8歳でも「経営者」に
「オリンピックを楽しむ選手になれるテニス教室」、「どこでもカフェ」に「なんでも本屋さん」、「Koala Cooperation」。
いずれも筆者の娘(8歳)が「社長」を務めた会社名です。もちろん、本当の会社ではなく、親子で遊びながら起業を体験できるボードゲーム「コドモ社長vsオトナ社長」での社名です。
「コドモ社長vsオトナ社長」は、小学生から大人までプレイすることができ、資本金300万円で「自分の会社」をつくり、カードを引きながら自分の会社を成長させていくゲーム。
引くカードには、「社員を雇う」「オフィスを借りる」「商品を仕入れる」など会社の流れがわかるもののほか、「不良品回収(リコール)」や「社員が投稿した動画がSNSで炎上」というリアルなアクシデントカードも。
商品を仕入れて「お客さん」カードを引けば売り上げになるが、社長である自分自身に毎月20万円のお給料(役員報酬)を支払うほか、社員を雇えば社員にもお給料を支払わなければならない。売り上げを伸ばしていくか、倒産するか。筆者の場合、親の私が先に倒産し、娘に「お金を貸してもらえませんか?」とお願いしたこともあり、親子でハラハラドキドキです。
小学生でも企業理念を考える機会に
初めてゲームをした時に「テニス教室」を立ち上げた娘は、順調に売り上げが出たためオフィスを借りるも、今度は売り上げが伸び悩み、オフィス賃料の支払いができずにあえなく倒産。
「お金ばっかり払って負けるから、もうオフィスなんて借りない!」と数日愚痴るほど悔しかったようです。
面白いところは、「ゲームで起業する会社でどんな人を喜ばせたいか」「どんな会社を目指したいか」や「どうすれば仕事をワクワク楽しめると思うか」などをみんなの前で話す機会もあること。
ゲームをやる前は「ちゃんと言えるのかな?」と思ったものの、始まってみたら、
「オリンピックに出ても、楽しんでテニスができるようになる」(テニス教室)
「美味しいコーヒーをいつでもどこでも出せて、みんなが喜ぶカフェ」(どこでもカフェ)
「日本は観光客が多いし漫画が人気だから、1つのビルで漫画を買えて、漫画の書き方も習えて、グッズも買えるビル」(なんでも本屋さん)
「かけ算を漫画で楽しめて、子供も大人も読める本を出す漫画の会社」(Koala Coorporation)
と意外や意外。しっかりと答えられるものだ。
それに、何度もゲームをやり、話す機会を経験したからか、回数を重ねると話す内容がどんどんまとまり、話し方もスムーズに。聞いていると「そういう会社、本当良さそうじゃない!?」なんて私が感心することも。
ゲームの企画・プロデュースを行ったブランコ・カンパニー株式会社の市原真理子代表は、
「親子で遊んで学べて、やってみたい事業や仕事観を話したり、普段できない親子のコミュニケーションを作るボードゲームにしたいと思いました。最初はどんな会社も1人、数人から始まったもの。世の中の数百人、数千人の従業員を抱えて商品やサービスを提供し続けている『会社』の凄さを改めて考えるきっかけになれば」と言う。
実際、筆者の娘はこのゲームをきっかけに「会社」に興味を持ったようで、何気なく水の入ったペットボトルを見ていても、「これってコーラなんだね。ジュースでも炭酸でもないのに、水も作ってるんだね」と今までとは違う視点で「商品」を見るように。
「最初はすごい難しいんじゃないかなと思いましたが、子供はバカにできない。子供でも、自分のやりたい会社についてトークして、楽しんでくれる。1回やると、大概の子はもう1回やるって言います。付き合う親が大変ですよね」と反応もいい。
ゲームの生みの親は「ママ経営者」
市原さんも8歳と4歳の娘を持つ母であり、ブランコ・カンパニー株式会社のほか、親子の好奇心をくすぐるウェブマガジン「UZUZU」を運営する「ママ経営者」だ。
