結成から31年。その間、メンバーの一時脱退やバンドの活動休止など、紆余曲折があった。
今もリーダーのウルフルケイスケさん(g)がバンド活動休止中のため、3人でウルフルズという大看板を守っているが、メンバーは“3人のウルフルズ”を存分に楽しんでいる様子。
レコード会社を移籍し、通算15枚目のニューアルバム『ウ!!!』を作った経緯を語る3人の表情は実に晴れやかだ。
今は、この3人だからこそ生まれる音楽を楽しみたい
「3人になってどうしよう……じゃなくて、この3人だったらこんなおもしろいことできそうだね、といった思いを自然に共有できたのがよかったですね」(サンコン)
『ありがっちゅー』の“ありがとうを言うために君を誘ってみるよ”といった歌詞が象徴するように、大切なものやコトを思うフレーズにあふれた今作には、どこかアットホームな雰囲気も感じられる。
「それは初めて松本君の家でデモを作ったのが影響しているかも。リビングでコーヒーを飲んで休憩するなど、まさにアットホームに作りましたから(笑)」(サンコン)
「アマチュア時代に戻ったような感覚がありました」(ジョンB)
「それと、お互い年を重ね、バンドも長くなって、お互いにやさしくなった気もする」(トータス)
「バンドの状態がいいからか、細部を作り込みすぎず、曲にいい感じのスキが生まれて」(ジョンB)
「スキは大事ですよ。ブルース界の大御所のおじいちゃんたちって、いぶし銀の演奏を披露する一方、おちゃめでスキがあって、若手も話しかけやすい雰囲気がある。あれは憧れます。僕らはそこまでキャリアは長くないけど、短くもないから、今、若手に気を使われがちな立ち位置。大物だけどスキがある、みたいな存在にいつかなりたい(笑)」(トータス)
今作の1曲目、スペーシーなテクノ風がどこか懐かしい『センチメンタルフィーバー~あなたが好きだから~』も興味深い。
「実は移籍後に撮ったアーティスト写真がきっかけ。3人ででかいサングラスをかけて髪をきっちりセットして歯を見せて笑っている、おかしな写真に全員大満足で(笑)。
いくつになっても、こういうノリの僕らならではの楽しい曲を作りたくなった」(サンコン)
「僕らはギターバンドだけど、たまたま今はギターがいないから(笑)、
ギターにこだわらずにテクノだってできる、とアイデアが出た。それはおもしろいと2週間後には曲ができました」(トータス)
50歳を越えたトータスさんの書く歌詞は深くてストレートな表現が増え、迷いの多いLEE世代に響くフレーズが目白押しだ。
「どんな人間でも50年生き、ひとつのことを続けていれば、その人なりの哲学が自ずとあるものだと思う。それが歌詞にも現れたのかもしれません」(トータス)
「生きているといろいろあるけれど、身近な場所を整えると気持ちも整う。僕は以前、雑貨好きでしたが、最近は身の回りをミニマルにしています。あと、掃除。部屋をきれいにすると単純に気持ちがいい。整えた部屋に花を飾ろうと、先日、花瓶を買いました。あ、花瓶も雑貨か……」(ジョンB)
「昔は片付けられない人だったのに掃除を語るとは(笑)」(トータス)
しっかり話に楽しいオチ(!)をつけてくれたウルフルズ。人間味のある温かさに満ちた新作を、心のビタミン剤にして!
Profile
ウルフルズ●左から、ジョンB(b)、トータス松本(vo&g)、サンコンJr.(ds)。1988年、結成。’92年、シングル『やぶれかぶれ』でデビュー。’95年の『ガッツだぜ!!』、翌年の『バンザイ~好きでよかった~』の大ヒットで、唯一無二の"ワンダフルロックバンド"として揺るぎない存在となる。メンバーの一時脱退や活動休止を経て、’14年に本格的に再始動。恒例のワンマン野外ライブ『ヤッサ』は、来年6月にリニューアルして開催予定。
『ウ!!!』
レコード会社移籍後初となる通算15枚目のオリジナルアルバム。『変わる 変わる時 変われば 変われ』(ABC朝日放送『おはよう朝日です』テーマソング)をはじめ、テーマソングやCFソングが4曲含まれた全10曲。ウルフルズらしいソウルやブルースを軸にした音に、大切なものへの愛を感じさせる歌詞がのり、大人がグッとくる一枚。初回限定盤には『ヤッサ2018』のライブ映像の特典付き。(ビクターエンタテインメント)
撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/SUGO (LUCK-HAIR) スタイリスト/堀井香苗 取材・文/中沢明子
(トータス松本)カットソー¥22000・ジャケット¥72000・パンツ¥42000
(サンコンJr.)Tシャツ¥26000・パンツ¥39000
(ジョンB)シャツ¥33000・ パンツ¥42000/ストックマン(トランジット ウォモ)
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