夫婦の“あるある”満載!「それを愛とまちがえるから」 稲森いずみさん×鈴木浩介さんの軽妙トーク開幕!
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折田千鶴子
2019.02.08
井上荒野さんの同名小説が連続ドラマ化
直木賞作家・井上荒野さんの同名小説「それを愛と間違えるから」が、豪華キャストで連続ドラマ化されました。しかもクオリティの高さに定評のある、WOWOWドラマで。
WOWOWドラマというと社会派というか、硬派で重量感のあるドラマが多い印象が強いので、この“大人のラブコメディ”は、何だかとっても新鮮! またこれが、面白いんです! LEE読者の方々も必ず興味をそそられずにいられない、その内容とは――。
主演を務めるのは、WOWOWドラマ初主演となる稲森いずみさん。稲森さんが演じるのは、専業主婦の伽耶。仕事熱心で真面目な夫の匡には、演技派・鈴木浩介さんが扮します。夫婦を演じられた2人が、軽妙なトークを繰り広げてくれました!
2人の“地”が生かされた役作り!?
――専業主婦の伽耶さん、サラリーマンの旦那様の匡さん。それぞれ、どんなことを意識して役作りをされましたか?
稲森「伽耶さんは、真面目でちょっと不器用。考え過ぎちゃって、なかなかうまく立ち回れない。ピンチ時に変なことをやっちゃう、みたいな。そういうことも真面目さから来ているので、とにかく“真面目”ということだけを意識していました」
鈴木「僕は“平凡”、その一点です。そして普通。意外と僕自身、すごく普通なので、全然、役作りしていないかもしれません(笑)。等身大のキャラクターであればあるほど、無理をしないでもリアリティが出るかな、と。今回みんなが等身大にナチュラルに演じることで、20代、30代、40代の男と女の悩みがナチュラルに出て、そこに皆さんが共感してくれるのかな、と思いました」
稲森「確かに私も伽耶さんと共通するのは、真面目」
鈴木「共通してる!」
稲森「監督にも、顔合わせでメモを取っていたら、“伽耶みたいね”と言われました(笑)。あとは、少し抜けているところ……かな。自分ではそう思わないのに、よく“天然”と言われるので」
鈴木「あぁ(笑)。匡は等身大と言っても、僕より断然いい人なんですよね。もっとズルくていいんじゃないかなぁと、もどかしさを感じながら演じた部分もありました。彼のそういう素晴らしいところを含め、空気が読めなくて女の人の気持ちがよく分からなかったり、真っ直ぐだけど不器用だったりするところから、夫婦にズレが生じてしまって、その小さなほころびが大きな溝になってしまうので……。あ、でも僕も女性の気持ちがあまりよくわかっていないので、やっぱり、そこも似ていますね、ハハハハハ(笑)!」
第一印象との互いのギャップとは?
――お2人は初共演ですが、共演した感想、印象と違っていたことなどを教えてください。
鈴木「稲森さんには、とても静かで穏やかなイメージを抱いていました」
稲森「私は、会う前は鈴木さんって、もっと面白い方なのかなって」
鈴木「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!! 会ったら面白くなかった?」
稲森「いえ、全然違います(笑)!! エネルギーやノリの良さというか、実際にムードメーカーで、現場を盛り上げて下さる方でしたが、もっと奥が深かったというか、二枚目な部分をすごく見た気がしたんです」
鈴木「うれしい(笑)。ありがとうございます! 稲森さんはとてつもなく集中してやらなければならないシーンの時に、ぐわ~っとマグマが上がってくるような瞬間が何度もあって。内に秘めたものが、ふわ~っと放出される。その瞬間のエネルギーが、すごいと思いました。それは予想していなかったし、普段が静かな分、余計にびっくりしちゃいました」
稲森「浩介さんは本気にさせてくれる方、本気にさせてくれる芝居だな、と思いました。すごく頼れる方でした」
鈴木「え、僕すごい稲森さんに頼ってましたけど(笑)」
稲森「お互い様だったんですね(笑)。同時に、共演者みんなに頼っていた感じがありました」
鈴木「確かにメイン4人に関しては、特にそうかもしれないですね」
稲森「はい、4人で頼り合いながら作って行った気がします」
長回しの掛け合いは、格闘のような緊張感!
――伽耶と匡、匡の恋人・朱音(仲里依紗)、伽耶の恋人の誠一郎(安藤政信)、4人の演技合戦や掛け合いがポンポンと続いていきます。実際に現場での掛け合いは、どんな感じで撮影されたのでしょうか?
