イクメンという言葉が生まれて久しく、男性の育児参加も、もはや当たり前に。
そこでLEE10月号では、育児に積極的な男性にインタビュー! 発言の裏付けとして、妻にもコメントをもらい、夫側から妻側から、それぞれの本音を探りました。
まずは、イクメンを広めたお二人、つるの剛士さん&青野慶久さんが、男性育児の現状と未来を語り尽くします!
パパの育児オモテとウラ01
モデル・タレント つるの剛士さん × サイボウズ 青野慶久さん
’11年〜’15年の4年間、LEEのパパ連載『“毎日イクメン”で行こう!』を担当していたつるの剛士さんと、“イクメン社長”として有名な、サイボウズ株式会社の青野慶久さん。
つるのさんは、高1、中2、小6、小4、3歳という5児の父、青野さんは、小4、小2、年中の3児の父。ともに子だくさんで、かつて育児休業を取得したことがあるという共通点があります。
つるの 僕は9年前、第4子の出産のときに育児休業を2カ月、そして、3年前、第5子が生まれたタイミングで1カ月仕事を休みました。青野さんは?
青野 僕も9年前、第1子のときに、2週間だけ取りました。第2子では、毎週水曜日を半年間、20日間ぐらい休む育児休業を、第3子のときは休まずに、毎日16時退社を半年間続けました。16時に退社して、上の2人の子どもたちのお迎えから寝かしつけまでを担当する短時間勤務社長は、妻に好評でしたね。
つるの 3回とも違う取り方なのはおもしろいですね。僕は産後に休んだことは変わらないんですけど、1回目の育休の後に“イクメン”という言葉が出てきて、大きく環境が変わったんですね。
イクメン代表とか、講演で育児について話してとか言われて、イクメンって……?と。すごいパワーワードが出てきて、ちょうどタイミングよく育休を取った僕が引っ張られた感じでした。
だから、2回目の育休は、自分の意識を変えてみたんです。これだけ言われるんだから、あえてイクメンをやってみよう!と思い、休んでいる間は奥さんは赤ちゃんのお世話以外のことはしなくていい、家事・育児のすべてを俺が引き受けます、と。
青野 それはすごい。大変だったでしょう?
育児休業を取ると、ママの イライラが理解できる!
つるの ママさんの気持ちが、本当の意味でわかった気がします。これまでは、さっきまでご機嫌だったママが、なんで急にイライラするのか、まったくわからなかったんです。でも実際にやってみたら、僕もキレました(笑)。
つるの 大きな原因があるわけじゃないんですよね。弁当箱の洗い物をなかなか出さないとか、せっかく手間暇かけてカレーを作っても「ごちそーさん」と軽く言われて終わりとか、細かいことの積み重ねで、爆発するんです。誰も褒めてくれないから、みんなインスタグラムに弁当箱の写真をアップして、いいね!をもらうのか!と(笑)。
誰かと話したくなってカフェにランチをしに行くのもよくわかる。ずっと自分で料理をしていると、人が作ったごはんを食べたくもなるんですよね。僕、食べログでおいしそうなランチを調べたのは、後にも先にも育休期間だけですよ! とにかく、毎日同じことを繰り返して達成感を感じられないことや、やりたいことができない消化不良感を常に抱えていました。
青野 休みを取ってしっかり育児に加わると、理解度がぐっと深まるのは確かだと思います。子どもがちゃんと片付けなかったブロックを踏んづけてめちゃくちゃ痛いとか、ささいなことではあるけど本当に頭にくる(笑)。
つるの 育休の最後に、この思いをブログで吐き出したんですよね。日々、主夫をして気づいたことを列挙したんです。
さっき言った弁当箱のこと、料理のこと、洗濯を干すための天気が気になるとか、チビたちのプリントが複雑すぎるとか、思いつく限り。その投稿が1週間で350万アクセスを記録して、うちの奥さんのところに「だんなさんのブログを読んで泣いてるママ友がいる」とメールがきたりもして。予想以上に反響がすごかったんですね。
やっぱり世の中のママさんたちは、当たり前のようなことを知ってほしい、わかってもらいたいんだなと。僕自身も、ずっとイクメンといわれてきたけれど、2回目の育休後に、もっと深く妻の気持ちが理解できたかなと思います。
青野 その意味でも、男性の育児休業の取得はもっと増えてほしい。サイボウズでは男性の育休はスタンダードになりつつあって、2019年の下半期にも、5人が取得する予定です。
でも世間では、育休を取った男性が転勤させられる事態が起きたり、まだまだだなと思います。どんどん社会のルールを変えていかないと、育児環境も整っていかないですよね。
つるの 本当に。特別なことという意識がなくなるといいんですけどね。
