皆さんは、家族の事情で自分の人生が大きく変化した経験はありますか?私は、あります。
女性は、結婚・出産・子どもの成長・ご家族のお仕事などに、自分の生き方を合わせて行かざるを得ない部分もまだまだ多く、それゆえの悩みを抱える方もいらっしゃるは少なくないのでないでしょうか。
その一例と言える大きな出来事に、「海外転勤」があると思います。
今回、夫の転勤に伴う海外駐在に帯同する「妻」へのサポートを行う「駐妻café」の活動について取材。生活情報の提供などにとどまらず、”夫について行く”立場となる女性自身のキャリアや生き方を支援する活動は、今を生きる多くの女性のヒントになると感じました。
華やかなイメージの陰で…「駐妻」の悩みと孤独
「駐妻café」は、夫の海外駐在に帯同している(あるいはその経験がある)女性が中心となり、
同じ立場にあったり、これから海外に出発するプレ駐在妻の女性たちに向けて情報発信しているサイトです。
時代もあるのか、私の周りには転勤で海外に住む友人が多く、その中のひとりを通してこの活動について知りました。我が家と同世代のお子さんの子育てをしながら、日本にいる時は仕事と家庭を懸命に両立するワーママだった友人。誇りを持って仕事をし、様々な場に積極的に出かけ、充実した日々を過ごす姿にいつも憧れていました。
そんな彼女は帯同後、生活環境の変化に加え、初めて仕事をしない生活をし、社会との繋がりや、人から求められることがなくなったことで深く悩んだそう。「駐妻」は華やかなイメージも強いと思いますが、海外という場所で孤独感や空虚感に苛まれ一人で苦しんでしまう女性も多く、ひどい場合は心身のバランス崩す方も少なくないと知りました。自身のキャリアが断絶してしまうこと、帰国後の復帰について…仕事を持つ女性が増えたからこその問題とも言えるのではないでしょうか。
「駐妻café」を運営する飯沼ミチエさんご自身も、パートナーの転勤に伴い、2か国3都市でトータル5年半暮らした、元「駐在妻」。子育てしながらの駐在中はもちろんですが、ミチエさんにとっての本当の試練は帰国してからだったといいます。
「次にいつ海外転勤があるかわからない状況の中で、自分がこれからどんな働き方、生き方をしていきたいのか、毎日深く悩み迷う状態が半年以上続きました。“私の人生、夫についていくだけなの?子どものお世話だけで終わっちゃうの?子育てと転勤が終わったときには、もう仕事するなんて無理じゃないの?”」
そんな中で「コーチング」に出会い、今後はそれを活かしながら、同じように悩む駐在妻の皆さんの力になれる活動をしたい!と考えるようになったそう。2018年には「第9回大田区ビジネスプランコンテスト」の入賞や、一般社団法人 日本起業アイディア実現プロジェクトによる女性起業チャレンジ制度にて特別優秀賞を受賞されるなど、活動の幅をどんどん拡げられています。
駐在経験者による具体的なアドバイスや、各地で暮らす女性との交流も!
世界中の「駐妻」が気軽に集い、出会い、思いを共有できる仲間を作る場となっている「駐妻café」。渡航前から帰国後までステージ別に必要な情報が掲載されており、渡航準備について、各国の生活基本情報、語学についての悩み、子どもの学校についてなどなど、内容は多岐に渡ります。加えて、実際に駐在されている皆さんが書く記事も、人気が高いそう。
さらに、世界各地で暮らすプレ/現/元駐在妻の皆さんとオンラインで話す「オンラインカフェ」や交流会なども開催されている他、駐在妻ならではの人生やキャリアの悩みを直接相談し、コーチングを受けることもできます。
実際の海外生活について、具体的に「予習」できるイベントも!
