【子育てカウンセラー・心療内科医 明橋大二さんにお悩み相談】「学校に行きたくない」4つの原因とは?|LEEweb限定記事
2018.08.11 更新日:2018.08.16
気づいてますか? 子どものSOS
突然子どもが「学校に行きたくない」と言いだしたら、あなたはどうしますか?
おなかや頭が痛いと訴えたり、急に荒れだしたり、今までと違う様子は子どもからのSOSサインかも。夏休み明けに慌てないために、知っておいてほしいことがあります。
今回は、LEE9月号P166~に掲載の「気づいてますか?子どものSOS」にご登場いただいた、子育てカウンセラー・心療内科医の明橋大二さんのインタビューのロングバージョンをお届けします。子どもが「学校に行きたくない」原因と理由をさらに詳しく、そして、LEE読者からのリアルな悩みにQ&A形式でお答えいただきました。
「学校(幼稚園・保育園)に行きたくない」と言われたらどうすればいいですか?
自立ができるのは、十分に「甘えた」子ども
『子育てハッピーアドバイス』シリーズなどの著書を持ち、不登校や子どものSOSについても詳しい心療内科医の明橋大二さん。明橋さんによれば「子どもが登校・登園をしぶる理由には、”甘え”があります」とのこと。”甘え”と聞くと、親としては「いつまでも甘えさせてはいけない!」と身構えますが……。
「“甘えさせる”のと、“甘やかす”のは違います。“お菓子をちょうだい”“おもちゃを買って”など物質的な要求に答える“甘やかし”は過度になってはいけませんが、“抱っこして”“話を聞いて”など気持ちを満たすための要求である“甘え”は子どもが求めるだけ与えていいんです。また、子どもがどうしてもできないことを手助けすることも“甘えさせる”ことにあたります。助けを求めたらちゃんと助けが得られるとわかることで、他人への信頼感が育つのです。逆に、子どもが自分でできるものまで大人がやってしまうのは“甘やかし”です」
やがて自立できるのは、甘えを制限された子ではなく、十分に甘えられた子なのだと明橋先生は言います。
「子どもは『依存』と『自立』を行ったり来たりして大きくなります。十分に親に依存して甘えることで、子どもは安心感を得られますが、やがて不自由を感じて自分でやりたい意欲が出てくるんです。そうして自立に向かうものの、自立の世界は自由であると同時に不安でひとりぼっちです。その不安が強くなるとまた親の元に戻ってきて安心感を得る。その過程を繰り返す中で、十分甘えて依存させてもらったという安心感が土台になって、自立のための意欲が出てくるんです」
「学校に行きたくない」4つの理由とは?
子どもが「学校に行きたくない」と言う場合は、まずその気持ちを受け止め、原因を探っていくことが必要とか。ただ、闇雲に「どうしたの?」「何が嫌なの?」と聞いても子どもは答えてくれません。
「登校・登園をしぶるときは、次にあげる4つの原因が考えられます。“先生が怖いのかな?”“友達に意地悪されたの?”と原因になりそうなことを聞いていくと、はっきり否定をせずに“うーん”と首をかしげるものがあるはずです。それが原因だと思われるので、目星をつけたら“先生はよく怒るの?”などさらに掘り下げていきます」
親が知っておきたい「学校に行きたくない」4つの原因
1_母子分離不安
「未就学児など小さい子に多い原因です。親から離れるのを不安がって行きしぶります。例えば、下の子の出産のため、お母さんが2カ月くらい入院していてずっと家におらず、祖父母の家に預けられていた。ようやく自宅に帰ってきたものの、お母さんは下の子の世話にかかりきり。このようなときは、いざ保育園に連れて行こうとしても、しぶることがある。これはお母さんに十分に甘えられず、心のエネルギーが満タンになっていない、枯渇してしまっているんです。だからお母さんと離れることができない」
働いていると、なかなか十分に甘えさせる時間がとれないと感じているお母さんも多いはずです。
「大切なのは時間の長さだけではありません。1日5分で10分でもいいので、子どもとスキンシップをしたり、子どもとゆっくり話したり、しっかりかかわる時間をとってください。“早くお風呂に入りなさい!”“宿題やりなさい!”と叱るのではなく、“今日は学校どうだった?”“試験よくできたね!”と話す時間にしたほうがいい。家は、学校でもトレーニングの場でもありませんから」
2_先生との関係
「小学校低学年の場合は、先生との関係が多いです。1、2年生は自分が怒られるだけでなく、ほかの子が怒られる姿を見て“怖い”と感じることが。中にはえこひいきをする先生やクラスで独裁者のようにふるまう先生がいる場合もあります。まずは先生本人に子どもの思いを伝え、それで改善が難しければ、教頭や校長に相談してみましょう」
3_友達との関係
「特に女の子は5、6年生になると関係が複雑になってきます。昔は人より劣っていることがいじめの原因になりがちでしたが、今は人より劣っても、人より目立ってもダメ。友達関係で神経をすり減らす子も少なくありません。小学生のうちは、いじめの中心になっている子を先生に注意してもらうことで収まることが多いです。まずは担任に相談を」
4_HSC
「十分に甘えているし、人一倍手をかけてきたはずなのに、保育園や幼稚園、学校に行くのをしぶるなら、人一倍敏感な子=HSC(Highly Sensitive Child)である場合も。HSCの子は、人に見られていると緊張してしまいますし、空気が悪いのも苦手。大勢人が集まる場所にいるだけで疲れてしまうのです。
