LIFE

CULTURE NAVI「今月の人」

太賀さんが主演映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』で演じた壮絶な人生

2018.11.10

この記事をクリップする

どんな作品に出演しても、確実に爪あとを残してきた太賀さん。

主演も張れれば、バイプレーヤーとしても大いに腕を鳴らす、独特の立ち位置を確立している。

そんな太賀さんがまたも役を生きるために身を削り、観る者に心情をぐいと突きつけるのが、主演映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』。

内容を端的に示す衝撃的なタイトルにギョッとなるが、意外や太賀さん扮するタイジが鼻歌を歌いながらお料理を作る、ポップで楽しげな雰囲気で映画は始まる。

会話なしに壮絶な場面を演じられた信頼関係は財産

たいが●1993年、東京都生まれ。’06年に俳優デビュー。主な代表作に『桐島、部活やめるってよ』(’12年)、『私の男』(’14年)、『淵に立つ』(’16年)、『南瓜とマヨネーズ』(’17年)、『海を駆ける』(’18年)ほか。現在、『十年 Ten Years Japan』も公開中。

「誰しもが経験することではない、壮絶な人生ですよね。コミックエッセイを描かれた歌川たいじさん自身が感じたであろう痛みや悲しみを、役を通し、実感として体験していくハードルの高さを感じました。ただ歌川さんが描かれる絵のタッチにぬくもりや優しさ、どこかポップなものを感じたんです。そこに本質がある気がして、演じるうえで糸口になると思いました」

当然、幼少期は子役俳優が演じているが、美しくて大好きな母親(吉田羊)から心ない言葉を浴びせられ、折檻されるタイジに、思わず胸が痛む。太賀さん「会話なしに壮絶な場面を演じられた信頼関係は財産」太賀さん演じる17歳のタイジがついに母親にキレ、家を飛び出す瞬間は、「そうだ、そんな家、出てしまえ!!」と興奮せずにいられないほど。吉田羊さんとのその対決場面はなんとも壮絶だ。

「僕自身としては羊さんとお話ししたいですが、こんな母子の関係なので、現場ではほぼ会話していません。多分、羊さんも同じ気概でいらして、お互いいい緊張感で、いい(演技の)殴り合いができたというか(笑)。会話もなくそれを共有できたことが信頼関係だと思いますし、大きな財産になりました」

屈託ない笑顔で「昨日、取材で初めて“羊さ~ん”ってお話しできてうれしかった」と語る、なんとも人たらしの太賀さん。さて物語は、社会人となったタイジがひょんなことから知り合う、3人の友達との友情が大きな安らぎをもたらす。

「海辺で身の上話をし、3人が耳を傾ける場面でタイジが言う“こんなにうれしかったこと、初めて”というセリフが、すごく難しかったです。自分の人生の中で何かを更新した瞬間、初めての経験を演じる、というのが……。それまで抑圧されていたものが、友達の言葉に感動してふっと噴き出る、それを表現したくて。唐突に泣く、ということを意識しました」

もらい泣き必至のその場面で、太賀さんの心に残っているのが、タイジに対する、あるセリフ。

「友達の一人のカナちゃんが言う、“タイちゃん、私の子になりなよ”という言葉。そんなことを言える友情や優しさに感動し、尊い言葉だなと思いました。きっとタイジがずっと求めていた言葉だった気がして。女友達だからこそ言える、母性のすごさを感じましたね」

友達が多い印象の強い太賀さんだが、実際に女友達とは太賀さんにとってどんな存在なのだろう。

「もちろん女友達もいますよ。何かを男友達に相談すると、共感という形で一緒に言い合うことが多いですが、女友達はまったく別角度からズバッと言ってくれる。それで救われることも多い。僕自身、男女を問わず友達に甘えさせてもらっている意識があるので、作品にそういうものも抽出しました」

友達に背中を押され母親と再び向き合うタイジの思いは報われるか!? ラストの表情も見逃せない。

『母さんがどんなに僕を嫌いでも』

©2018 「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会

漫画家・小説家・エッセイスト・人気ブロガーとして活躍する歌川たいじによる同名コミックエッセイの映画化。幼い頃から母に愛されずに育ったタイジは、ついに悪夢のような母子関係に見切りをつけ、17歳で家を飛び出す。一人で生きていくと決意するが、新たに出会った友達に励まされ、再び母親と向き合おうとする。(11月16日より全国ロードショー)


撮影/峠 雄三 ヘア&メイク/高橋将氣 スタイリスト/山田陵太 取材・文/折田千鶴子

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる