バンド体制になってから5年たったKIRINJIが、2年ぶり通算13枚目のオリジナルアルバムを発表した。
今作では、兄弟2人のキリンジ時代から20年以上、リーダーとして引っ張ってきた堀込高樹さんの心境の変化が反映されている点にも注目だ。
残された時間に思いを馳せ、大切な人にしっかり愛を伝えておこうと歌う『時間がない』やいつの間にか髪に白い髪が混じった愛する人と時を過ごす『silver girl』など、年齢を重ねたからこそ見えてきた心象風景を描く。
年齢を重ねたからこそ見えてきた心象風景を奏でる
「2年前のアルバムではあまり年齢を意識していませんでしたが、今年49歳になり、50歳が目前に迫ると、大切な人と過ごす時間はあとどれくらいあるだろう?と考えるようになりました。幸い両親は元気ですが、いつ何が起こっても不思議ではないし、僕自身もこの先何があるかわかりませんから」
精力的に作品を作り、ライブが増えていることも「時間がない」と感じ始めたからだという。
「今後、例えば家族を介護する必要があるかもしれないし、息子たちもまだ中学生と小学生。音楽以外の人生に時間を割く場面もきっと増えていく。いつまで今のペースで音楽をやり続けられるか。そう思うと、本当に“時間がない”わけですよ。だから、できる限り、やりたい音楽をやっておきたい」
前作ではライムスターをゲストに迎えた躍動的なラップ曲『The Great Journey』が話題となった。今作でもスペーシーな音に、いつか(Charisma. com)の浮遊感のあるラップがきいた先行シングル『AIの逃避行』が収録されている。
「2作続けてラッパーをゲストに迎えたのは、ボーカルが途中でラップに切り替わる仕掛けがおもしろいと思ったから。20年以上も音楽をやっていると、時には〝なぬ!?”とひっかかる曲が欲しくなるんですよ。それにラップが入ると、単純に音楽の幅が広がるし、座持ちもいいでしょ(笑)」
バンド体制にもなじんだ。
「音楽ってストーリーやキャラも含めて愛でてもらうものだと思うんです。兄弟時代は“兄弟”というストーリー、キャラで、バンドになってからはこのメンバーだからこそ生まれるものがある。そうしたストーリーも含めたKIRINJIというパッケージで音楽を作るのを楽しんでいます」
最近は2人の息子たちが父の所有するCDを取り出して聴くこともあれば、新しいバンドや音楽の楽しみ方を子どもたちに教えられることも多いそう。
「中3の長男がいろいろな音楽を聴いているので、『それ、何て曲?』と尋ねると『あとでLINEする』と言われます(笑)。最近の曲はフィーチャリングなんとか、みたいなややこしいタイトルが増えているから、LINEで送ってもらったほうが確かに正確。先日はカシミア・キャットというDJの曲を教えてもらって気に入りました。その一方で、ジャクソン5の『I Want You Back』がカッコいい!とも言うんですよ。その振り幅がおもしろい。次男はまだ小3ですが、アニメの『ミニオンズ』に使われていることもあって、ファレル・ウィリアムスの『Happy』が大好きです。ジャクソン5やファレルが子どもたちにとってもカッコいい、という発見が新鮮ですね。僕ももっと頑張らないと!」
『愛をあるだけ、すべて』
メジャーデビューから20周年を迎え、さらに腕に磨きのかかった堀込高樹を中心に、アーバン感やブラックミュージックの要素等が盛り込まれた13枚目のオリジナルアルバム。多様な曲調ながら、大人の心に響く詞と音は共通でスモーキーなカラフルさが印象的。ボーナスDVD付きの初回限定盤、通常盤とも発売中。(ユニバーサル クラシック&ジャズ)
撮影/名和真紀子 取材・文/中沢明子
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