映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

映画『残されし大地』でベルギー人監督が見つめた福島/故ジル・ローラン監督の妻、鵜戸玲子さんに聞く

初監督作にして遺作となった本作は、福島の今を見つめる“生命の映像詩”

LEE本誌(4月号)でもドキュメンタリー映画『残されし大地』を紹介しましたが、その監督ジル・ローラン氏は、最後の編集のためにベルギーに一時帰国した際、ブリュッセルの地下鉄テロに巻き込まれ、31人の犠牲者と共に命を落とされました。編集作業を追え、スタッフの間で内覧試写をする予定だった2016年3月22日のことでした。

 

『残されし大地」(2016)
監督:ジル・ローラン
3月11日よりシアター・イメージフォーラムにて公開
フォーラム福島、シネマテークたかさきほか全国順次公開
www.daichimovie.com

その衝撃の事実に思わず言葉を失ってしまいますが、監督の妻が日本人であることに驚き、さらにもう一つ。なんとその鵜戸玲子さんは、元LEE編集部の編集者でもあったのです(現在はeclat編集部)‼

妻の母国である日本に、2013年に家族と来日したサウンドエンジニアのジル監督は、福島に自らメガホンを向けました。亡き監督の熱い思いを受けたベルギーの仲間や妻である鵜戸さんの熱い思いが実り、今週末、遂に日本でも映画が公開されます!

既にNHK「おはよう日本」や、多くの新聞で取り上げられているほど、観る者を魅了してしまうこのドキュメンタリー。まずは映画を初めて観たときの感想から、鵜戸さんに聞いてみました。

監督の妻であり2人の娘のママ。かつ雑誌編集者の鵜戸玲子さん  撮影:中澤真央

「なかなかいい映画になっている、ちゃんとしたレベルにできている、とまずホッとしましたね。同時に、すごくジルらしい映画だな、と。考えていることを声高に主張するのではなく、今も美しい福島の風景、そこに生きている鳥の声や虫の姿など、本当に小さなものに愛情を注いで撮っていて。

“福島の現在”という重いテーマにもかかわらず、ちょっと癒されてしまう感覚さえ覚える不思議な映画だという感想を、周りからよくいただくんです」

のどかな風景にほっこり。でも、その後ろでは……。

筆者を含め、この映画が観る者を魅了する点は、まさにそこにあるのです!

日本の原風景と言うか、夏休みに帰る田舎のイメージと言うか。風の音や虫の羽音が聞こえてくる、のどかな自然。元サウンドエンジニアだったジル監督ならではの、耳をくすぐる様々な音の心地よさが、まるでその場に居るかのような錯覚を覚えさせる。でもその後ろでは、ガガガガガと除染作業が行われている、その対比、違和感に、思わず心がザワッとしてしまいます。

「土を踏みしめる音や鳥の声やなどを細かく拾って、強調する形になっていると思いますね。それによって美しいな、可愛いな、美味しそうだな、という単純に人間が持っている五感がさらに呼び覚まされる。原始的な感覚が蘇る気持ち良さがありますよね。それに反して後ろには(汚染土などを詰めた)フレコンバックが積み上げられていく。

「そんな絵は今しか撮れないという使命感もあったと思います。そこには怒りもありますが、決して告発的になるのではなく、自然の美しさや人の強さ、どんな状況にあっても自分の生きる道を自分で決めて全うしようとしている人の強さや美しさっていいなぁ、という点にフォーカスして撮ったのだと思います」

 

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Writer Profile

折田千鶴子

映画ライター/映画評論家

Chizuko Orita

1968年、栃木県生まれ。LEE本誌で映画&DVD紹介頁やインタビューを担当。その他、新聞・週刊誌・雑誌などで映画コラムや批評、取材記事を執筆。夫と8歳の双子男子と愛犬の、4人1匹暮らし。

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