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映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

覗いてみた~い、婚活世界!! 『美人が婚活してみたら』黒川芽以さん×大九明子監督ガールズトーク

  • 折田千鶴子

2019.03.20

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タブーなしの本音満載の人気コミックを映画化

LEE読者の中にも婚活中の方がいらっしゃると思いますが、婚活中でない方も含めて、他の方たちの婚活って実際のところ、どんなことになっているのか興味津々ですよね!? もちろんキレイごとでまとめずに、本音が知りたい、実態が知りたいわけで……。

そんな願いと興味を満たしてくれるのは、多くの女性が“これって私のこと!?”と大いに共感した、ひねくれ&こじらせ女子のバイブル『勝手にふるえてろ!』の大九明子監督。これはもう、期待せずにいられません! しかも『美人が婚活してみたら』なんて、タイトルを聞いただけで、もう観たくてウズウズしちゃいませんか!?

そんなわけで、タブーなしの婚活女性の本音が満載された同名人気コミックを映画化した、大九監督と主演女優・黒川芽以さんにご登場いただきました!

大九明子(右)
1968年、神奈川県出身。明治大学政治経済学部卒業。プロダクション人力舎スクールJCAの第1期生となり、お笑い芸人を志す。その後、製作者サイドへ転身。脚本も手掛けた『意外と死なない』(99)で監督デビュー。主な監督作に『恋するマドリ』(07)、『東京無印女子物語』(12)、『ただいま、ジャクリーン』(13)、『モンスター』(13)、『でーれーガールズ』(15)など。『勝手にふるえてろ』(17)で各賞を受賞。
黒川芽以(左)
1987年、東京都出身。6歳でCMに出演し、ドラマ「鏡は眠らない」でデビュー。主な出演作に、映画『グミ・チョコレート・パイン』(07)、『山のあなた 徳市の恋』(08)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(10)、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13)、『ぼくたちの家族』(14)、『ドライブイン蒲生』(14)、『愛を語れば変態ですか』(15)、『二十六夜待ち』(18)など。公開待機作に『僕に、会いたかった』(5月)、『ダンスウィズミー』(8月)など。    
写真:齊藤晴香

黒川さんが演じるのは、WEBデザイナーのタカコ、32歳。誰もが振り返るほどの美女なのに、付き合う男は実は既婚者だった……というトホホな恋愛体験ばかり。不毛な恋愛が3度も続き、疲れはてたタカコは、親友のケイコ(臼田あさ美)に背中を押され、婚活サイトに登録します。ところが現れるのは、個性的過ぎるオジサンばかり……。

婚活男子を演じるのが、グループ魂でも活動する俳優の村杉蝉之介さんや、お笑い芸人のレイザーラモンRGさん、市川しんぺーさんなど、見るからに“濃すぎる”方々ばかりで、思わず吹き出してしまいます。ところが遂に良さげな男子……と言っても、ちょいダサで非モテ系な園木、シングルズバーで知り合った遊び人風の歯科医師・矢田部が登場し、にわかにドキドキ&ザワザワし始めます。

園木を中村倫也さん、矢田部を田中圭さん、親友のケイコを臼田あさ美さんと最旬俳優がズラリで、そこも見どころ満載です! 果たして、お2人からは、どんな話が飛び出すでしょうか!?

 

人間のどうしようもない部分に可愛さを感じる(大九)

――作品の毒っぽさ、婚活すると決めたタカコがまたもフラフラよろめくダメさ、親友ケイコの毒舌など、大九監督のお得意とされる世界観が広がっていて、すごく楽しかったです!

