暮らし発見

姉との課題図書『介護未満の父に起きたこと』|スーさんの言葉はいつも心に響く

  • 016 Umi

2026.02.11

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ご両親は「ご健在」ですか

皆さんのご両親はご健在でしょうか。

「健在」とは、健康で元気に暮らしていること。以前と変わりなく能力を発揮している状態のこと。

記憶の中にある親の姿は、元気いっぱいの働き盛りだったりしますが、こちらが年を重ねていくのと同じように、悲しいかな…親が年を取るのは当たり前のこと。

海外在住じゃなくても、日本国内であっても。
親と一緒に過ごす時間が多い人ばかりではないと思います。会うたびに、ひとりの人間として年老いて少しずつ小さくなっていく親を見ると、いろいろな感情が湧き起こります。

私の実感では、今の70代の方々は本当に元気。
でも70代後半に差し掛かってくると、「以前と変わりなく能力を発揮している」が、目に見えて難しくなってくる——そんな場面が増えるようにも思います。

私には82歳の一人暮らしをする母が、札幌にいます。

本の帯にもあるように、当たり前のことだけれど、「日に日にできないこと」が増えていっているのを実感しています。

最近、母がテレビを買い替えたのですが、新しいリモコンを手に持っても、指先がなかなか器用に動かない。ボタンが多いだけで、操作が急に遅くなる。
私はカナダからビデオ通話をつなぎ、「そのボタンじゃなくて右上!」「入力切替を押すんだよ。」と遠隔で指示を出し、姉も横で指を指しながら母に教える。三人が同じリモコンをめぐって真剣になっている姿が、なんだか滑稽でおかしくて、笑ってしまうこともあります。

ペットボトルの蓋も、以前は何でもないように開けていたのに、今は自分で開けるのが難しいことがある。
そんな「小さなできないこと」が、暮らしの中に増えていくのだなと感じます。

そしてもうひとつ、私の中で大きかったのが、母が大好きだった運転を諦めて、80歳のときに免許証を手放したこと。
「まだ大丈夫」ではなく、「もうここまで」と自分で線を引いたことが、なんだかすごく切なかったのを覚えています。

82歳の母と「終活」という合図

昨年の夏、カナダから日本へ一時帰国しました。

家族で東京から北上しながら旅を楽しみ、最後に実家のある札幌へ。

私には、ひとつ大きな目的がありました。

父が亡くなったのは十数年前。
現在82歳でひとり暮らしをしている母は、父が建ててくれた家をリノベーションしながら、お掃除も丹念にして、とにかく丁寧に保ってきました。
今も「ひとり暮らしを堪能している」と言い切れるくらい気丈で、暮らしに誇りがある人です。

そしてここ数年、周りの友人たちの影響もあってか、母は「終活」に取り組み、断捨離に励んでいます。元々掃除が大好きな人なのですが、帰るたびに家の中がすっきりしていくのを見ると、子どもの頃に慣れ親しんだ実家なのに、どこか別の建物のように感じる瞬間もありました。

…とはいえ、終活だなんだと言いながら本人はいたって元気。そんな母に向かって娘たちが

「終活なんてしている人に限って、長生きするんだよ〜」

なんて軽口を叩いて笑ったりする日々でした。

夏の家族会議、そして11月の母の入院

母から「三人で大事な話をしておきたい」と言われ、札幌で近くに住む姉と、カナダに住む私とで、私の一時帰国中に時間を取りました。話し合った内容は、

「もし母に何か起きたら?」

という現実的な話。
まだ元気なうちに、娘2人が知っておかないといけない情報(お金・保険・お墓・土地・友人知人の連絡先などなど)を整理した上での話し合いでした。

そして、その話し合いをした3か月後の10月。

母は突然体調を崩して入院することに。

この出来事は、私にとって「あの夏の話は、ただの確認じゃなかったんだな」と実感するきっかけに。

入院中は、姉と私で大慌て。毎日2回はビデオ通話で状況を共有しながら、
「もしかして手術かも?」
「航空券取って、日本に帰国するね」
と、話が一気に現実的な段階まで進んだことも。

