もしも自分が裁判員に選ばれたら?
“家庭に潜む究極の心理サスペンス”と話題になった角田光代さんの小説『坂の途中の家』がWOWOWでドラマ化され、4月27日(土)からスタートします。
子育てと家族関係に疲れ果てていても、弱音を吐かずに頑張ってしまう母親。その一方で、父親や祖父母も子育てに葛藤や悩みを抱えながら、家族を織りなしています。傍から見れば、幸せそうな家族であっても、何かしらの問題があり、一歩間違えれば、事件に発展する可能性はゼロではありません。同じ年頃の女性が子供を虐待死させた事件の裁判員候補になったことで、被告と自分の紙一重に想いを馳せ、心がかき乱されていく母親の視点で描かれる物語は、観る者の深層心理に訴えかけるはずです。
3歳の娘と夫とともに平穏な日々を送っていた主人公、山咲里沙子を演じるのは、2年ぶりの連続ドラマ主演となる、柴咲コウさん。篠﨑絵里子さんの台本が「衝撃的に面白かった」という柴咲さんに、お話を伺いました。
“子殺し”の罪で裁かれる同年代の女性を見つめる主人公・山咲里沙子を演じる柴咲さん。重いテーマの主人公を演じましたが、「とても演じやすかった」といいます。
「台本のト書き(演者の動きや状況を説明する文)は、結局、お芝居で演じなければならない部分なので、多すぎても、かえって難しい時があるんです。でも、今回はお芝居でこんなふうに演じればいいんだろうな、と想起させるト書きで、読みながら“面白い!”と思った台本でした。まず、それが私にとって演じやすかった理由です。もう一つは、お話自体が本当に興味深い。裁判員制度で補充裁判員に選ばれた主婦、という役柄でしたが、ちょうど撮影中、スタイリストの助手の方に通知が送られてきたんですよ。それまで、私自身も制度として知ってはいたけれど、日常ではないので、一体どういう人が裁判員に選ばれ、どこで裁判に加わっているのか、知りませんでした。それが、ある日突然、通知がやってくる、ということを実際に目の当たりにして、さらに演じやすくなりました。日常にいきなり非日常がやってきて、事件と自分がシンクロし、巻き込まれていく。女性は共感力が高いですから、同じ年頃の被告に感情移入してしまう、というのは理解できます。里沙子と私はかなり性格もバックグラウンドも異なりますが、もし彼女と同じ立場だったら、私自身もこうなるかもしれない、と思いました」
善悪や正義、についても改めて考える機会になったそう。
「今、一億総批評家、とでも言ったらいいのか、誰もが簡単に評価できますよね。ネットで書いた一言で容易に誰かを傷つけることができる。そんな時代に私たちは生きている。そうしたなかで、改めて、正義とは何か、誰が裁くのか、ということを突き付けられた気がしました。法の下で裁かれるのが前提としても、法律の専門家ではない、一般の人が裁きに加わることについて、どう考えるべきか、と。それから、悲しい事件がニュースでたくさん流れていますが、報道されるのは事件の一端で、全てではないんですよね。今回の役を演じながら、その点も改めて考えたことです。事件には複雑な背景があると念頭に置きながら、ニュースに接したいと思いました」
人が最初に接する常識や社会は”親の当たり前”
この物語には、自分以外の誰かの常識に囚われる生きづらさ、を抱える人々が多く登場します。柴咲さん自身もそうした生きづらさを感じることはあるのでしょうか。
「人間が最初に接する常識や社会は“親の当たり前”ですよね。そう考えると、親というものは本当に大変だと思います。思い返せば、我が家の常識は世間の常識とは違ったんだな、と大人になってから気づいたことがありますし、常識も時代によって変わってきているな、とも思いました。たとえば、10年くらい前までは、男女のあり方として、男らしく、女らしく、といった常識に今よりも囚われていた。素敵な男性に対して“あまり強い感じだったら嫌われるかな”と、強い部分を少しひっこめたりして(笑)。でも、そういう生き方は自分らしくないと今は思っています」
今回のドラマでは主題歌も担当した柴咲さん。なんと、「1日で曲を書けた」とか。
「コンプライアンスに縛られすぎず、描きたいものをしっかり描いたドラマで、私自身もいろいろ考えさせられた作品でしたが、撮影が終わってすぐに曲を作り始めたこともあり、物語がまだ染みついていて、失意、失望、虚無感をテーマに1日で曲が書けました」
また、初の連続ドラマを監督した森ガキ侑大さんによる撮影現場はフラットな雰囲気で、重いテーマの作品ながら、楽しかった様子。
「あまり細かく指示するタイプの監督ではないんですが、私がふわっとしていた部分はしっかり指摘して、なおかつ、自然に演じられるように導いてくれました。演じる前、里沙子は夫や義両親から一歩下がって、といった感じの女性と捉えていたんです。でも、森ガキ監督とのやりとりで、“一見”一歩下がったように見える女性だと捉え直しました。里沙子がだんだん強さを見せていくストーリーの中で、一見、というのは重要な部分です。そこに気づいたら、さらに迷いがなくなり、演じやすくなりました。重いテーマの作品ですが、撮影現場は楽しかったんですよ。特に子役の5歳の女の子とは、いつも手を繋いで過ごしていました。撮影中の癒しでしたね(笑)」
いつお会いしても、自分の意見や思いを的確な言葉で伝えてくれる柴咲さん。“一見”今回演じる里沙子とは真逆の性格に見えますが、そんな柴咲さんが「もし私が彼女の立場だったら、やっぱりこうなるかも」と感じながら演じたという『連続ドラマW 坂の途中の家』。柴咲さん演じる里沙子はもちろん、他の登場人物もとてもリアルに描かれています。自分は誰にどのように共感するのか。自分自身を問い直せる、必見のドラマです。
取材・文/中沢明子 撮影/フルフォード海
ヘアメイク/SAKURA(アルール) スタイリスト/岡本純子(アフェリア)
ピアス ¥65,000(マリハ)/マリハ伊勢丹新宿本店(TEL:03-6457-7128)
『連続ドラマW 坂の途中の家』
https://www.wowow.co.jp/dramaw/sakaie/
4月27日(土)wowowプライムにて放送開始
毎週土曜よる10時~(全6話)第1話無料放送
(C)2019 wowow
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中沢明子 Akiko Nakazawa
ライター・出版ディレクター
1969年、東京都生まれ。女性誌からビジネス誌まで幅広い媒体で執筆。LEE本誌では主にインタビュー記事を担当。著書に『埼玉化する日本』(イースト・プレス)『遠足型消費の時代』(朝日新聞出版)など。