「都心で共働きで子育てしていると、あっという間に時間が経っていて、気がついたら子供が大きくなっている。もっと一緒に記憶に残るような体験をしたり、子供と親も笑顔になれるような情報を集めて発信したいなって思って。受験に向けての塾とか、お勉強系の情報はすごく多いけど、これからの時代にすごく大事になると思っているアートやクリエイティブな発想を育むための情報は意外と集まっているところがない」
美大卒の末松朝樹さんを社員に迎え、子供向け工作ワークショップを行ったり、ウェブマガジン「UZUZU」で情報発信したりしながら、「いつか自分たちでユニークなおもちゃを作りたいね」と思い描いていた。
そんな時に出会ったのが、ボードゲームの世界。「ゲームで遊びながらビジネスの勉強になるようなものは、小学生の親からニーズがあるんじゃないか。自分もそういうのがほしい」と、おもちゃクリエーターの高橋晋平さんにSNSを通じて「協力してほしい」とアプローチ。
「親子で起業体験するゲーム」のコンセプトは市原さん、末松さんとイラストレーターの久野貴詩さんがデザインを担い、バンダイ出身でおもちゃ作りのプロ、高橋さんがルールづくりなど総合的な仕上げを手がけ、「コドモ社長vs大人社長」が誕生した。
これまで、複数のベンチャー企業の立ち上げに携わり、経営者としての市原さんの経験もゲームに存分にいかされている。
「自分がブランコ・カンパニーを創業した時、売り上げが思うように上がらないなか、人材を抱えて経営維持するのは本当に厳しい現実でした。
ただ、1人で会社をやっていても行動量が上がらない。会社規模は大きくならず、売り上げも上がらない。会社を成長させるよう投資すること、ブランドを強化しないと成長スピードは上がりません。
起業から12か月、自分と雇った社員にしっかりお給料を払って会社を存続させていくことだけでも、とても大変で価値があることだって気付いたんです。かつ、利益を出して法人税を払い、社会に貢献できるのは素晴らしいこと」
当初、「わかりやすくするために」と社員や社長のお給料は月10万円の支払いルール設定だったが、「10万円だと社員じゃなくてバイトでしょ?そこは20万円にしましょう」と設定し直したことも。試作段階から、働くママ友にも試してもらい、リアルな社会にこだわって作り上げた。
親も「仕事って何?」を考えるキッカケに
「クール」な性格の8歳の長女からは「そんなゲーム、売れるわけがない」とバッサリ失笑されたという。
「ボードゲーム作ったお母さんってすっごい変じゃないですか(笑)。ボードゲーム作って、本当に売ってる!って驚いたみたい。同じ女性として、娘に、自分で商品を考えて売ったっていいし、やりたいことって意外と動けばできるんだ、って伝わったんじゃないかな? お母さんがやってる仕事が記憶に残ったら嬉しいですね。
今の子供達が大きくなったときに、どういう仕事を選ぶのか、何を勉強してどういう道に進むのか。選択していくのか、私たちとはだいぶ違う。
大人の私たちが働いていても、5年先、10年先が見えない状況で、さらに子供達が大人になった時、より幸せになれるのか。やっぱり生きる力をつけられるかどうか。今までと同じゃダメなんだけど、教育の現場でいうと、そこまで変わってないですよね。だとすると、親自身も考えなきゃいけないと思っています」
家でできる起業体験ゲームだからこそ、新たな業種やチャレンジしやすいのも魅力。私たち親にとっても「仕事って?」を考えるいいキッカケになるし、親子の会話が広がりそうです。
「コドモ社長vsオトナ社長」公式HP https://uzuzu-mag.jp/boardgame
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田辺幸恵 Sachie Tanabe
ライター/ライフコーチ
1979年、北海道生まれ。スポーツ紙記者を経て2006年にアメリカへ。2011年にニューヨークで長女を出産。イヤイヤ期と仕事の両立に悩みコーチングを学び、NPO法人マザーズコーチジャパン認定講師に。趣味は地ビール探しとスポーツ観戦。夫と娘(8歳)の3人家族。