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藤原千秋

ママが「読み疲れない」絵本3選

2017.01.29

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「絵本の読み聞かせ」が苦手なママなんです……

告白しますと、わたし、子どもへの「絵本の読み聞かせ」がキライで、キライで……。いえ、本は大好きなんです、活字中毒ってくらいで、自分自身が読む本は年間延べ約300冊、家のなか本雑誌だらけであちこち塚になっています。

キライなのは、本を声に出して読むこと……読まされること。だって、くちが疲れるし、喉がかれるし……今、読みたいのその本じゃないし……。

などというトホホな理由で、3人の娘への「読み聞かせ」は本当に本当に最小限しかしてきませんでした。いま現在も進行形で「絵本読んで〜!」と頼まれても「ええ〜……ヤダな〜」とつい言ってしまうようなお母さんなんです。

ああ、自白しておいてなんですが、肩身が狭〜い! やっぱり「いいお母さん」なら絵本の読み聞かせなんて絶対に面倒くさがらないもんじゃない? って、どこかで思っているからですね。

なので、ときどきは、贖罪のような気持ちで請われた絵本を読むのです。けれども、「なるたけ字の少ないやつにしてくれない?」と子どもにリクエストしてしまう体たらく! まあ、あくまで「絵」本なんですから、字が少ないこと自体は、そう悪いことじゃないと思っていたりはするんですけれども……。

という、そんな視点でズボラ母さんがチョイスし、さいわい子ども達にも人気を博した(!)、

「読み聞かせても喉がかれず、くちが疲れない(笑)絵本」

厳選3冊を、今回はご紹介したいと思います。読み疲れやすい同類のお母さんに参考にしていただけたら!(ちなみに字を覚えたばかりの子どもにもヒットしますよ〜!)

なんだ かんだ

なんだ かんだ

なんだ かんだ

(日本傑作絵本シリーズ)
さとう わきこ (著), 瀬川 康男 (イラスト)
福音館書店 (1997/10/25)

かめは ゆっくり ちかづいて
ゆっくり ゆっくり くちあけて (んだんだ)

ねこの しっぽを がきっと かんだ

にゃぐわー

……にゃぐわー……???

唐突に現れたかめはねこを噛み、ねこはいぬを噛み、いぬはやぎを噛む……という謎リレーの度に、驚きと痛みのためか斜め上な奇声(わがあー、とか、めげれえー、とか)をあげていく動物たち……。

あまりのシュールさにとりあえず黙読時点で心が震え、というか本屋で笑い死にそうになり、その勢いで購入してしまいました。

正直なところストーリーとしての意味はよく分からない話なのですが、「にゃぐわー」的な叫び声をいちいち頑張ると子どもがウケてくれるため、そこにだけは力を入れて読みました。

字は、とっても少ないです(笑)。

ままです すきです すてきです

ままです すきです すてきです

ままです すきです すてきです

(幼児絵本シリーズ)
谷川 俊太郎 (著), タイガー立石 (イラスト)
福音館書店 (1992/2/15)

この本、実は本文、全部「しりとり」で構成されています。字、少な!(笑)

最初はオーソドックス? に、「たぬき」。そこから「きつね」「ねこ」「こあら」と、ありがちに進んでいくのですが、挿絵がただものでないために、じわじわとおかしな雰囲気の絵本世界にとりこまれていきます。そこは、いわば魔空空間……。

タイガー立石氏のビビッドな絵は奇妙な緻密さに満ちていながらぜんたい悪い夢のような色合いで、また、なにぶん著者はあの谷川俊太郎氏ですから、本文もただの名詞の羅列で済む「しりとり」ではありえません。

タイトルの「ままです すきです すてきです」も、しりとり。そして、延々続いたしりとりの流れからして「どうしてそうなるの?!」という謎の着地点に至る、物語のループ構造……。

読むのはとにかくラク! なんですけれども、子どもには笑いを、大人にはえも言われぬ後味を残す一冊です。



マドレンカ

マドレンカ

マドレンカ

ピーター シス (著), Peter Sis (原著), 松田 素子 (翻訳)
BL出版 (2001/07)

宇宙のなかの ある惑星の ある大陸の ある国の ある町の ある建物の ある窓のなかに、ある雨の日、ひとりの 女の子が いた。なまえは

マドレンカ

という壮大なステージ提示から始まる物語は、少女マドレンカ(大人には、ニューヨーク在住だということがすぐに分かる)の「歯が抜けそう」という超個人的ニュースをご近所に知らせ回るという、ただそれだけの話。

それだけの話、ではあるのですが、マドレンカのうれしさ(子どもがいると、よく分かると思います!)と、その気持ちを受け止めてくれるご近所さんたちの人種のあまりの多様さ(狭いエリアにぎゅーっと集っている)が不思議なスケール感を醸し出し、ご近所一周が、あたかも世界一周してしまったかのような充実した読後感をもたらします。

ストーリーとしたら結構シュール、感動ともちょっと違う。でも読後感そのまま眠り、夢の世界に直行するには、ちょうどいい大らかな気持ちになれる素敵な絵本なのでした。

字は、じゅうぶん(!)少ないんですけれどもね!

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