鈴木「台本の会話、言葉にテンポがあったので、そのまま台詞を言っていくだけで面白くなるな、というのが第一印象でした。でも掛け合いの分量がすごかった(笑)!」
稲森「本当に長いシーンが多く、途中で止めずに1ロールで撮るので、ずっとライブ的な感覚でやっていました。よし、一度で決めてやるぞ、決めなきゃ、と。 ちょっとした格闘というか、戦っているような感覚がありました。久々にスタート前、ドキドキッと心臓が鳴りました!」
鈴木「下手したら1シーン、16ページわたった場面もありましたよね。だから役者同士のみならず、スタッフチームとの息も合わないと出来ないし、逆に2テイク、3テイクと重ねると、出来なくなる怖さもあって。集中すれば集中するほどシーンに熱が出て、良さが凝縮される。画面にその熱量が出ることを好む監督なので、役者もスタッフも同じ思いで1テイクに向かいました」
稲森「しかもカメラワークもすごい! スタッフの方々、技術チームも、以前ご一緒したことのある方たちばかり」
鈴木「普段、それぞれの現場でチーフをされているベテランの方々が、一番下で働いている感じ。だからみんなの緊張感もスゴかった! また監督は日常を切り取るのが非常に上手く、“日常である”ことにこだわりがあるので、ナチュラルに出てくる偶発的なアクシデントをすべて受け入れてくれるんです。例えば伽耶さんが心情を吐露する大事なシーンで、僕が受け取った掃除機がウィ~ンと鳴ってしまうミスを犯し(笑)、大変なことをしたとビビっていたら、それを含めて監督がすごく面白がってくれて」
稲森「私も迫って来る安藤君を押しのけて自分のカバンを持って帰るシーンで、カバンがどこにも見当たらなくて、その場で意味なくクルクル二、三周見回って黙ってカバンを持たずに帰っちゃったんです。それも大好きだって言ってくれて(笑)」
鈴木「だから自由に演技が出来るんですよね」
入口は不倫でも、夫婦っていいな、のドラマ
――不倫というテーマを扱っていますが、不倫ドラマとしての面白さはどんなところに感じましたか?
稲森「タイトルがまず面白そうですよね。何を間違えたのか、正解は何かとか、色んなことを考えました。ドラマを観て、どうして相手をこんな風にさせちゃったのかとか、自分がもっと素直になれたら良かったとか、色んなことを考えるきっかけになってくれたらいいな、と思います」
鈴木「夫婦って、全くの赤の他人同士が出逢って一緒に生活をするのだから、相手に対する嫌なことや、自分が良しと思うことが、イコールにはならないのが大前提。その大前提をプラスと捉えないと溝になっていく。このドラマは、入り口は不倫ですが、結婚の大前提を受け入れたり、相手を可愛いとか愛しいと思えたりすることに改めて気づかされたりするので、あんまり不倫ドラマという印象がないんです。実は“夫婦っていいもんだな”と思えることをテーマにして作られたドラマなんじゃないかなって感じました」
――夫婦という関係だけでなく、人間って愚かだけど可愛いよね、と思えるドラマでもありますよね。
鈴木「2人が別れると決まった後、実は小豆が嫌いだと言えなかったと伽耶に告白するかき氷のシーンがあるんです。結婚当初すごい数のおはぎを伽耶が作ってくれて、その時に「美味しい」って言っちゃったからだ、と。バカだなぁ、と思うけれど、そういうことって実際に“あるなぁ”と思いました。だってそれも思いやりじゃないですか。優しい嘘というか。頑張って作ってくれたお料理に、“俺、苦手なんだよ”なんて言えない。離婚直前で初めて言ってみたら、“何だ、そんなことなの?”って(笑)」
稲森「すごく匡さんらしい。我慢しなくて良かったのに、と後で思うことって人生でもありますよね。日常に流されてしまって、細々したことを後回しにしちゃって、ところがそれが段々と深くなっちゃって、ずっと言えないままになってしまうこと、もはや触れることもできなくなることって、私もすごく分かる気がします」
――どうすれば夫婦関係を劣化させずにいられるのでしょうか。このドラマを通して感じたことを教えてください。
稲森「やっぱり、気持ちは溜めずに言う。大きな問題にならないうちに、ちゃんと自分の気持ちや状態を相手にお知らせする。それに尽きると思います」
鈴木「ドラマの冒頭、伽耶と匡という夫婦に圧倒的に欠けていたのは、やっぱり会話だと思うんです。ふたりでいる日常が当たり前になって、ちゃんと目を見て“お早う”って言っていないですよね。そういう何気ない一言を、目を見て会話できていなかった。その積み重ねだと思うんです。
別れを決意した後、2人はそれにようやく気づいて、そういうことを大事にできた。うん、やっぱり夫婦関係って、日常の何気ない会話をちゃんと目を見て交わせるかどうかだと思います。そっぽを向いて“ありがとう”と言うのではなく、ちゃんと目を見て相手に伝える大切さが、このドラマですごく描かれている気がします」
クスクス笑えてホロッとしつつ、胸キュンも味わえる、なかなか味わい深いドラマです。個人的には、大好きな安藤政信さんのテンション高めの“愛すべきおバカキャラ”もツボりました!
是非、皆さんの夫婦生活改善(!?)にもお役立てください~!!
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折田千鶴子 Chizuko Orita
映画ライター/映画評論家
LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。