“まだ使えるもの”が誰かの役に立てられることを、子どもたちにも伝えていきたい
家庭で使わなくなったものの寄付先について特集している、LE「“まだ使えるもの”の活かし先」~女優・石田ひかりさんインタビュー完全版~E本誌8月号「“まだ使えるもの”の活かし先」で、その実践者として登場してくださった石田ひかりさん。その信念と行動力を見習いたいと思った読者も多いはず。
ここでは、本誌に入りきらなかったお話も含むインタビューのフルバージョンを、LEEweb限定でお届けします!
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中学生の頃に芸能活動を始め、現在は2児の母としての顔を持ちながら、女優として活躍している石田ひかりさん。石田さんが続けているのが、家庭で使わなくなったものや支援先で必要とされているものの寄付活動です。
自分や子どもが使わなくなったものを、誰かに役立ててもらえるのは、とても魅力的なこと。ただ、いざやろうとすると送り先を調べたり、発送の準備をしたりと、なかなかハードルが高く、実行できないという人も少なくないのでは?
石田さんの場合は、中学生の頃に芸能活動を始め、自分でお金を稼ぎ、社会に出たのが早かったのもあってか、“寄付”について意識するのも比較的早かったようです。
自身のInstagramでも寄付についての投稿が反響大!
最近も、履けなくなった靴や鍵盤ハーモニカなどを寄付したエピソードをInstagramで紹介。たくさんのコメントがついた。
親からの「人の役に立つことを」の言葉が、寄付のきっかけに
「子どもの頃から親によく“少しでもいいから人の役に立つことをしなさい”と言い聞かされていたので、頭のどこかにその気持ちがあったんでしょうね。20歳で一人暮らしを始めるまでは母がお金の管理もしてくれていたんですが、20代半ばになって、寄付の必要性や重要性に気づき、自分にできることから始めるようになりました」
その頃は、金銭的な寄付とともに、人からのいただきもので自分では使い切れないようなものを物資として寄付することも多かったそう。
ただ、結婚後、年子の女の子2人を産んでからは、子育てに多忙で社会貢献どころではなくなってしまったとか……。
「毎日子どもを自転車の前と後ろに乗せて送り迎えをして。一番記憶に残っているのは、まだ下の子がオムツだった頃、2人を連れて家を出て、ようやく出発!と思ったら下の子が“ママ、ウンチ出た!”って。そのまま自転車に座らせるわけにいかないじゃないですか!? また2人を連れて家に戻って、オムツを替えて、っていう。もうヘトヘトでしたね……(笑)。
でも、あるとき出産前から『国境なき医師団』にクレジットカード払いで毎月少しずつ寄付をしていたのを思い出したんです。サイトを見ると、今までの寄付総額や、それによって何人の子どもにワクチンを打てたかなどが具体的な数字で表示されていて。ひと月に寄付するのは家計に影響のないわずかな額でしたが、長く続けることの意味を強く実感しました。
それから、もっと社会の役に立ちたいという気持ちが芽生えて、子どもたちが着なくなった服や使わなくなったものを集めて寄付することを考えるようになったんです」
「寄付として送りたい」と伝えると、子ども部屋が片付く!?
