ママの詫び状

娘のデスノート【ママの詫び状 第1回】

はじめまして。「女子」をめぐるいろいろな話題と、塩顔イケメンとお酒が大好物のコラムニスト、河崎環です。

LEE読者のみなさんは、子育てをしていると、いろいろ感じ、考え、思い出しませんか。いま目の前にいる子どもと自分、そして家族のこと。自分と親、さらにその前の世代のこと。過去・現在・未来、自分が大きな流れの中にある一つの点であることを知り、人と人の繋がりや縁、人生の不思議に思いを馳せる。きっと私たちはそういう心の活動を経て、「親になる」のだと思います。

LEE本誌6月号『今だから振り返られる私の子育て』でインタビューをお受けしたことをきっかけに、自分の約20年間の子育てで忘れかけていた記憶が鮮やかに呼び覚まされた、今年の夏。ちょうどこの『暮らしのヒント』での執筆にお声がけをいただいたとき、思い出したあれこれをここでエッセイとして連載しようと思いました。連載のタイトルは——『ママの詫び状』。

涙も笑いも、ひとまずまるっとひっくるめて、とにかく詫びたい。そして(最終的には)「よく育ってくれたね、ありがとう」と伝えたい。どこかそんなほどけた気分の、母親業22年目の言葉をお届けします。

母、娘のデスノートを発見する。

もう10年も前のことだ。夏休み明け、当時小学5年生の娘の洗濯物をしまおうとして彼女の部屋のクローゼットを開けたら、並び吊るされたパステルカラーの洋服たちの下に、不似合いな黒いノートを見つけた。いやな予感は十分にしたのだけれど、カタカナで「デスノート」とペン書きされたそれをついうっかり開いてしまったら、1ページ目に見事に「母親」とある。ああ見てしまった、ゴメン、娘。道理でノートから妙な黒いオーラが出ていると思ったんだ……

どこまで本気か知らないけれど、仮に「漫画を真似してやってみた」程度の戯れであっても我が子に死を願われるなんてのは、母親としてはもちろんわりとショック。ショックではあったけれど、「だよな、子供としてはまずは書くよなぁ、母親って」と、その頃やたら私につんけんする日々が続いていた娘の思春期入りの裏付けを得た気がして、同時にどこか腹が据わったのを覚えている。

さあ、子離れだ子離れだ。娘は、私とは別の人間で、別の人格だ。母親は、子供を自分の分身だとか延長だとか言って思い通りにしようとしてる場合じゃない。「まだ子育ての手が離れなくて〜」なんて口走っていつまでも子供に甘えていないで、自分の領分をわきまえなくちゃいけない。子育ての手が離れないんじゃない、離すのは自分だ! 子育てどっぷりだとつい「子供の人生をどうにかしなきゃ」的に子供のことで頭がいっぱいになってしまうけれど、違うよね、どうにかしなきゃならないのは自分の人生のほう——そう自分に宣告した。

娘はちょうど、中学受験でそれなりにハードなフェイズに入った小5の夏期講習を終えたばかりだった。そのころ2歳の少々育てにくい息子を抱えて専業主婦だった私は、11歳の娘に学力的にも生活上もかなり高い要求をしていたような気がする。「そんな程度でやり過ごす受験ならやめてしまえ!」と、塾のテキストがリビングを弧を描いて舞った日があったような気もする。私自身も長子でゴリゴリの長女だから、「その年ならこれくらいできて当たり前」と、高めハードルを平気でいくつも設定して、無理をさせていた。

娘のデスノートの件はあえてそれ以上深掘りせず、本人にも突っ込んで聞かず(だって、自分が娘の立場だったら絶対イヤだものね)、とにかくそれ以来私は、「娘のプライバシー、特に学業や表現活動の自由を絶対に侵害しない」ことにした。もちろんそれは、情緒的に実に安定し、クリエイティブで、精神年齢の高い娘に深い信頼があったから。中学受験が、親が積極的に関わらせてもらえる最後のイベントで、彼女の元服になるんだろうな。そこからは、そんな気持ちで並走した。

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Writer Profile

河崎環

フリーライター/コラムニスト

Tamaki Kawasaki

慶應義塾大学在学中に子供を授かり学生結婚後、子育てに従事。夫の海外駐在による欧州暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどに寄稿・出演多数。政府広報誌や行政白書にも参加する。子どもは、21歳の長女、11歳の長男の2人。著書に『女子の生き様は顔に出る』。

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