今回私が参加したのは、ミチエさんが代表を務めるグローバルライフデザインが主催する「海外生活を人生のチャンスにする5つのヒント」というイベント。駐在帯同予定の女性に向けて、海外駐在という貴重な機会を最大限楽しみ、有意義なものにするために必要な情報が詰まった“渡航前オリエンテーション”です。
ミチエさんはこれまで、自身の活動を通して世界各地の200名以上の駐在妻の方と直接接点を持ってきました。そのリアルな本音を聞く中で感じたのが、事前にしっかりと「心の準備」をしておくことの大切さだったといいます。
イベントでは「駐在妻生活の中で起こり得る、様々なトラブルや心配事」を挙げ、その対処法についてひとつひとつ具体的に学ぶことができました。実際に渡航してから困ったり悩んだりすることは必ずあると思いますが、それらは「よくあること」で、そこに対してどう向き合えばよいか知っておくことは、日々を前向きに過ごす上でとても大切なことだと感じました。
当日は、先輩である駐在経験者の方(海外からオンラインでの参加も!)、大手企業の海外担当人事の方や、帰国子女への支援を行う企業の方も参加され、様々な視点を知るだけでなく、「困ったときに助けてくださる方」と接点を持つこともできました。
そして、同じ状況の女性たちと繋がりができ、家族以外に自分の悩みを話し合える場ができることは大きな支えになると思います。
家族とのバランスの中で…自分自身の生き方って?
今回のイベントを通して終始伝えていただいたのが「自分自身についてしっかり考えてほしい」というメッセージでした。参加者はほとんどが「ママ」なため、つい日々の生活や子どものことばかりに気が行ってしまいますが、自分自身が安定・安心して暮らせていることが、家族の生活を支えるためにも不可欠な要素だというお話には深く納得。
後半では、自分自身のキャリア構築や人生設計も含め「海外生活の中でやってみたいこと・達成したいこと」を語り合い自分だけの「本帰国までのわくわくロードマップ」として形にするワークショップもありました。
多様な生き方を選ぶことができる自由もある一方、家族に自分を合わせる中で悩むことも多い女性。「転勤」はもちろんですが、結婚して夫の仕事や家業の関係で住み慣れた場所を離れた人、お子さんの持病で自分の仕事を辞める決意をした人…私の周りにも色々な選択を迫られ、その中で日々懸命に生きる素敵な女性がたくさんいます。
私自身も、結婚を機に退職し関西へ移った経験があります。貴重な経験や繋がりができた時間でしたが、慣れない土地で初めての出産と育児に奮闘し、そして自分のキャリアについては5年以上色々と模索し、やはり大変なこともたくさんありました。
ミチエさんが帰国後に新たなスタートを切られたのは40歳の時。コーチングの手法を学んだことで、今は、「世界のどこでも、100%自分らしく」いられる自信を持てるようになったそうです。その前向きな言葉、そして自身が悩まれたからこそ、目の前の女性に最大限寄り添いながら共に考えてくださる姿勢に力をいただきました。
「駐妻café」を運営されているのは、そんな想いのもとに集まった女性たち。今回のイベントも、運営メンバーとして世界各地からボランティアで参加されている、20数名の皆さんが力を合わせて作ったもの。「自分も悩んできたからこそ、同じような方の力になりたい」というその想いに胸を打たれました。
「海外赴任というものが、駐在員本人のみならず、家族全員にとって、
自分の可能性と視野を広げ、社会に貢献できるように成長する素晴らしいチャンスとなっている」
というビジョンを掲げ、活動されているミチエさん。
「社員を転勤させる際、その家族にもきちんと目を向け、サポートできる企業が評価される社会にしていきたいと考えています。帯同する家族への配慮やキャリアサポートなどに、企業側がしっかり取り組んでいくことによって、家族の側も「振り回される感」が減るのではないでしょうか。そしてそのような企業に良い人材が集まり、定着し、業績を上げられる…そんな流れを作っていけたらいいなと思っています。」
まずは海外転勤に帯同する可能性がある女性に、このような活動や場があることを是非知っていただきたい。
そして、仕事など「自分のやりたいこと」や自身の人生と、家族の狭間で揺れる多くの女性にも、「駐妻café」が発信するメッセージは大きなヒントとなるのではないでしょうか?
その時々の状況を、自分自身の生き方の糧にできる力や考え方を身につけたい!
皆さんの姿を通し、そんなふうに強く感じることができました。
活動など詳しくは…
「駐妻café」
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佐々木はる菜 Halna Sasaki
ライター
1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。