自分の家庭では“もう使わなくなってしまった”けれど、“まだ使えるもの”を寄付することには、子育てにおいてもプラスがあると石田さん。
「娘たちも“片付けなさい”“捨てなさい”と言うと反発して、“これはまだ使うから”って一向に物が減らないんですよ(笑)。でも、“寄付として待っているお友達に送ってあげたいんだけど”と伝えると、自分から“これも送ってあげて”って、使わなくなった色鉛筆とかクレヨンを出してくれるんですよ。おうちが片付くうえに、社会貢献もできるなんてうれしいですよね」
石田さん自身がご両親から寄付の重要性を伝えられていたように、石田さんも娘さんたちに伝えていることがあるそうです。
「“世界には、食べたくても食べられない子がいるんだから、食事を残してはいけない”ということは、いつも伝えています。あと、意識しているわけではないですが、私が寄付するものを箱詰めする姿を見せることで、娘たちにもこういう活動があるんだということが記憶に残るといいなと思っています」
寄付を「受け取る側」のことを考えることも忘れずに
寄付の際に、石田さんが心がけているのは「受け取る側のことを考える」ということ。
「自分がもらう側だったらと思うと、少しでもきれいな状態にして送りたいですよね。靴や服は洗いますし、以前鍵盤ハーモニカを送ったときは、ホースを洗って日光消毒しました。少し隙間が空いてしまったら、100円ショップで可愛い折り紙や千代紙を買って詰めたりも。箱詰めするときには、仕分けする方のことも考えて、文具や服など種類ごとに袋に分けて詰めるようにもしています」
石田さんが寄付したものの写真をInstagramで紹介した際、たくさんついたコメントの中には「どこの団体に寄付していますか?」という質問も。いざ物資を寄付したいと思っても、どの受付先へ寄付するのがよいかわからず迷ってしまうのは、石田さんも同じだったそう。でも、「新聞やネットで調べて、ホームページなどで活動の詳細を確認するしかないですよね。“ここなら安心して任せられる”と思えるところを自分で調べ、選ぶようにしています」。
現在よく物資を送っている先は、衣類専門のところと、子ども向け用品に特化して受け付けているところ、2カ所だそう。
「それから、“使わなくなったもの”ではなく買ったものをお送りしているのが『ドナルド・マクドナルド・ハウス』ですね。病院に入院するお子さんに付き添うご家族のための滞在施設です。滞在する方は皆さん病院とハウスの往復でとても疲れていらっしゃるので、温めるだけで食べられるスープやおでん、果物をお送りしています。
以前は被災地の方から直接リクエストをいただいたものを、買って送ることもやっていました。直接被災地に伺ってボランティアができればいいんですが、当時は子どもが小さくてそれがかなわなかったので、自分にできるかたちで、と思ったんです」
今すぐはできなくても「寄付したい」という気持ちを持ち続けるのが大切
石田さん自身も経験があるように、子どもが小さいうちは、なかなか社会貢献や寄付活動も難しいものです。石田さんからはこんなアドバイスが。
「お子さんが小さいうちはどうぞ無理せずに! 育児で忙しいときは、そこまで気力体力が追いつかなくて当然。気持ちを持ち続けることが何より大切だと思うので、時間や気持ちの余裕ができるまでは寄付の意識を保ちつつ、使う時期を過ぎたベビー用品など送れそうなものを用意した箱に集めておくだけでも意味があると思います。
箱がいっぱいになったら、ご家族などに手伝ってもらいながら、寄付を受け付けてくれる団体を探したり、申し込みをしたり、配送の手続きをするといいんじゃないでしょうか。
物資の寄付が難しい時期も、細々とでいいので、お金の寄付をしておくのもいいかもしれません。最近はわざわざ金融機関に出向いて振込手続きをしなくても、クレジットカードとスマホやパソコンだけで完了する寄付もあるので」
物資にしても、お金にしても、寄付をする一番の意味は「誰かの役に立つこと」ですが、自分にも返ってくるものがあると石田さんは言います。
「私はあふれんばかりのものを持っているわけではないですが、ありがたいことに健康ですし、家族4人と犬2匹が暮らしていくには十分こと足りています。マザー・テレサのようにすべてを差し出すことはできませんが、旅行に行ったり、おいしいものを食べたりとちょっとした贅沢もしたうえで、無理のない範囲で、微力ながらも誰かの役に立つことができると、気持ちがとてもラクになるんです。もともと動くのが好きでじっとしていられない私にとっては、物を抱えこむよりも、必要のないものやお金を誰かの役に立ててもらうほうが合っているのだと思いますね」
撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/松本直子(STORM) スタイリスト/平澤雅佐恵 取材・文/古川はる香
※2018年7/6発売LEE8月号「“まだ使えるもの”の活かし先」
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