HSCは障害や病気とは違います。子どもがほかの子と同じにできないことを、わがままだとか協調性がないと思わず、時間が必要な性質なのだと理解してあげてください。“治す”ものではありませんが、気になるようであれば医師に相談してもよいでしょう」
HSCについて詳しくは明橋さんの最新著書『HSCの子育てハッピーアドバイス』を。
一度不登校になっても、5年後には8割の子が復帰しているデータも
子どもが「行きたくない」と言ったとき、休ませてしまっていいのか、どうにか説得して行かせたほうがいいのか悩みます。
「まずは行きたくないという思いを受け止めることです。親が行きたくない気持ちや辛い気持ちに共感してくれただけで、ラクになって登校できる子もいます。朝、行くのをしぶっていても、帰宅後は楽しそうにしているなら大きな問題はないでしょう。ただ、帰宅後もつらそうにしていたり、だんだん抵抗が激しくなるようであれば、思い切って休ませてほしいです」
親としては、子どもが「学校に行けない」と言い出すと「自分の育て方に原因が?」と考えがちです。
「どうか自分の育て方のせいだとは思わないでください。自分のせいだと考えると、自分の責任上何がなんでも行かせないといけない気持ちになってしまう。子どもの特性として、学校に行きづらいのだと考えると“しかたない”と思えるのではないでしょうか」
また、一度休ませてしまうとクセになり「ずっと行けなくなるのでは?」「社会に適応できないのでは?」というのも心配になります。
「中学3年のときに不登校だった子の5年後をみると、8割の子が進学または就職しているという文科省の調査があります。決して休みグセがつくから不登校になるのではなく、行けない理由があるから行けない。骨折した人に“クセになるから早く歩け”とは言わないでしょう。それと同じことです。
心の傷も休養が必要です。今は何か原因があって行けなくなっても、傷が回復するまで安静にして、環境が変わればまた行けるようになるんです」
親自身が“ラク”になれる相談窓口を見つけて
休む期間が数日ではなく、月単位になると、親の不安は募るもの。そんなときは親子で適切な相談窓口を利用するのがおすすめ。
「スクールカウンセラーや園の相談員、地域の子育て支援センターなどでもいいですし、かかりつけの小児科に相談してもいいでしょう。最近の小児科医は精神的なことにも理解がありますし、必要があれば心療内科医にもつないでくれます。子ども支援をするNPOにも相談できるところがあります。いい相談窓口かそうでないかを見極めるポイントは、相談後にお母さんが“ラクになる”かどうかです。相談してより苦しくなるなら、相性が悪いと思って、別のところに相談してみてください」
明橋さんに LEE読者から質問
Q
息子は学校に嫌気がさしています。時間割や、ああしなさいこうしなさいと強制があることに違和感とストレスを感じています。もともと勉強が好きな子でしたが、今では勉強も強制のひとつと感じ、抵抗しています。(ろきちさん・48歳・子ども小学4年生)
A
学校以外の場でのびのび過ごすことも選択肢として考えてみましょう
先生や友達との関係に問題がないようであれば、HSCの可能性もありますが、もともと勉強が好きだとしても、学校で強制的にやらされていれば嫌になるのも当然でしょう。親が、学校だけが「学びの場」ではないと気づくことも大事。強制されず、自由にのびのびと学べる場を見つけられるといいですね。フリースクールのような場所に通うのも、選択肢のひとつだと思います。
Q
去年から4年保育の幼稚園に通っているのですが、今年に入ったくらいから夜驚症と思われる症状が出始めました。毎日「幼稚園ある? 行きたくない。大嫌い」と言っています。何が嫌いなの?と聞いても答えません。先生が厳しいと噂の幼稚園ではあるので、我慢していることもあるのかなと思っています。(100人隊No.100 まなみさん・34歳・子ども4歳&1歳)
A
夜驚症については小児科で相談し、原因について子どもと園から情報収集を
この場合、夜驚症と思われる症状が出るのはおそらく幼稚園に原因がある可能性が高いです。子どもに「先生は怖い?」「お友達は意地悪する?」など具体的な質問を投げかけ、幼稚園の先生からも情報収集を。小児科を受診して診断書を書いてもらえると、幼稚園にも相談しやすくなります。もし、幼稚園に相談しても状況の変化がみられなければ、転園を検討する余地があると思います。
Q
娘がクラスでどうしても苦手な子がいて学校に行きたくないと言うように。私はよく「これからいろいろな人と接していく機会があるから、何か言われたら言い返しなさい」と言ってしまうのですが、子どもにとっては負担になるようです。行かなくてもいいよと無理をさせないほうがいいのでしょうか。(sharemamaさん・40歳・子ども小学5年生&小学2年生)
A
まずは子どもの頑張りを認めて、学校に行きたくない気持ちと向き合って
「言い返しなさい」と言われると、子どもは親に否定されたような気持ちになってしまうでしょう。まずは話を聞いて、頑張って学校に行っていることを褒めて、ねぎらいの言葉を。それだけで子どもの気持ちはラクになるはずです。また、一時期学校に行けなくなるからといって、その後ずっと引きこもってしまうわけではありません。今は行きたくない気持ちに向き合いましょう。
いつもと違う行動が見られたら要注意、忙しくても子どものSOSを見逃さないで。
次回は、『不登校新聞』編集長の石井志昴さんのロングインタビューをお届けします。
詳しい内容は2018年8/7発売LEE9月号に掲載中です。本誌もあわせてご覧くださいね。
イラストレーション/江田ななえ 取材・原文/古川はる香
この記事へのコメント( 0 )
※ コメントにはメンバー登録が必要です。