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映画『国宝』2度目の観賞│ 夫婦で浸る入魂の演技

  • TB はな

2025.09.27

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興行収入150億円突破!

社会現象となった映画『国宝』。夫と共に味わう圧巻の芸と美。

夫と2人で、映画『国宝』を観て来ました。私は2度目の観賞、夫は初見です。(1度目観賞時の感想記事は以下の通りです↓)

公開から3ヵ月以上を経てもなお熱狂は冷めやらず興行収入は既に150億円を突破している大ヒット作で、今や「邦画の最高傑作」の呼び声高し本作。その熱気の理由を、改めて体感する時間となりました。

映画『国宝』のスクリーン入口の画面。

My 2nd Impression….

(※ネタバレ有です)

2度目の観賞で見えた、新たな深み

今回、前回以上に強く感じたのは「血縁に生まれなかった者の苦悩や渇望」。キャッチコピーにある「その才能が、血筋を凌駕する──」という言葉の重みが、映像を通じてひしひしと胸に迫って来ます。梨園という世界を全く知らない私でも「実際にこんなことがあるのだろうか…」と頭の端で考えながらも、あまりに荘厳で美麗な映像と、吉沢亮さんの類い稀なる美しさ役が憑依しているような稀代の女形っぷりに、先々の展開にも理屈ナシに妙に納得してしまいます。

初回の観賞時では吉沢亮さんの演技に圧倒されっぱなしでしたが、今回2度目の観賞で改めて見えて来たのは、横浜流星さん演じる俊介の、御曹司たる所以からか、内面から滲み出るような育ちの良さや、人柄の佳さ。その他にも、初見では見過ごしていた細部に心を突き動かされました。たとえば、引退した万菊さんが喜久雄に扇子を手渡して「踊ってみなさい」と告げた場面でも、(国宝から次の国宝へバトンが渡されたのだ…!)と涙が溢れ。前半の曽根崎心中開幕前の楽屋で、震える喜久雄の代わりに俊介が紅を塗ってあげるシーンでも涙ナシに観られませんでした。

…いや、正直に言いますと、それよりもずっと早く、冒頭の「二人藤娘」から涙が止まらず…。観賞後に夫から「泣くような場面でもないのに、横からズビズビ聞こえて来て鬱陶しかった。事の顛末を知っているからって…!」と文句を言われましたが、違うんです!結末を知っているからではなく、ただ、美しいものを目にして涙が出ただけで…。美しいは正義。私にとってはそれ以上でもそれ以下でもありません。また、彰子が「出て行く!」と叫んだ時の喜久雄の表情にも、今回ようやく気付きました。思惑から外れたような、絶望に沈んだようなその顔。初見では一瞬過ぎて捉えられなかったのですが、──ああ、やはりそうだったのね…と心の奥底で納得してしまいました。夫は、渡辺謙さん演じる半次郎が今際(いまわ)の際に無意識に「俊坊…」と呼んでいた場面が強烈に印象に残ったようでした。

不思議なのは、どの登場人物にも感情移入している訳ではないのに、気が付けば物語の真っ只中に没入しているということ。夫も「3時間の長さを全く感じなかった…。ほんまにあっという間やった…」とポツリ。そして2人揃って、上映中はポップコーンを一口も口に出来ないまま、ただスクリーンに釘付けに。

この作品の心理描写はけっして饒舌ではなく、観る側の解釈に多くを委ねています。矢継ぎ早に物語の重要な局面が訪れ、観客は解釈が追いつかぬまま、ただ映像美に圧倒され続ける…。俊介は春江を想っていたのか?春江は喜久雄の求婚をやんわり断っていたのに、なぜ俊介と消えたのか?頭の中がはてなマークで埋まる一方で、描かれなかった空白の時間に想いを馳せる自分も居ます。名前を捨て外に出た俊介を、春江は献身的に支え続けたのだろうと。そこに打算やあざとさは微塵も感じられませんでした。たとえば夫は「人間国宝の万菊さん、なぜ晩年にあんなボロアパート…?」という疑問も口にしていました。物語の根っこの部分、「お父さんの敵討ちどうなった…?」「なぜ喜久雄は歌舞伎にこれほどまでに入れ込めるのか…?」についても解説的描写ナシ。しかしそこには「理屈を超えた何か」がハッキリ存在していました。きっと100人が観れば100通りの解釈が生まれる…、そんな懐の深さが、この映画の凄みでもあるのではないでしょうか…。

夫は「これはあくまでフィクションだし、現実に血筋を持たず芸だけで“国宝”にまで上り詰めるなんてことは、そうそうない。ファンタジーも混ざってる。けれど芸道を極めることがいかに過酷か、並大抵のことではないんやと見せつけられた」としみじみ語っていました。ここでまた、『ヒカルの碁』の塔矢アキラが放った「棋士の高みを知っているのか」という台詞が脳裏をよぎります。忍耐、努力、辛酸、苦渋、そして絶望すらも乗り越えてなお掴み取れるかどうかの世界。最高到達点に辿り着いた者だけが見るのを許される景色。それは一番最後の喜久雄の「きれいやなぁ…」という言葉に凝縮されています。芸を極めるとは、まさに「悪魔と取引」をするような代償を伴うものなのかも知れません。それでも、最後に差し出される「実娘からの赦し(厳密には、赦しではなく礼賛?)」があるからこそ、人はなお舞台に立ち続けることが出来るのかな…と思わせてくれる映画でした。2度目の観賞を終えた今もなお、まだ言葉にできない余韻が胸に残っています。

In Conclusion…

結びに

夫婦で語り合えた、忘れがたき余韻

夫と一緒に観たことで、一人で味わう以上に余韻深い時間となりました。

映画館でのポップコーン2種類
上映中、夫婦2人してポップコーンを1口も食べられなかったです。ただの1口も。

上映後は言葉少なに呆然とした夫が、観賞後数日間は『国宝』関連の舞台挨拶や試写会、インタビューなどの映像を夢中で追っていた姿も目に焼き付いています。社会現象とも言える盛り上がりの中で、私自身も2度目の観賞にして改めて、俳優陣の血が滲むような努力が垣間見えるような入魂の演技と、映像美に心を震わせ続けました。『国宝』というい名にふさわしい、記憶に刻まれる一作。夫はすっかり『国宝』の魔力に取り憑かれ、「原作読みたいな…読もうかな…、三谷幸喜のコメントも気になるし…」と言っております。

⋆⸜ᵀᴴᴬᴺᴷ ᵞᴼᵁ⸝⋆ LEE100人隊 / はな

TB - はな

会社員 / 神奈川県 / LEE100人隊トップブロガー

42歳/夫・息子(14歳・12歳)・娘(9歳)/手づくり部・料理部・美容部/大雑把な山羊座のO型。好きなものは器、アメリカンヴィンテージ、宝塚歌劇、マンガ、ミナ ペルホネン、オールドマンズテーラー、GU、ユニクロ、無印良品など。ファッション・インテリア・お料理などLEEで勉強中。両実家とも遠方で3人の子育てに日々奮闘。17年間専業主婦→パートを経てフルタイムで働き始めました。ドタバタと過ぎて行く日々の中でも「今」を大切に、小さな幸せを拾い集めながら成長して行きたいです。

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