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不登校の子どもが24万人を超えて過去最多に…! 当事者がメッセージを発信する「不登校生動画選手権」とは?

  • 野々山 幸

2023.07.25

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日本で唯一の不登校専門紙である「不登校新聞」。当事者へのインタビュー、体験談、フリースクールや学校以外の居場所の紹介など、不登校にまつわるあらゆる情報を発信しています。

この夏、初の試みとして不登校新聞主催で行われるのが「不登校生動画選手権」。開催までの経緯や思いを、NPO法人全国不登校新聞社代表理事・編集長の石井志昂さんに聞きました。

「今が苦しい」子どもたちに、大人ではなく同世代の当事者からエールを送る

不登校生動画選手権 画像1
——「不登校生動画選手権」とは、どういったイベントですか?

「20代未満の不登校を経験した個人やグループが『学校へ行きたくない私から学校に行きたくない君へ』をテーマに、60秒以内の動画を作成し、動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』に投稿します。思いを述べる、絵を描く、風景を撮るなど、どんな表現方法でもOK。投稿された動画の中から、勇気や感動を与えるなど心に訴える作品かどうか、創造性があるかどうかなどを審査し、入選作品を表彰します。世界初の、不登校当事者のための全国大会です」

——どのような思いから、この「不登校生動画選手権」は生まれたのでしょうか?

「文科省の調査では、不登校の子どもは年々増え続け、24万人を超えて過去最多を更新しました。不登校は悪いことではないし、不登校新聞でも常にそういったメッセージを伝え続けていますが、子どもは傷つき、ボロボロになって学校に行けなくなっています。何かを変えたいという思いから『不登校の人しか参加できない全国大会』や『不登校を活かして輝ける栄誉』を作れないかと。今回『不登校生動画選主権』という大会を開催することになりました」

——不登校の経験者自らが発信するという機会は、これまでにあまりなかったのではないでしょうか?

「そうなんですよね。しかも、今回は応募資格を20歳未満に設定しているので、最近まで不登校だったか、今真っ最中という子どもたちが対象になっています。

私自身が不登校当事者で、大人になった今では、不登校の経験がすごく生きているなと感じるし、誰にでも挫折することはあるのでいい経験だったなとすら思うんです。ただ、渦中にいるときはいくら大人に『将来役立つよ』と言われても『今が苦しいんだよ』と受け入れられなかったんですね。

『不登校生動画選主権』は、同世代の当事者からの発信ということに大きな意味があり、等身大のエールみたいなものが、今がつらい子どもたちに伝わりやすいのではないかなと、強く思います。子ども自身が、不登校はハンディではなくレアリティ(希少価値)なんだとと思えるようなメッセージを体感してほしいです」

不登校生動画選手権 石井志昂さん

石井志昂さん。中学2年生から不登校となりフリースクールに通う。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙である「不登校新聞」のスタッフとなり、2006年から編集長。2020年からは、代表理事も務める。これまで、不登校の子どもや若者、識者ら400人以上に取材をしている。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)。

夏休み明けに増える不幸なニュース。イベントで少しでも何かが変われば

——この「不登校生動画選手権」を夏休みに開催することにも、意味があるそうですね。

「昨年は学生の自殺がまたも過去最多を更新してしまいました。学校に行くより死んでしまったほうが……と追い詰められる子どもがあとを絶ちません。そして、夏休み明けは不登校の数が増えたり、自殺のリスクが高まる時期。夏休み中に応募をして表彰まで行うことで、少しでも何かが変わればと。

また、夏休み明けの子どもたちのことって、不幸が起きないとニュースにならなかったりするので、イベントがあることで前向きな報道が増えればという思いもあります」

——入選作品はどのように決まるのでしょうか?

「『#不登校生動画選手権』をつけてTikTokに投稿された動画を審査員がすべて見て、思いの強さを感じる訴求力はあるか、演出力や創造性があるかを判断します。

大会審査員は、自身も不登校経験者でさまざまな情報発信をしているタレントの中川翔子さん、不登校新聞でインタビューをさせていただいた内田也哉子さんなど豪華な顔ぶれ。

また、TikTok、クックパッド、学研などの企業も共催、協力団体に名乗りを上げてくれました。

表彰式は、8月に東京都現代美術館にて、入選者への賞状の授与や受賞者へのインタビューも行われます」

不登校生動画選手権 画像2

表彰式の会場となる東京都現代美術館 Photo: Kenta Hasegawa

——7月初旬から動画の応募が始まっているそうですが、すでに動画は届いていますか?

「応募から3日ほどで、約80本の動画が投稿されました。内容はさまざまで、不登校当事者が顔を出して不登校への思いを語っていたり、学校に行かない日の日常生活を撮っていたり。アニメーションを使って訴えている動画もありました」

——とてもクリエイティブで、メッセージ性もありますね。

「そうなんです。学校に行かない子どもと言うとフォローされたり支援されたり、というイメージがある方もいると思うのですが、不登校という経験をして、気づいたことや表現したいことがある子どもたちも多いのではないかなと思います。そんな不登校当事者の思いやメッセージが、きちんと発信されて、多くの方に見てもらえるといいなと思っています」

不登校生動画選手権 詳細はこちら

※13歳未満の方のTikTok利用はできません。13歳未満で動画選手権に投稿される場合は保護者の管理のもと行なってください。

野々山 幸 Sachi Nonoyama

ライター

1979年、愛知県生まれ。インタビューを中心に、女性が抱える悩みをテーマに取材を続け、育児、教育、コミュニケーションなどさまざまな記事を担当。編集者の夫、10歳のダンス大好き娘、8歳のサッカー少年の4人家族。趣味は、ドラマ、映画、マンガ、舞台などエンタメの世界にどっぷり浸ること。ここ数年は韓国ドラマにハマってます。

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