『みらいめがね』荻上チキ・ヨシタケシンスケ
荻上チキさんといえば、私にとっては日曜の朝に「サンデーモーニング」で見かける人、というイメージ。
テレビで感じていた物腰の柔らかいしゃべり方は文章にも表れているようですが、同時に荻上さんの視線は鋭く、そして熱い。
くすっ(いや、ブホッ?!)とするエピソードも交えつつ、はじめからおしまいまで終始一貫して「多様性であること」の大事さを訴えているように思えました。
それはたとえばご自身の病気から感じ取ったこと。
あるいは学校を嫌がる子どもに取った対応。
時には世界を歩いて聞き取ったリアルな声に基づくもの。
途中、胃がキリキリするような世界の残酷なできごとにも触れられています。
私がとくべつ胸が熱くなったのは、最初の章『女の子の生き方』と、最後の章『生きづらさを取り除け』。
『女の子の生き方』という章では、荻上さんは昨今のディズニープリンセスの描かれ方を引きあいに、これまで「女」であることにやりづらさをを感じながら生きてきた全女性にエールを送ってくれているように感じられて…。
これはもう、娘を持つ身として、また自分自身「女性」という性を生きている者として、気持ちを前向きに奮い立たせてくれるような素敵な章でした。
ディズニーのプリンセスってね、初期の作品に多いのが、受け身で家庭的で、いい子にしていたらいつか王子様がやってきますよっていう棚ぼた理論的なお話なんだそうで。(白雪姫とか眠りの森の美女とか。作品全体としては私は好きですけどね。だって映像も音楽も本当に美しいですもん)
それが、荻上さんは『アラジン』あたりで、ヒロインのジャスミンにそれまでのプリンセスにはなかった「自由さ」を感じたそうなんです。恋人は自分で選びたいし、広い世界だって見てみたい!と願うジャスミンに。
荻上さんによると、ディズニー作品はその後もどんどん新しい価値観を作品に取り込んでいて、
ヒロインは白人女性でなければならないという固定観念をやめ、素敵な男性とめぐりあうことこそが女性の最上の幸せだとは言わなくなりました。
『アナと雪の女王』なんかを例にとると、王子さまは実は悪者?!だし、
メインテーマだって、恋愛ではなく「姉妹愛」。
ディズニー作品は「王子様との出会い」を明確に否定し、「女の子らしく生きたら幸せになれる」というメッセージを送るのをやめたのだという読みには、もうもう…。
希望しか感じません。胸がじわーんと熱くなってしまう。
いまの子どもたちが自分の性別や社会の固定観念に縛られることなく、伸びやかに生きていけますように。
私たち大人は、そんな子どもたちの背中をポンと押してあげられるような自由な発想を持っていられるように。
この本を通して私は、そんなことを強く強く思いました。
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パート / 東京都 / LEE100人隊トップブロガー
38歳/夫・娘(4歳)・息子(1歳)/手づくり部・料理部コーヒーが好き。ミルクティーも好き。掃除は好きだけど片づけは苦手。手紙部部員。都内の雑貨屋さんや本屋さんなどを巡る休日も好きですが、海や山で過ごすのも大好き。いつも気持ちの良い場所を探しています。日記をつけはじめて1年。なるべく楽しいことを書き残したいので、いいこと探しを心がけるようになりました。昨年まで10年ちょっと、本(特に児童書)に関わるお仕事をしていました。絵本ラバーです。
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