まず、すごい作品に出会ってしまったなと思いました。想像を逸する世界感と、現代社会への問いかけが強く、読んだ後、しばらく世界から抜け出せませんでした。
あらすじ
如月空子という生まれながらに“性格”を持たない女の子が主人公で、周囲の人や状況に合わせて人格を切り替え、相手の望む姿をトレースしながら生きています。その空子が暮らす「クリーンタウン」を舞台に、人々や社会の在り方を鋭く描き出した物語です。
ふわふわの生き物「ピョコルン」や良くも悪くも特別な人種「ラロリリン人」が登場し、現実と幻想が入り混じる中で、空子が幼少期から大人になるまでのストーリーの中に差別や暴力、ジェンダーといった現代社会の問題が織り込まれた壮大な群像劇でありながら、現実に近しいディストピアの世界の話です。
人間の見たくない部分が鮮明に書かれている
その人に合わせてキャラを変えたり、求められることを話そうとしたり、自分の保身のためにいじめる側に回ったり、人を差別したり、上っ面だけで付き合いをしたり、、、
人間、そういう面は必ずもっているものだとは思うのですが、そのどうしようもなくずるがしこく、汚い部分が物語のところところにでてきます。
男女の格差、苦しみ
ピョコルンという架空の生き物がでてきますが、後にその動物は、妊娠、出産、家事、育児、性処理まで担う、一家に一匹いると、いいよねという存在になります。
恐ろしいのはこの、担っていること、すべて、現代の女性が多く担っている部分ということ。
一方、家族を養うために夜遅くまで仕事に明け暮れる男性も何人かでてきます。その男性のことを「道具がんばれ!」と応援する人がいたり、惨めに思ったり、女性と男性の不均衡さを鮮明に書きつつ、それぞれの苦しさも感じます。
ただピョコルンもただの便利な「道具」ではなく、逆に人間がピョコルンに金銭的にも体力的にも精神的にも追い詰められていくシーンもあり、AIが進化した行く末をみているようでぞっとしました。
とても便利で面倒なことを一気にやってくれるAIにいつか気を使う日もくるかもしれない、と想像してしまいました。
クリーンな世界
現代は昔と比べて、発言や行動に気を付けることが多くなりました。この小説はさらに進み、「クリーンな人」という怒りや憎しみを捨て良いことしか言わない人たちがでてきます。このようにどんどん世の中が「クリーン」を求めていくと、やがて「感情」はいらない、となってしまいそうで、怖くなりました。
ラストはさらにとんでもない方向に話が向かいます。
衝撃的な言葉や印象に強く残る言葉も多く、村田沙耶香さんの才能が怖い、、、と思いました。
かなり分厚く、上下2巻となりますが、ぜひぜひ読んでほしい、作品でした。

TB - あお
会社員 / 埼玉県 / LEE100人隊トップブロガー
39歳/夫・息子(14歳・8歳)/フルタイムの会社員、ワーママ歴は13年目に突入。39歳でリモートワーク中心の会社に転職しました。平日はとにかく質素に疲れないように過ごし、土日は子ども達の試合を見に行ったり、カフェに行ったりアクティブに過ごしてます。趣味は読書、料理、インテリア。特技は家計管理。日々、自分の心と身体を整えるために、ジャーナリング、読書、ヨガ、ウォーキングや筋トレに勤しんでいます。骨格ストレート、イエベ秋。身長153cm。
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