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映画『汝、星のごとく』を観てきました|ただの恋愛映画ではない、登場人物たちの苦闘と救いの物語

  • 066 あまなつ

2026.10.10 更新日:2026.10.12

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映画『汝、星のごとく』を観てきました

愛媛に住んでいたころ、この話の舞台となっている瀬戸内海の島々へ遊びに行っていたことがきっかけで原作を読みました。

2023年の本屋大賞を受賞し、第168回直木賞候補にも選出されている本作品。
文章の美しさや巧さはもちろんのこと、登場人物の生き方に深みがありとても読み応えがあります。

主人公・櫂を演じる横浜流星さんは、軽やかさと芯のある真面目さを持ち合わせていて櫂のイメージにぴったり。
原作を読んだ横浜さんが監督や原作者の凪良ゆうさんに映画化を熱烈オファーして実現したそうで、横浜さんの気概にも胸を打たれました。

この前情報を聞いて以来、原作ファンとしては期待しない方が難しく、公開をとても楽しみにしていました。

原作の感想――正しさとは何か

汝、星のごとく 紀伊国屋書店限定カバー 感想
(左)凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社文庫)。紀伊國屋書店グループ限定特装版です。カバーの裏側には本作品にまつわる仕掛けもあり、読者も物語の中に存在するような感覚を味わえます
(右)映画のパンフレットです。余韻に浸りながら、ゆっくり読もうと思います

本作は、主人公の暁海と櫂が高校生から大人になるまでの15年間に及ぶ軌跡を描いた物語です。
ジャンルとしては、単なる恋愛ものではなくヒューマンドラマに近い作品だと私は感じました。

中でも私が特に印象に残ったのは、巧妙に描かれた二人を取り巻く「4人の大人たち」の苦闘と孤独です。

まず、櫂と暁海のそれぞれの母親。
子どもへの経済的な依存や離婚・不倫で子どもたちの人生を翻弄する母親たちの姿は、今どきの言葉を借りるなら「毒親」に近いのかもしれません。

一方で、対照的な存在として登場するのが、櫂と暁海の通う高校の教師である北原先生と、暁海の父親の不倫相手である瞳子です。
二人にとって彼らは母親たちよりも頼れる「良い大人」であり、あらゆる局面で二人に手を差し伸べます。

もっとも、北原先生や瞳子にも複雑な事情があり、その生き方が世間一般の「正しさ」に叶っているとは言い切れません。
実際、北原先生自身も「何が正しいかなんて誰にも分からない」と言い切ります。

星を編む 映画 感想
北原先生の過去は『星を編む』で読むことができます。櫂や暁海と同じく、正しさだけでは生きられなかった彼の優しさに触れることができる作品です

それでも「良い大人」として、不完全ながらも櫂と暁海の人生の過酷な部分に救いの手を差し伸べる行為そのものが、北原先生と瞳子自身にとっても救いだったのかもしれないと思えます。

誰かを助けることが自分自身の救いとなっていることって、現実世界でもきっとたくさんある。
そうした連鎖があるからこそ、この世界は少しだけ優しいし、捨てたものではない。
二人の姿にそんな希望を持ちました。

個人的には瞳子の台詞にたくさん刺さるものがあり、心の中に留めておきたい人生訓が増えました。

(ちなみに、映画では原作中の「毒親っぷり」を発揮するシーンが割愛されていることが多かったのですが、それをカバーする尾野真千子さん、木村佳乃さんの圧倒的な演技力に脱帽でした)

映画の感想――瀬戸内海の美しさが際立たせる、櫂と暁海の儚い生き方

瀬戸内海 夕凪 汝星のごとく
愛媛で暮らしていたころに撮影した夕凪の瀬戸内海。原作は4章の構成で、それぞれ海にまつわる「潮騒」「波蝕」「海淵」「夕凪」という名前がついていて、人生の起伏を表しています。櫂と暁海の最終章は、「夕凪」のように穏やかでした

以下、物語の核心をつくネタバレを避けるため、抽象的な表現が多めになります。

主演のお二人をはじめ、出演者全員の役作りがすごかったです。恐怖すら感じました。
特に櫂の親友・久住尚人役を演じた松村北斗さんは、途中から違う人が演じているのではと錯覚するほどでした。

原作に忠実に、登場人物の繊細な感情の動きが描かれていました。
だからこそ終盤は感涙必至。
公開初日の茨城県の某映画館では、私を含めてみんな同じところですすり泣きが聞こえてきました。
(どこか、というのはネタバレ防止のため言及は控えますが……「櫂と暁海が二人で過ごした時間」が描かれているところです)

音や色彩が強くないので、全体を通してリラックスして観ることができます。
砂浜や海辺、緑、水面に映る柔らかな光。こうした島の自然が変わらずにそこにあり続ける中で、時々刻々と変化していく櫂と暁海の生き方の儚さがより一層際立っていました。

瀬戸内海の波の音は「ザッパーン」ではなく、「ちゃぽちゃぽ」と優しい音がするのですが、劇場でも心地よく静かに響いていて、瀬戸内海沿いで暮らしていたころを懐しく思いました。

離島や海のそのままの美しさを写真のように写し出しながらも、絵画のような淡い色彩に満ちた映像美を、ぜひ大きなスクリーンでご覧になってください。

拙い感想になりますが、どなたかの参考になれば嬉しいです。

No.066 あまなつ

066 - あまなつ

会社員 / 茨城県 / LEE100人隊

36歳/夫・娘(2歳)・息子(0歳)/手づくり部・美容部/育児休暇取得中の会社員です。好きなことは、読書、観劇(お休み中)、国内の史跡めぐり。LEEで紹介される丁寧で上品な暮らしが、永遠の憧れ。現実は毎日くたくたになり、ひーひー言いながら生活をまわしています。家族の笑顔が何よりの活力です。LEE100人隊でのご縁を大切に、みなさまの暮らしに少しでもプラスになる情報をお届けできるよう、精一杯努めてまいります!身長158cm、骨格はストレート。

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