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LIFE

CULTURE NAVI「今月の人」

阿部サダヲさん 「ゆるい作品のイメージで臨んだら、意外に骨太でした」

2018.10.09

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映画に舞台にドラマに、主演作が目白押し。ボーカルを務める“グループ魂”も9月にワンマンライブを行うなど、その活躍も才能も留まるところを知らない阿部サダヲさん。

そんな阿部さんが主演した映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』は、タイトルからしてフザけているようで、ちょっぴり切なく、シリアスさも併せ持つ異色のコメディだ。

ゆるい作品のイメージで臨んだら、意外に骨太でした

あべ・さだを●1970年、千葉県生まれ。’92年より「大人計画」に参加。代表作に『夢売るふたり』(’12年)、『殿、利息でござる!』(’16年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(’17年)など。バンド「グループ魂」でも活躍中。’19年、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』にも主演。

「ホント、突き抜けちゃってますよね。だって“声帯ドーピング”だなんて、そこからしてもうおかしいじゃないですか(笑)」

自身も思わず噴き出すシンという役は、驚異の歌声を持つカリスマロックスター。ところがその声はドーピングで作られたもので……。これまでも三木聡監督は、奇天烈な脱力コメディを放ってきた。

「三木ワールドって、もっとゆるい空気が流れているイメージでしたが、台本を読んだら意外に骨太で。シンも“やらない理由を見つけるんじゃねぇよ”とか、けっこうストレートなセリフを言う。実はそういうところが重要なのかと思い、まっすぐ強めに演じました。一転、ゆるく脱線していく笑いはテンションがまったく違うので、難しかったです」

ところがその脱線していく笑いも、意外や、緻密に作り込まれているというから驚く。

「僕も、アドリブをバンバン出しながら作る現場かと思っていたのですが、一語一句セリフを変えないんです。それをキチッと稽古を重ねながら、ゆるく見えるように作っていくとは、僕も驚きました」

シンは、声が小さすぎるミュージシャン・ふうかと出会い、なぜか彼女を気にかける。そこには、ある深い思いがあった――。

「声が異常に小さな歌手と出会った後、シンの声がどんどん出なくなり、ふうかの声が出るようになっていくストレートな物語。シンは自分の妹に、どこか重ねているところもあって……。吉岡里帆さんとは話し合いを持つまでもなく、お互いに自然に演じられました。冒頭、HYDEさんが作ってくれた歌の絶唱シーンは、いつもの自分の声とは変えたかったのですが、それも難しかった……」

人にバンバン物を言うシン。阿部さん自身も“音量を上げて”言いたいことを言うタイプ?

「僕は人に向かって“タコ!”なんて言わないし、声も小さい。幼少期は、内弁慶なほうがカッコいいと間違えていて(笑)。でも今では、家族の中では僕がよくしゃべる側。やってはいけないことを率先して見せていたら、やりすぎたのか、息子に注意されるようになっちゃって(笑)。最近子どもたちが友達と予定を入れてくるので、僕が駄々をこねています。最近の口ぐせは“俺、一人暮らしなのかな?”」

それを聞くと、子どもたちも急にしゃべろうとしてくれるという、温かエピソードにほっこり。数年前、LEEのインタビューで「奥さんが唯一本気でケンカできる相手」と語ってくれたが、最近は、ケンカのうまい対処法も見つけたそう。

「すぐに折れたほうがいいとわかったので、折れたうえで、感情的にならずにちゃんと伝えるようにしています。LINEで別の話題を振りながら、頭を整理して思いを書いていくんです。そうすると冷静になれるし、感情的に言ってしまうこともない。LINEなどがうまく作用することを学びました」

『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』

©2018「音量を上げろタコ!」製作委員会

歌声が小さすぎるストリートミュージシャンのふうか(吉岡里帆)は、驚異の歌声を持つロックスターのシン(阿部サダヲ)が"声帯ドーピング"をしている秘密を、偶然知ってしまう。そんな2人が繰り広げる騒動を描いたハイテンション・ロックコメディ。監督は、ドラマ『時効警察』、映画『転々』『俺俺』などの三木聡。(10月12日より全国ロードショー)


撮影/干田哲平 ヘア&メイク/中山知美 スタイリスト/チヨ(コラソン) 取材・文/折田千鶴子

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