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尾野真千子さん「生き急がず、少しずつ夢に近づいていきたい」

2018.08.23

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歯切れのいい口調には常にユーモアが漂い、何気ない一言で周りをドカンと沸かせる尾野真千子さん。飾らない人柄は共演者や制作陣から絶大な人気を誇るが、フィルモグラフィを見れば一目瞭然、演技に対する絶大な信頼を置かれてこそ。

そんな“演技派”尾野さんが、意外にも苦戦したと語るのが、短編アニメーション映画の声の演技だ。『ちいさな英雄』と銘を打たれた3編中の1編、母と少年の絆を描いた『サムライエッグ』で、母を演じている。

生き急がず、少しずつ夢に近づいていきたい

尾野真千子

おの・まちこ●1981年、奈良県生まれ。映画『萌の朱雀』(’97年)で主演デビュー。主演作『殯の森』(’07年)がカンヌ国際映画祭グランプリ受賞。代表作に朝の連続テレビ小説『カーネーション』(’11年~)、『そして父になる』(’13年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(’18年)など。

「今回はプレスコといって、絵が出来上がる前に声を入れる作業があったので、まぁ、コツをつかむのが大変でした(笑)。絵に口を合わせる苦労がない分、すべて頭の中で想像し、相手がきっとこう言ったから、ハイ次、私、みたいな感じ。声優さんって、本当に想像力が豊かでスゴイ、と感じました」

尾野さんの声を大もとにしてアニメーションが制作され、今度はそれに合わせて本アフレコをするという。ふぅ、とため息をついて周囲を笑わせながら、作品への愛を語った。

「極度の卵アレルギーを持つ子どものいる家庭の話ですが、誰にでも起こり得る、どこの家庭にも照らし合わせられる身近なストーリー。家族の楽しい時間があれば怒られもし、苦労はあるけれど人生を楽しんでいる。“気を使って献身的に世話を焼く”お母さんではなく、冗談も言えば、シュン君を一人ぼっちにもする。自然に無理なく、どこにでもある家族のワンシーンが自然に描かれているのがいいですね。お話をいただいたとき、自分の中でやりたいお芝居のひとつだな、と思いました」

タイトルの“ちいさな英雄”にかけて、尾野さんの身の回りにいる“ちいさな英雄”とはどんな人?

「私は常にキョロキョロして誰かの“ココがいいな、カッコいいな”と観察しているんです。多分、末っ子で、姉の後ろ姿を見て“こうしたら怒られないで済むな”と思って生きてきたから、人を観察することに長けているのかもしれません。要領がいいとも言いますね(笑)。だからいろんな人のステキなパーツを集めた“理想像”があって」

誰かのまねは決してしない、でもステキなことはお手本にする。尾野さんの生き方は、すごくシンプルでスッキリしている。

「何歳になったらコレをしたいんだ、と夢を追いかけている人が周りにいるんです。例えばいつか野菜を作りたいと思ったら、こうしたらこの土地が使えるな、とか、小さな夢でも急がず着実に近づいて実現しようとする。その姿がすごく魅力的で。私の夢は変わらず“女優”さん。それをずっと追いかけてきたので、もっといろんなことを経験し、もっと芝居を、女性というものを、生き急がず少しずつ膨らませていきたいですね」

私生活では休みが急に取れると、ブラリと本能が赴くまま、行き当たりばったりの旅もするともいう。

「例えば北海道に行きたいと思ったら、宿も決めずに次の日にとりあえず行っているだけなので、旅とは言えないです(笑)。奈良で開催されている写真展(8月26日まで)も、写真家・川島小鳥さんと飲んでいる中で、台湾に行こうという話で盛り上がり、本当に行き当たりばったりで2人きりで行きました。メイクも衣装も入らず、まるでロードムービーみたいな撮影で楽しいお仕事になりました!」

『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』

ちいさな英雄 ーカニとタマゴと透明人間ー

©2018 STUDIO PONOC

スタジオポノックによる新プロジェクト、短編アニメーション劇場第1弾。その中の1編『サムライエッグ』は、故・高畑勲監督の右腕を務めていた百瀬義行監督による母と少年の愛と絆の物語。極度の卵アレルギーを持つ小学生シュン(篠原湊大)と、心配しながらも明るく見守る母(尾野真千子)の奮闘を描く。(8月24日より全国ロードショー)


撮影/峠 雄三 ヘア&メイク/稲垣亮弐 (マロンブランド) スタイリスト/守屋ゆり 取材・文/折田千鶴子

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