名作と呼ばれる戯曲を日澤雄介氏の演出で新たな命を吹き込んだ舞台『まほろば』を観劇してきました。母ヒロコを高橋惠子さん、長女ミドリを早霧せいなさん、次女キョウコを中村ゆりさんが演じる会話劇。四世代にわたる女性の生き方に焦点を当てた本作品。大変興味深い作品でしたので、スタッフ2名の感想をつらつらと……。
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1「お祭りのお囃子が遠くに聞こえ、設定は客間ながら、茶の間というのがふさわしい部屋と縁側。縁側では祖母が居眠りをして、小学生のかわいい女の子が麦茶を飲んだり、扇風機に当たったり……。どこか牧歌的な雰囲気ではじまった舞台は、進むにつれて、壮絶な『オンナの世界』に変わっていきました。誰もがイヤなことが起きたり、居たたまれなくなったり、抱えきれない悩みができてしまった時、帰りたくなるのは実家。見たくなるのは家族の顔。でも、これも独立した誰もが経験していることだと思いますが、実家や家族はそんなにナマ優しいものではないのです。小さな頃からいいこと、悪いことを含め隅々まで知られていて、でも離れて暮らすようになってからのことは一部しか知らせていない……そんな微妙な関係になっている家族というのは、時には他人より厄介な存在」(ウェブD・タラコ)(写真はゲネプロでのワンシーン)
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2「知らない部分を知りたがり、どこを押せば弱いかがわかってしまっているので、グリグリと責められ、吐露させられてしまう。こっちもどこか『言いたいのかも……』という気持ちがありつつ帰っているのだから、ついつい言ってしまった途端、それ見たことか! と昔からこうだった、昔はそうじゃなかった、だから、あなたはダメなのよ、どうして、あなたはそうなの? と、会っていない隙間を埋めるがごとく、詰問と小言が飛んでくる。そのたびに『ああ……帰ってくるんじゃなかった』『何も知らないくせに……』『言わなきゃよかった』という後悔がグルグルとめぐる」(ウェブD・タラコ)(写真はゲネプロでのワンシーン)
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3「このお芝居では、吐露するほうも、受け止めるほうも全部女性。ものすごいバトルが展開されるのは火を見るよりも明らかで、なかなか口に出すこともない『閉経』『妊娠』『不倫』『できちゃった婚』に『さずかり婚』、『村中の男が父親の可能性のある子どもを生んだ』などなど、ものすごい赤裸々なセリフがポンポンと出てくるのです。そんな中、彼女たち自身が抱えているコンプレックスが見え隠れして、そのたびに小競り合いやケンカが始まるわけですが、実は兄しかいない私は、ここまで本音を言い合う兄弟ゲンカをしたことがなく、見ていて羨ましい気持ちにもなって来ました。娘の恋愛を把握している母親というのも新鮮で、自分の親子関係と比べて、『それはないわー』なんて自問自答してみたり……」(ウェブD・タラコ)(写真はゲネプロでのワンシーン)
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4「あまりにも日常が描かれているので、ついつい自分と置き換えてみてしまう人も多かったのではないでしょうか? 思いっきりぶつかりあって、言ったことを後悔しながらも、どこかホッとしている心情を、芸達者なみなさんの演技でしみじみと感じられ、安直な言い方ですが、家族っていいねという気持ちも沸いてきます。ラストシーンは、とらえ方は様々になると思いますが、女としての逃れられない『性(さが)』をドーンと突きつけられるけれど、未来に希望を感じることもできました。笑いの中に、現実生活をしみじみと考えさせられる、深い物語でした」(ウェブD・タラコ)(写真はゲネプロでのワンシーン)
宝塚歌劇団退団以来、初のストリートプレイ挑戦となった早霧せいなさん。女性のみの空間という点では宝塚と通じるものがあるものの、女性の妊娠など、性にまつわるテーマを赤裸々な台詞で語るというこれまでにないシチュエーション&役どころ。前回取材時(退団後に演じた舞台『るろうに剣心』のとき。剣心の衣装を身にまとったまま、甥っ子話などをしてくださいました!)は、本物の男性もいる舞台の上で、男性を演じるという大変ハードな壁に挑戦されていましたが、今回は実年齢より少し上、40歳過ぎの女性の役(長女と次女のキャラは、まさにLEE世代でした・笑)。部屋着で転がったり……と、「これが素なのかも!?」と勘違いしそうになるほど自然体な長女役。強烈なキャラながらも、どこか憎めないミドリを好演されていました。「女性の年齢により、家族(女性)の恋愛事情や妊娠に対する考え方って変わっていくよね……。もちろん自分自身の考えも」と、アラフォー姉妹&その娘を中心とした性への葛藤をリアルに感じる作品でした。(ウェブ担・たかみー)(写真はゲネプロでの、早霧さんが転がるワンシーン)
以上、スタッフの観劇レポートでした! もうすぐ連休。演劇を楽しんでみるのもおすすめの過ごし方。みなさんもよい作品に出会えますように。