もう、何回読んだことか。
三浦しをんさんの「風が強く吹いている」。
同じ寮に住んでいる、同じ大学に通う 学生10人で箱根駅伝に挑む話。
この本をきっかけに実際の箱根駅伝を観るようになった私は、
今なら「陸上部ではない学生10人で?いやいやいや!」と思うんですが、
そこは三浦しをんさん。
読んでいるうちに、自分も近くで彼らを静かに見ているような気持ちになります。
初めてこの本を読んだのは、はるか10年以上前、ランニングブームに乗っかり、
当時会費だけ払っている状態になっていたジムのランニングチームに入り、初めてハーフマラソンに出た!とかしてた頃、知人に薦められて。(現在、走るのはこどもを追いかける時くらいです。)
登場人物一人ひとりの悩みや葛藤、熱い思い、主人公はもちろんいるんですが、各々の心情がとても丁寧に綴られ、「学生時代、私もこういうこと感じてたな。」と思い出しながら読んだ本です。
「走る」って、なに?
走っている時って、あるところを越えると「帰ったら、アレして、コレして。」とか考えられなくなって、もう「無」というか、誰にも何にも邪魔されない完全に自分だけの時間。
登場人物達も走っている時、最初は乗り気ではなかった箱根駅伝に挑む気持ちになったいきさつ、これまでの自分のこと、悩みや葛藤、そして「走る」とはなにかーーー心の中で語りだします。
10人全員がその思いを語るので読み応え十分なのですが、特に私が印象に残っているところ。
ひとりのメンバーが、駅伝を走る理由をこう語ります。「寮の住人たちはそれぞれに、特に心を許せる友人がいる。自分にはそこまで特別な友人は今も昔もいない。それが嫌だった。だけど駅伝で走っているその時だけは、求められていると実感できる。だって駅伝は、一人欠けたら成り立たないから。」と。
(作中ではもっと長いんですが、私フィルターを通して要約するとこんな感じ。)
「誰の一番でもない自分」みたいなものを、私も特に学生時代、気にしすぎてたよなーと思う。
歳を重ねると折り合いつけられるようになってくるよと教えてあげたい。
速さがすべてではない。強さ。
それぞれのいろんな思いが沿道の景色と共に進み
自分も並走しているような気持ちになってくるのですが、レースの最終区間、ゴールの大手町付近、
物語の中で熱を帯びる実況を続けるアナウンサーが、その時の大手町の状況と風が強く吹いていることを告げます。
ガイド本。今年の予想、注目選手のインタビュー、出場校の選手名鑑などが載ってます。
いい走りをしている選手がいると、どんな選手なのかをこれでチェック。
実際のテレビ中継でも、トップで走る大学の最後のランナーに襷が渡ると、
それを待ち受けるまだ静かなゴール付近、各大学の応援団、歴代の箱根駅伝優勝校の名が刻まれたモニュメントが映るんですが、そこで、各大学の幟が風を受けてはためく様子が映し出されたりすると、
思わず叫ばずにはいられない。
「風が!風が強く吹いている!」と。
(家族は、「どうした?」という顔をしている。)
このブログを書くにあたり、もう一度読みました。コースを思い浮かべながら。
そしてきっと、どの大学、どの学生も、それぞれの思いをもって箱根に挑むことを。
襷をつなぐ、心をつなぐ。
本戦は、年明け1月2日、3日。
「風が強く吹いている」。
017 - みもざ
主婦 / 埼玉県 / LEE100人隊
42歳/夫・娘(6歳)/手づくり部・料理部・美容部/結婚、夫の転勤により、生まれ育った大阪から埼玉に引っ越してきました。それから早6年。子どもを通じて信頼できる方とも繋がれたし、ひとりで過ごすのが好きだし……だけど、やっぱり、「私」として誰かと繋がりたい!自分の「好き」を発信し、これを機に日々のお料理を少しずつステップアップできればと思っています。よろしくお願いいたします。身長155cm。
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017 みもざ