毎年、秋にこのりんごが出回るのを楽しみにしています。
きょうスーパーで見つけたので、買ってきました。秋映!
シャリッとカリッの間くらいの歯ごたえがあって、噛み砕くと口の中が甘いと酸っぱいで満たされます。とってもジューシー。
大好きなりんごです。
子どもの頃から、硬くて酸味のあるりんごが好きでした。でも、それは母の好みとは違っていて、子どもの頃はどちらかというと水っぽくて柔らかい、甘いりんごがテーブルに載ることが多かったのです。
親子でも、食べ物や調味の好みって、違って当たり前なんだなあと今は思います。昔は食べられなかった野菜も、自分で料理するようになってからは好きになりました。
高2の時、16歳の秋に、修学旅行を兼ねて、オーストラリアにひと月ほど短期留学をしました。
最初の数日はシドニーで観光をして、そこから長距離バスでメルボルンに移動し、そこからホームステイして現地の高校に通ったのです。
最初の数日は、現地の食べ物が合わなくてとっても辛かった!とにかくラムがダメで、結構な頻度で出てくるのです。でも、野菜はだいたい美味しかった。
偏食だったから、常にお腹を減らしていたし、今の姿からは信じられないほど痩せていて、日焼けに無頓着で、真っ黒な16歳でした。
メルボルンまでの移動は、まるまる2日間かかりました。
修学旅行前に買ったばかりのMDプレイヤーに、ビリー・ジョエルやビートルズやオアシスなんかを順に入れて、ひたすらそれを聞きながら、隣の席の子と話すのにも飽きて。寝て起きて外を見たら草原に動物、また少し寝て起きたらまだ草原、看板には「100キロ先にマクドナルド」と書いてある、みたいなところを走りました。
途中、昼食を取ったドライブイン的なところで、ちいさなマーケットに寄りました。そこで、野菜の棚に色々並んでいる中に、緑色の小さなりんごを見つけたのです。
手に取ってみると、大きさにしては重さがあって、いかにも中身が詰まっていそうだった。昼食は半分くらいしか食べなかったから、お腹が空いていて・・・そこで、初めて現地で自分で食べ物を買ったのです。制服の袖でキュッキュッと拭いて、皮ごと齧りました。
それが、ものすごーくおいしかった!
あれはたぶん、グラニースミスだったんじゃないかなと思います。ビートルズのアップルレコードの、あの青いりんごですね。
それから、日本でもあんなりんごが食べたいなと思って探しましたが、自分では見つけることができなかった。
秋映を知ったのは、まだ独身で会社員をやっていた頃、とある昔の知人が教えてくれたからです。ベジフルマイスターの集まる八百屋みたいなところでバイトしていたそうで、いろんな品種を知っていました。
私の好みを説明すると、おそらくこの品種が口に合うだろうと薦めてくれました。
ある時、その年上の知人の家に呼ばれて、りんごをご馳走になりました。
そのとき、私はりんごの皮を、ピーラーを使って剥きました。彼女は、それを見て笑いました。なんでそんなもの使うの?包丁の方が剥きやすくない?と。
皮を剥く時、手が滑りそうでなんか怖くて、包丁使えないんです。ジャガイモの皮も、他の野菜も、梨もりんごも、ピーラーで剥きます。
そう説明したら、彼女は呆れたように笑いました。それくらい、練習した方がいいんじゃない?と。ちゃんと包丁使いなよ。私なんか包丁に慣れすぎてて、逆にピーラーなんて使ったら怪我しそうだわ。
とっさに、その時は何も言い返せませんでした。実は、包丁を使うのが苦手なの、けっこうコンプレックスだったのです。恥ずかしく思いました。
そして、笑ってごまかしました。
思えば、その人とのやり取りの中では、そうやって笑って何かを飲み込むことが結構多かった。
おそらく悪気はなくて、20代からの一時期とてもお世話になった方でもあるけれど、会話の中でのその種の小さなトゲが、自分の心にいつのまにかたくさん刺さっていることに、ある時突然気づいて・・・結局疎遠になってしまいました。
それから、長く付き合っていきたいと自分で思った友達には、刺さった時点でそれを無理に飲み込まず、伝えることにしました。40手前の今、それでも仲良くしてくれてる友人たちに感謝です。
そんな、少し酸っぱいりんごの思い出でした。
最近、よく考えてわかったことなんですが、私がピーラーでしか物の皮を剥けないのって、実はちゃんとした原因があって。
まだ家で包丁をもたせてもらえる年齢にならないうちから、料理の下ごしらえ作業をピーラーで手伝うことがわりと多かったから。なのでした。
母は教員だったので忙しく、帰宅した時に野菜だけでも剥いておくと、助かるわーと言ってくれたのです。
あまり褒められることの少ない子供時代だったから、それがすごく嬉しかった。味噌汁の具にする人参や大根の皮を剥いて、習いたてのいちょう切りにしておいたりして。役に立つと思われたかったんですね。
でも、皮を包丁で剥くのは、やっぱり子供心に怖かった。
中学に入ったら弁当も時々自分で作ったし、高校生になったら中学生の弟の分も、ときには父の分も作ってました。
だから、決して料理が苦手なわけじゃなかったんですが。小さい頃からとにかく何がしかの戦力になりたくて、実践的な作り方を見よう見まねで日々繰り返していたせいで・・ちゃんと練習したり教えてもらったり、苦手を克服するような機会が、あまりなかったのかもしれない。
結局はピーラーで事足りるわけだし、包丁で皮を剥けるようにはならず、大人になってから、それをうまくできる人に指摘されて笑われるような、恥ずかしいことになったわけで。。。
でも、その話を最近になって友達にしたら、いい子だったんだねと言ってもらえました。とても嬉しかった。
物事には、いろんな側面がありますよね。
自分の価値観に照らして、誰かのある一面だけを見たら、愚かだったり恥ずかしく思えるようなことでも・・もしかしたら、よくよく聞いてみたら、別の深〜い理由があって、それはなにかとっても良いことかもしれない。
だから、頭から見下したり、笑ったりしないほうがいいな。
・・・なんてな!(笑)最後は、ちょっと真面目なりんごの話でした。だいぶ広がっちゃった。
どう剥いても、自分が旨けりゃいいんですよ。そして、家族が喜んで食べてくれるなら、それでいいのです。あーおいしかったな、まだあと2個残ってる!しあわせ〜。
yuki*
39歳/夫・息子(11歳)/手づくり部、料理部/横浜在住、大阪出身。港が見えそうで見えない丘の上の古い一軒家で、息子と年上の旦那さんと猫のリサと一緒に、楽しく暮らしています。本とラジオと美しい布が好き。がま口のお店をやっています。一度しかない美しい日々を、あたたかく綴りたいと思います。Instagram:@yukiiphone
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