映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

伝説のベジャール・バレエ作品『第九』。奇跡の再演を追う映画『ダンシング・ベートーヴェン』

ダンス・カンパニーは大家族のよう

スイスのローザンヌ。芸術監督ジル・ロマンのもと、「第九交響曲」の練習を積むモーリス・ベジャール団のダンサーたち。本番までの9ヶ月、ダンス部門、オーケストラ部門、合唱など、それぞれの部門における練習風景が映し出されていきます

――マリヤ・ロマンさんという女優をインタビュアーとして登場させ、監督の視線と対象の間に一つのフィルターを入れました。その狙いは何ですか?

「今回はアルターエゴ、もう一つ別人格の視点を入れ込みたかったのです。マリアはとても美しく、フォトジェニックでもあり、微妙な立ち位置や視点の人物です。彼女ほどベジャール・バレエ団に近く(芸術監督ジル・ロマンと、カンパニーの元ダンサーを両親に持つ)、同時に本人は女優をしている外側の人間である人はいません。さらに(長年、ベジャール・バレエ団を撮ってきた)私自身の存在とも重なりました」

――彼女の存在によって、“親子”という要素が色濃くなりましたよね。

ダンスカンパニーって、ある意味、大家族みたいなもの。その大家族の物語と、個人的な家族の物語を並行して描くのは面白い試みだと思いました。また、ダンサーを単なる賞賛されるべきアーティストではなく、人間として描きたかったのです。彼らも父であり、母であり、子供である、と。カンパニーに来るダンサーの多くは、本来は両親の元で育つ年頃の若い子なので、ジル・ロマンを父のように慕うといった関係性も生じます。そういう意味でも、この要素は重要でした」

振付:モーリス・ベジャール 監督:アランチャ・アギーレ 音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲『交響曲第9番 ニ短調 作品125』 出演:マリヤ・ロマン、モーリス・ベジャール・バレエ団、東京バレエ団、ジル・ロマン、ズービン・メータ

まさかのアクシデント勃発!

本番までの9ヶ月の間には、予測できない出来事が勃発します。第二楽章のメインを踊る予定のソリスト、カテリーナ・シャルキナの妊娠が発覚し、降板することになったり……。

――カテリーナの妊娠は、まさかの出来事でしたよね!?

「予想もしていなかったので、知った時は(お口あんぐり、目を見開く)こんな感じ(笑)。でもまずエモーショナルな感動がやって来ました。ずっと団と一緒に仕事をしてきて、彼女のことも、パパとなるオスカー(第4楽章のメインを踊るオスカー・シャコン)のことも前々から知っていたので、彼らに子供が出来たということに感動しました」

――映画作品としては、とっても「美味しい」展開とも言えますね。

「その通り(笑)。神様が助けてくれたのかしら」

――とはいえ、キャリアと母になることへの葛藤で揺れ動く彼女の姿にフォーカスすることなく、あくまでサラッと描きましたね。

妊娠、出産は自然なことだし、人生ってそういう迷いや決断がありながら続いていくものなので、“然るべきこと”として扱いました。そもそも私の興味の中心は、この演目が出来上がっていく過程にあったので、そこは何が起きてもブレずに(笑)。ただ、妊娠期間の9ヶ月と、作品が出来上がるまでの9ヶ月をリンクさせることもできました!」

 

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