレーン』

© Nordisk Film Production AB / Avanti Film AB. All rights reserved.
『長くつ下のピッピ』『ロッタちゃん』『やかまし村の子どもたち』シリーズetc.……。世界で最も愛され、読み継がれている児童文学を生んだアストリッド・リンドグレーン。
やんちゃで元気いっぱい、私たちをワクワクさせてくれるユニークな主人公やその物語からは、想像できない悲しみを含んだドラマティックな作家自身の人生に、思わず驚愕。同時に、納得の深い嘆息も。本作は、16歳から、作家として花開く直前の約10年に光を当て、たぐいまれな才能の片鱗と萌芽を見つめる。
兄弟姉妹とスモーランド地方の自然の中でのびのび育ったアストリッドは、思春期を迎え、古いしきたりや男女不平等な社会に違和感を覚えていた。中学卒業後、文才を見込まれ地元の新聞社で働き始めた彼女は、編集長の秘書兼記者として活躍するように。だが後妻と離婚調停中の編集長と恋に落ち、妊娠。敬虔深い両親は悩み、アストリッドは妊娠を隠すためひとりストックホルムで暮らすことに。父親の名を伏せ出産、里親に託すも、息子を引き取る孤独な闘いが始まる。
アストリッドの、歯に衣着せず自由なもの言い、その溌溂とした姿がユニークで魅力的!
だが一回り以上年上の男性との情事から19歳で未婚の母になり、抱え込んだ大きな葛藤――恋人との関係は極秘、母からも子どもを手放すようすすめられる苦悩、孤独との壮絶な闘いに、そんなことが……とうなってしまう。冒頭、“なぜそんなに子どもの気持ちがわかるの?”と世界中から送られてくる手紙に目を通す晩年の姿から幕を開けるが、私たちも知りたかったその答え、子どもに対する温かな眼差しや、子どもらしさを全肯定する愛情の源は、なかなか引き取れなかった息子への罪悪感や悔恨でもあったと知ると、思わぬ感慨にため息が漏れる。
終盤、彼女の理解者としてハンサムな上司リンドグレーン氏が何度か登場するが、その名の示すとおり、アストリッドのその後の人生に光が差す控えめな描かれ方が、かえって観る者の心をときめかせる!
(岩波ホールにて公開中。ほか全国順次公開)
底辺にしわ寄せがくる社会に生きる一家の果てしなき受難
『家族を想うとき』

photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
© Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2019
『わたしは、ダニエル・ブレイク』の名匠ケン・ローチがまたも放つ、“他人事でない”社会派人間ドラマ。
家購入を夢見る父は宅配ドライバーとして独立。母はフリーの介護士。両親は働きづめ、高校生の息子は反抗期で爆発、寂しさを募らせる小学生の娘は家族を思って行動するが――。理不尽なシステムで過酷な労働条件に飲み込まれてゆき、家族ともどももう、どうしたらいいの!? と身悶え必至!
(12月13日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開)
取材・原文/折田千鶴子
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