大九「そもそも原作の「美人が婚活してみたら」ってタイトル自体、既に意地悪ですよね(笑)。原作者のとあるアラ子さんが、友達であるタカコの婚活を題材としてイジりながら描かれていて、タカコの方も、それに怒らずに自分を描かせ、2人で仲良くしているという、そのイジり方がまず面白いな、と思いました。現場にも2人で遊びに来てくれましたよね」

黒川「あれは緊張しましたね! しかも初日だったんですよ。タカコとケイコが居酒屋で喋っているシーンで」

『美人が婚活してみたら』
2018 年/日本/90分/配給:KATSU-do
監督:大九明子 / 原作:とあるアラ子 / 脚本:じろう(シソンヌ)
オフィシャルサイト:http://bijikon.official-movie.com/
3月23日より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国公開

 

大九「そもそも私は、毒のようなものというか、完璧な人よりも、どうしようもないダメっぽいところに人間の可愛さを感じてしまうんですよ。人間的で。メチャメチャ可愛い、そういうダメっぽさを描いていきたいと思っているんです」

――毒っぽ過ぎたり、ダメ過ぎても、観ている方は嫌になってしまう。その描き方のさじ加減が、大九監督のいわゆる手腕ですね。

大九「原作コミックの絵のタッチや、原作にあるタカコさんの“キラキラした感じ”などを再現することに(労力を)持って行かれてしまうのは違うな、と思っていました。ですから映画化に当たっては、一度自分の中のフィルターを通して、“美人というもの”は単なるオマケだ、と。それよりも、30代の独身の女の子が、どんなことに苦労したり、悩んだり、どんなところがダメだったりするのかをチャーミングに活写したい、ということだけを気持ち的には目指しました」

 

 

 

監督の可愛い演出に、最初は照れました(黒川)

ケイコに愚痴っては、毒舌ケイコに発破をかけられるタカコ。タカコとケイコのテンポのよい、そしてリアルな掛け合いも、本作の大きな魅力です。

――タカコとケイコに関して、監督と黒川さん、そして臼田あさ美さんを交えて、何か話し合ったりしましたか?

大九「私は、2人の持つ空気感みたいなものに、すごく期待していたんです。2人独特のノリみたいなもの、というか。だから、ちょっとした待ち時間などに2人がセットでずっと一緒にいるのを、シメシメと思いながら見ていました」

黒川「現場で私たちがやっているのを見た監督が、“あ、それいいね”と、仕草とか色々と取り入れていくことが結構、あったように思います」

大九「アドリブというか、今の面白いからもう一度お願い、という感じでしたね。私は常々、このタイミングでコレをする、というような演出をしないので。2人に自由にやってもらう中で、面白いと思うものを拾っていく感じでした」

黒川「私には、タカコとケイコ、どちらの面もあります。女同士で喋る時は、割とツッコミタイプなので、ケイコ側に立つことの方が多いかな。だからポンポンと言ってくるケイコのテンポ感にはすごく馴染みがあって。同時にタカコみたいに迷走というか(笑)、突っ走っちゃっていた時期もあったので、タカコにも共感できました。でも私、実は“監督ってタカコっぽいな”とずっと思っていたんです」

大九「へ~!? 分からないな」

黒川「すごく可愛い演出をして下さるんです。そんな演出、されたことがなかったので、“うわ、そんな可愛いコトやっていいんですか!?”って最初は照れちゃった(笑)。そういうところを監督が引き出してくれるし、また女優さんを可愛く撮るのがすごく上手な監督なんです! タカコを演じる上で分からないことがあって相談すると、監督が“自分の中のタカコ”を織り交ぜて語ってくれるので、迷ったときは大九監督を参考にして(笑)。監督自身が、本当に可愛らしい人なんですよ!」

 

大九「わー、何を言うんだ! キャリアの長い女優は怖いですね~(笑)。ただやっぱり、どんな主人公を演出していても、必ず私っぽくなっちゃう。というか、それしか出来ないので、それでやっていこうと開き直っています。」

黒川「それが面白かったんです。今まで引き出されていないものが、引き出されている感覚で、すごく監督に染めて欲しい、と思っていました」

大九「嬉しいですね。だって自分の作品の登場人物には、どうせなら嫌いな人で作るより、好きな人で作っていった方がいいし、好きな人で居て欲しいですから。黒川さんの中のチャーミングな部分を、映画の中で一杯みたい、という思いで演出していました」

黒川「大九さんに染めて欲しいと思っている女優さん、たくさんいると思いますよ!」

大九「いやいや、そんな、恐れ多いことでございますっ!」

 