小学校のPTAなどパパに閉鎖的なコミュニティも
青野 ルールもそうですけど、今の日本社会は、本当の意味で男性の育児を許容できていないなと感じることがあります。昨年、一番上の子の小学校のPTAでクラス委員を担当したんですけど、ある行事では40人の参加者の中で男性はたった1人。アウェー感が半端なかったです。
つるの 僕も実は、PTAや学校のことは奥さんにまかせきりです。確かに、なんとなく入りにくさはあるかも……。
青野 保育園だとこれだけパパの送り迎えとか育児参加も多いのに、公立の小学校はまだこんな感じかと愕然としましたよ。
サイボウズの中でも、幼稚園の集まりにパパが出向いたらそんなルールはないのに「ここはお母さんが対応してください」と言われて、幼稚園と戦いました!という男性社員も。みんなで頑張れ、頑張れと応援しました(笑)。
つるの 行事のときは父親もやる気満々で、うちの近所は席取りのために父親が夜から並んで、宴会していますけどね(笑)。
青野 そうなんですよ。PTAとか役員とか、面倒なことを当たり前にできてこそ、イクメンだと思うのですが……。これはお願いで、女性側も男性を拒絶しないでほしいんですよね。
僕の住む地域ではまだまだ専業主婦率が高いですし、世の中的にも男性は外で稼いで女性は家庭のことをする、という考えが根強いと思います。
家庭のそれぞれの事情や価値観にもよるとは思うのですが、そういう根本部分が少しでも動かないと、男性がこれ以上育児に進出するのは難しい気も。ここはもっとオープンになるといいなと思いますね。
つるの 僕はずっと言い続けてるんですけど、イクメンって育児をするだけではダメですよね。家事も育児も、学校などの地域のことも、全部ひっくるめて考えてできるようにならないと。
青野 それはまさにそう。真の意味でのイクメンを目指すために、僕は“時短パパ”を広めたいと思ってるんですよね。
これまでの8時間勤務を6時間とか5時間とかにして、早く帰宅する。子どもがいると夕方以降がとんでもなく慌ただしいので、その時間帯に家にいられれば、家事も育児も妻と一緒にできますからね。
育児休業で完全に休んでしまうと、会社側も代わりを探さなければいけないし、休む本人も自分の仕事がなくなるんじゃないかと心配になる。つるのさんは強いから、入れ替わりの激しい芸能界でも潔く休んで戻ることができたけれど、男性はやっぱり仕事を完全に休むことは恐怖だと思います。
つるの 僕も「もう戻る席ないな」と言われたこともありましたけどね。あとは僕、育児休業っていう言葉もよくないと思うんですよね。実際は仕事以上に忙しいのに、休みなんていいな、みたいな空気になる気がして。育児休業って要するに、男性の家庭訓練の時間だと思うんですよね。
青野 家庭訓練! これはわかりやすい。育休のネガティブなイメージを払拭できそうですね。
つるの 家庭訓練をして男性の家事スキルが上がり、奥さんのことをもっと理解できれば、夫婦円満につながる。家庭は基盤だから、絶対仕事にもいい影響があると思うんですよね。
目線が変わって、新たな仕事を生み出せるなんてこともあるかも。会社側も「家庭訓練、頑張ってこい!」ぐらいの勢いで送り出してほしい!
青野 男性は明確な目標があるほうが頑張れるので「家庭訓練制度3級」とか資格を出してあげるのはどうですか。
つるの いいですね! 家事、育児すべて自分でまわせたら3級、子どもの担任の先生の名前を言えたら2級、とか。サイボウズさんでぜひやってくださいよ(笑)。もちろんこれが正解かどうかはわかりませんが、これまでの“イクメン”からもう一歩先に進みたいですよね。
青野 フィンランドやスウェーデンなどの北欧は、男女平等で国民の幸福度が高いといわれているんですけど、この前スタッフを派遣してみたら、離婚率が高いといった問題があるんです。
女性が男性と同様に働く場所はあるし、社会保障がどれだけ充実していても、最善の形ではない気がしますよね。まさに家庭訓練じゃないですけど、家事も育児もできて本当の意味で妻の気持ちに寄り添えるイクメンが増えれば、夫婦円満で幸せな育児環境をつくれるかもしれない。日本はそこまで持っていきたいなと思いますね。
つるの 僕は妻ファーストなので、夫婦円満は絶対。いい方向に進んでいけるといいですね。
撮影/菅原有希子 スタイリスト/佐藤慶明(go ahead)(つるのさん) 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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