暖かくなったと思ったら急に冬に逆戻り、そんな3月のはじめ。
相変わらずちょっとした隙間時間にせっせと本を読んでいます。
最近読んだ中で特におもしろかったものをご紹介します。

「婚活マエストロ」宮島未奈
「成瀬は天下を取りにいく」で人気の宮島未奈さんの新刊、
疾走感のあるエンタメ小説の舞台は婚活。
こたつ記事ライターの主人公が、最初は取材先として、その後は参加者として、最後には運営側として婚活パーティーを主催する会社に関わる中で、さまざまな出会いや出来事を経て成長していく物語。
いくつかの章で話が構成されていることもあって、スイスイ読めました。本当に読みやすい。
手作り感のある婚活パーティーの様子や、その参加者、運営サイドにいるどの人たちも愛おしくて温かい。小説を読みながら頭の中でその世界を勝手に組み立て楽しむのが好きなのですが、この作品はキャラクター一人一人の描写もわかりやすく、脳内の空想がとてもはかどりました。
登場人物みんなを応援したくなるような心境で読み終えました。
続編や映像化などを勝手に期待してしまう作品です。
「あいにくあんたのためじゃない」柚木麻子
帯に「最高最強のエンパワーメント小説」とありましたが、まさにその通り!と拍手喝采したくなるような作品。
柚木麻子さんの小説といえば、女性の友情を描いた作品が多くわたし自身とても好きなのですが、この作品の中でも登場人物たちがシスターフッドで日常を乗り越えていく様子が描かれていて良かった。
ざわざわ、ざらりとするような、なんともいえない気持ちの悪さを細やかにすくいとっているところが、いつもすごいと感心してしまいます。
テンポの良さと、時々クスッと笑ってしまうところも素晴らしい。
6篇の短編が収められているので、1つ1つの話のボリュームがちょうど良くてささっと読みやすいのもいい。
個人的には「商店街のマダムショップは何故潰れないのか?」がとてもおもしろくて印象的でした。
「風街荘へようこそ」近藤史恵
近藤史恵さんの作品が好きで、これまでもたくさん読んでいます。
ドラマ化された「ビストロ・パ・マル」シリーズを始め、料理の描写がとにかくおいしそうなのはもちろん、気負わずゆったりした気持ちで読めて、読後は温かい気持ちになるような作品が多いのです。
新刊のこちらも、タイトルを読むだけで「絶対好きなやつだ!」と確信しましたが、やっぱり好きになりました。
離婚をして家族を失い京都にやってきた主人公の眞夏が、京都の小さなゲストハウス「風待荘」でしばらくオーナーの仕事を手伝いながら暮らすことになります。
同居する4人の女性たちやお客さんと関わりながら、少しずつ再生していく物語。
世界はそんなふうに、ちょっとしたことで変わって見えるのだ、という一文がありましたが、その通り。
これまで、これが当たり前だと思い込んでいたことから少し視点をずらすことで、いろんなことから解き放たれて自由に生きていけるのだというメッセージを感じました。
登場するキャラクターがそれぞれ魅力的なことと、何より食べ物がおいしそうで、想像をふくらませてはお腹が空きました。
「ミーツ・ザ・ワールド」金原ひとみ

金原ひとみさん、ずっと気になってはいたけれどその作品をこれまで読んだことがなかった。
初めて手に取ったこちらは、確か新聞の書評で見ておもしろそうだと思ったから。
久しぶりに、寝る時間を惜しんでほぼ一気読みしてしまったほど素敵な作品でした。
死にたいキャバ嬢と推したい腐女子が出会って、新たな世界の扉を開く、という帯文の通りなのですが、これが本当におもしろくて。
ざっくりいえば、主人公の腐女子の由嘉里が、希死念慮を持つキャバ嬢ライと出会ったことをきっかけに、多様な価値観の登場人物と関わる中で、どんどん新しい世界に猛スピードで進んで、まさに扉を開くストーリー。
読み進めるごとに、普通って一体なんだろうかと思う。
突き抜けて多様(というか個性がすごく強め)な登場人物たちすべて、わたしにとってはもれなく理解の輪の外にいるのだけれど、なのに全員が愛おしい。
読みながら、おもしろくて止められないのだけれど、この小説の世界があと少しで終わってしまうことがさみしすぎて、戻って読み直したりしたのは久しぶりでした。
映画化が決まっているとのことで、これが本当に楽しみ。(勝手にキャスティングを想像してニヤニヤしているところ。)
金原ひとみさん、初めて読んでこんなに「大好き!」となることってそうそうないのだけれど、大好きです。他の作品も読んでみたい。
「へこたれてなんかいられない」ジェーン・スー

毎回新刊が楽しみなスーさんの最新エッセイ。
中年の毎日にはいろいろあるけれど、今日もなんとか生きていくのだ!の言葉に、首がもげるほどぶんぶんうなずく。
オーバーザサンも相変わらず毎週本当に楽しみに聴いているけれど、スーさんの話す言葉、書く文章には温かさが真ん中に通っている感じで、そこがわたしも、きっとみんなも好きなんだと思う。
個人的には歯の話がおもしろすぎて、何度読んでもゲラゲラ大笑いしながらも、遠くない未来に自分も似たようなことが起こりかねないなと思ったのでした。
3月の読書のお供のおやつは
長野のりんごがたくさん届いたので、キャラメル煮にしてクランブルをのっけて焼きました。
アイスを添えて一緒に食べてもとてもおいしいけれど、熱々をそのままいただくのも好き。
クランブルはたくさん作っておいて、小分けに冷凍しておくととても便利。
何か甘いものを、と思った時に果物を煮たものの上にのっけて焼くだけで立派なお菓子になります。
気軽だけれど、結局こういうのが作りやすくておいしくて、日常のおやつという気がします。


ある日のおやつは、鈴懸の苺大福。
この時期の我が家の定番的おやつ。
やっぱり鈴懸の苺大福が一番だよねえ、と言いながら食べるのがお約束になっています。

本の世界に入り込む
一時期は読書ペースががた落ちしたこともあって(老眼的な理由もあり)、以前ほど本を読めなくなってがっかりしていましたが、最近また復活してきました。
メガネをかけたり外したり、睡魔に勝ったり負けたり忙しくしながらも、せっせと合間合間に、時にはゆったりお風呂に浸かりながらする読書はとても豊かな時間をくれる。
わたしは普段、日常の暮らしの中で起こった小さな事件やトピックに、感激したり、落胆したり、時には傷ついたりしながら生きています。
そんな中でも一旦本を読めば、物語の世界にぐぐーっとーっと引っぱられて、そっちの世界の感動や驚きに感情が上書きされて、もはやどっちが現実でどっちか本の世界だったのかわからなくなるような感覚が時々あります。
それだけ没入しているということなのだけれど、わたしはそれが楽しくて本を読むのだと思う、
と「ミーツ・ザ・ワールド」を読んで再確認したのでした。
あき
会社員・料理教室主宰 / 福岡県 /
49歳/夫・息子(24歳)・猫/手づくり部・料理部/インテリアコーディネーター、ジュニアベジタブル&フルーツマイスター。料理と、そのまわりの空間づくりと、インテリアが好き。季節を感じながら、料理をして盛り付けてしつらえて。いただきますと食べることがなによりの幸せだと思っています。おしゃれすること、本を読むことも好きです。生まれも育ちも生粋の関西人ですが、福岡に住んでもう15年以上が過ぎました。日々の暮らしを丁寧に楽しく。よろしくお願いします。
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あき