いくら元気でも、82歳がベッド生活になると一気に体調が転げ落ちる例をいくつか見ていたので、気が気じゃありません。

そう、いきなり寝たきりになるわけではないのです。

幸い、周りの心配をよそに、母は不死鳥のごとくシャキーン!と回復して、あっさり1週間ほどで退院できました。

遠方に住んでいると、判断材料は集まっても、行動の選択肢が限られる。
距離があるぶん、備えの必要性だけが鮮明になる瞬間でした。

そんなタイミングで姉と、「共通の土台になる本を読もう」と決めて手に取ったのが、

ジェーン・スーさんの『介護未満の父に起きたこと』でした。

スーさんの『生きるとか死ぬとか父親とか』のドラマで見たあのお父様。TBSラジオのOVER THE SUNでもよく話題に出てくるお父様。

わたしの母が82歳というのもあって、本に登場するスーさんのお父様が身の回りを整え始める年齢と重なり、読みながら一気に親近感が湧きました。

1月初旬のハワイ旅行に持って行き、読みました

「介護」まではいかないけれど、暮らしの難易度がじわじわ上がっていく——その手前の話に直面している人は、結構多いのではないでしょうか。

①「介護未満」という、いちばん判断が難しいゾーンに効く

この本の中心にあるのは、介護が始まってからの話ではなく、その手前の「じわじわ」の部分。
親はまだ自立している。けれど、暮らしの難易度が少しずつ上がっていく。

子ども側も、何をどこまで手伝うべきか決めきれない——このグレーゾーンが、まさに「介護未満」。

リモコンの使い方やペットボトルの蓋みたいな、ひとつひとつは小さな困りごと。でも積み重なると、暮らしの輪郭が変わってきます。

この本は、その曖昧さを変にドラマチックにせず、現実のサイズ感で言語化してくれます。

もう、さすが!スーさん!

「今の状態」を説明できる言葉があるだけで、家族の会話の土台がぐっと整います。



②スーさんの「ビジネスライクな整理」が、家族会議に役立つ

私が特に「これはいい」と思ったのは、スーさんの書き方が感傷に寄りすぎず、ビジネス書を参考にして、状況を分解して整理していくところ。

レコード会社に勤めていたスーさんならでは、父親を「ミック・ジャガー」に見立てるのもクスリと笑えるポイント。

親のことは情が入りやすいテーマだからこそ、いったん構造で捉える視点が効いてくるのだと思います。

起きていることを「事実」として並べ、課題とリスクを切り分け、できること/できないことを落とし込む。頭の中のモヤモヤを「表」に落とし込んでいく感覚。
この視点があると、会話が「気持ち」だけで流れず、論点に戻って話し合えます。

③読後に残ったのは「癒し」より「手順が見える」感覚

読み終えたあと、胸が熱くなるというより、頭がすっきりしました。
「介護未満」の時期は、気持ちは忙しいのに行動の優先順位がつけにくく、焦るか、先延ばすか、極端に振れがち。けれどこの本は、その中間に立たせてくれます。

全部を背負わなくていい。でも、放置もしない。
その現実的な線引きを、自分の中で引き直せる一冊でした。

親子で笑って話せているるうちに、ちゃんと備えておこう。

しっかり顔を上げて前を向ける、そんな気持ちになった読書でした。

40代〜50代は、子育て・親のこと・自分の体のこと…
なかなか大変なことも多いですが、こうやって読書に救われることも多いです。

ではでは、また♪

016 - Umi

教育系 / カナダ / LEE100人隊

48歳/夫(ポーランド人)・娘(12歳)/手づくり部・料理部・美容部/気づけば、カナダ暮らしも20年。3年目のLEEラストイヤーは、心豊かに、彩りゆたかに。旅やネイル、ワークアウト、発酵生活やおいしいものを通して、海外にいても心の余白を大切に。「丁寧に」、そして「笑顔で」。少しの冒険心とユーモアを添えて、多面的に進化していけたらと思います。読む人の心に、ぽっと灯りがともるような瞬間を届けられますように。パーソナルカラー:イエベ秋 顔タイプ:エレガント 骨格:ナチュラル。

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