 

騒ぐでもなく、ポツリと呟くのが30代のリアル(黒川)

 

――田中圭さん演じる不誠実そうな矢田部に走ってしまうタカコを、「バカバカバカ!!!」と思いつつも、“やっぱ行ったかぁ~、だよねぇ”と分かる気もしてしまいます。

大九「でもタカコは、心は持って行かれていないんです。美人美人と言われて来たタカコはモテるけれど、思うような恋愛が出来てこなかった。本当はピュアな恋愛を楽しみたいだけなのに、不遇な恋愛を繰り返していく中で、後天的に獲得してしまった変な技として、いい男ぶって危険な匂いをさせる男に言い寄られると、自分も負けまいとマウントし合おうとしちゃうというか……。変なスイッチが入っちゃう」

 

大九「矢田部とタカコのラブシーンは、男女が必ず同じ分量だけ映るように、すべてイーブンに撮っているんです。恋に落ちているとか、なびいているという風に見えないように、斜めから入らないように、すべてを作っていきました。まるで組体操を作っていくコーチみたいな気持ちでしたね(笑)」

――その後、「私、セックスしたかっただけだったのか」と吐き捨てる台詞が、妙にリアルで、突き刺さりました!

黒川「それも“うわ~”とか騒ぐ時代は既に終わっていて、ポツリと言うのが30代の感じ

大九「実は、最初は“セックスしたかったのか”程度で留めていた台詞だったんです。撮影中に、違うな、と“セックスしたかっただけ”と強めたんです。さらに編集中に、自分に対して“くだらない女。死ねよ”という言葉を、後からアフレコして付け足したんです。それを言わせる背中をしていたので(笑)」

黒川「あ、哀愁が漂っていました(笑)!?」

 

大九「原作同様、映画も“あ~あ、もう死にたい”という台詞で始まるのですが、どこかで私、それを受け入れ切れていなくて。そう言わせながら、すぐに楽しく始まってしまうことに、映画の作り手として無責任さを感じていて。言わせたからには何度でも“死”という言葉をちゃんと使い、最後に救って朗らかに生きていく、ということに着地しないと居心地が悪かったんです」

黒川「誰でもフと、“今日、誰とも喋っていないな”とか、“どうして私こんなに独りなんだろう”とか、フと思う瞬間がありますよね。だからそういう呟きが、いちいち刺さるんだろうな」

 



最旬俳優・田中圭&中村倫也に眼福です!

――女性観客的には田中圭さん&中村倫也さんに狂喜乱舞してしまいました!

大九「先ほどの“どうしたら男女イーブンのキスになるか”と私が考えていた時も、田中君が“真っ直ぐがいいですよね?”“こうしてみます? こっちで行っきましょう”等々アイディアを出し、自らやってみてくれて、素晴らしかったですよ!」

黒川「2人とも今(人気が)グンと来ていますが、10代の頃からずっとご一緒して来たので、なんかもう戦友みたいな仲間意識です。2人とも長く続けられてきているだけに、みんなで和気あいあいとしながらも、すごく落ち着いていますよね」

 

大九「そうだね。上手いのはもちろんだけど、現場で色々と変えてしまう時も、2人がスパスパッと合わせてくれるので助けられました」

黒川「圭さんの、朝と夜のテンションの違いも面白かったですよね。夜になると、すごく元気になる(笑)。朝はすごく眠そうだけど、その眠そうな感じが、また色気を醸したりもしてましたよ!」

 

美女・タカコが結婚に向かって猪突猛進に、いや、迷走しながら突き進む姿に、笑ったり、イタタタタと思いながら共感してしまう本作。加えて、結婚生活や義母との同居生活にストレスを抱えるケイコが爆発するシーンも、思わずデトックス気分でスッキリ~する方も少なくないと思います。

どんな境遇や環境に今いる女性たちにも、きっとパワーをチャージしてくれるハズです。脚本を手掛けられたシソンヌのじろうさんファンの方々ももちろん、是非是非、劇場でパワフルな本作を味わってください!

 

 

 

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

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