神田松之丞さんブームもあり、最近ちょっぴり気になっている講談。東京・日本橋にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」にて講談を楽しめるイベントがあるとのことで遊びに行ってきました。
講談を聞いていると歴史の勉強ができる!?
イベントが行われたのは「ここ滋賀」2階にあるレストラン「滋乃味」。高座に立たれたのは上方の講談師・玉田玉秀斎さんです。
興味があるとはいえ、講談の知識は皆無。そういう人は多いようで、まずは講談と落語の違いを玉秀斎さんが教えてくれました。
落語は落ちがあるように、笑わせることを目的に感情に訴えかける話芸。一方で講談は歴史物語を話すことが大きな違い。でも史実をなぞるだけでなく、演者がおもしろく脚色することもあり、全然堅苦しくありません。
今回の講談のテーマは、滋賀の名産・近江牛の誕生から普及まで。以下は玉秀斎さんがお話してくださったことですが、1つだけ嘘が混じっています。どれでしょうか?
(1)ポルトガルの宣教師が持ち込んだ牛肉を、初めて食べた日本人は織田信長。
(2)彦根城を治めていた井伊家が当時日本で唯一牛の解体を許されていたため、滋賀で牛肉文化が根付く。
(3)牛肉の味噌漬けが薬として珍重され、井伊家から徳川家と御三家に年に1度贈られていた。
(4)井伊直弼が牛の殺生を禁止しため、牛肉の味噌漬けが作れず、献上が中止。それに腹を立てた水戸藩が桜田門外の変を起こす。
(5)明治時代、牛肉の普及に努めた近江商人の竹中久次・森嶋留蔵兄弟が近江から江戸に牛を陸送している途中、山賊に襲われ、清水の次郎長に助けられた。
(6)近江牛は神戸港から輸送されていたため、近江牛も神戸牛とみなされていた。
(7)昭和29年、近江牛が白金や六本木、青山、原宿、新宿をパレードしたことがある。
(8)東京・日本橋にあった百貨店の白木屋で競りが行われたことがある。
ノンフィクションとフィクションの境界がないおもしろさ
正解は(4)。これは後世の人間が考えた歴史ロマン的なエピソードでしょう。
でもかなり自然な流れで、本当にあったようなエピソードを放り込んでくるので、うっかり「歴史の教科書、間違ってるじゃん!」ってなりかけました。
歴史物語って登場人物の人数も多いうえ、現代と違う名前を覚えるに四苦八苦する私ですが、噛み砕いて話してくれますし、聞きどころでは張り扇と呼ばれる扇子で釈台をパンパンと叩いてくれるので本当にわかりやすい! 落語は当時の風俗など、その世界のことをある程度理解していないとわかりづらい部分があるように思いますが、講談はすべて説明してくれるので知識がなくてもすんなり入り込めました。
近江八幡市の名物「赤こんにゃく」にも出合えました
高座が終わった後は、近江牛を使ったすき焼きがふるまわれました。
歴史を知って食べる近江牛の味わいはひとしお。肉質が繊細で歯切れがいよく、あぶらが甘い! しっかりと味付けされていましたが、あぶらの甘さが勝つほど。
奥に見える赤い糸状のものは近江八幡市の名物「赤こんにゃく」。料理の彩りによさそうと「ここ滋賀」1階のマーケットで買ってしまいました。
ちなみに講談師は現在80名しかいないとのことで、講談師に会える確率は宝くじで1億円が当たるのと同じレベルとのこと。ぜひ生で聞く機会のある人は一度高座に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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津島千佳 Tica Tsushima
ライター
1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。