年齢に関係なく気になるお金のトピックと言えば、年金です。公的年金にはマイナスなイメージがついているようで、特に若い人たちの間では「どうせもらえないのでは」「払うだけソン」というあきらめのような空気もあります。
実は、ことし2019年は5年に一度行われる財政検証の年でもあります。財政検証とは、年金の健康診断とも言われ、今後の経済状況や人口動向などのデータをもとに、これからの年金給付がどのように変化するかの見通しを立てるもの。この先経済がどのくらい成長するのか、働く人口はどの程度増えるのかなど、今後の財政状況によって私たちが受け取れる年金も影響を受けるからです。
そこで話題になるのが「所得代替率」という言葉。これは現役男子の平均手取り収入の額に対する、夫婦2人世帯の年金受給額の割合を示すもの。この割合を50%程度には維持して行こうというのが一応の目安になっています。とはいえ、政府がモデルとする、夫が元会社員で厚生年金を受給し妻がずっと専業主婦(一度も働いたことがなく厚生年金保険料を納めたことがない)世帯というのは、この令和の時代、もはや化石のようなもので、あまり参考にはなりません。
特に若い世代は共働きが当たり前、妻だって厚生年金保険料を納めていれば、将来は自分の年金を受け取れますし、定年後も働くのが当たり前の時代になっているでしょう。財政検証の結果のうち、大きく報道されるのはショッキングな数字ばかりとなる傾向があります。それにはあまり振り回されない方がいいですね。
厚生労働省の年金ポータルサイトがスタート
政府も年金の情報をわかりやすく伝えようと、年金について知りたことが探せるポータルサイトを4月に開設しました。
厚生労働省の「みんなとわたしの年金ポータル」がその名称で、おおまかに「わたしの年金」と「みんなの年金」の2つのカテゴリーに分かれています。「わたしの年金」では、自分の年金がいくらもらえるかの調べ方や、就職・退職・パートで働くときの年金の手続き、結婚・出産育児・離婚などライフイベントごとの年金にまつわる情報も説明されています。「みんなの年金」では、国の年金制度の仕組みや制度の将来、年金積立金の運用についてほか、先に述べた財政検証の説明などもされています。
専門用語はなるべく使わず、Q&A形式にして短くわかりやすい表現を心がけているようです。また、国民年金・厚生年金だけでなく、企業年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)についてもカバー。年金についておおまかな知識を得たい時には便利でしょう。
イメージだけで「年金はどうせもらえないし、もらっても減らされる」と怖れずに、こうしたサイトを利用して基礎的な知識を得て、次に自分が受け取れる年金についてきちんと調べてみる。知ったうえで、今後の働き方を考える、という姿勢が大切ではないでしょうか。
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松崎のり子 Noriko Matsuzaki
消費経済ジャーナリスト
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。