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駐妻ライター佐々木はる菜の海外で見つけた「暮らしのヒント」

今すぐ実践したいデンタルケア3つのポイント/歯科医療先進国ブラジルで歯医者レポ!後編【駐妻ライター佐々木はる菜の 海外で見つけた「暮らしのヒント」Vol.5】

  • 佐々木はる菜

2022.11.20

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駐妻ライター佐々木はる菜の海外で見つけた「暮らしのヒント」

デンタルケア意識が高まったブラジル生活

ブラジルのデンタルケア製品売り場

ドラッグストアなどで売っているデンタルケア製品も充実!

実は歯科医療先進国であるブラジル。日々出会うブラジル人も歯や歯並びなど口元の美しい方が多く、街中でも食後に念入りな歯磨きをする方をたくさん見かけます。

ブラジルへ転勤後、実際に家族で現地の歯医者さんへ通い始めた中で驚いたのが、診察の丁寧さと、治療から美容歯科に至るまで様々な選択肢があること。そして子どもの頃からデンタルケアへの意識が高いことも印象的で、【前編】ではブラジルの歯科医院の様子や日本との興味深い違い、ブラジルに来てから突然しっかり歯磨きをするようになった子どもたちの変化などをレポートしてきました。

【後編】では、引き続き日系ブラジル人で歯科医師の星 ナターリア 淳子先生のお話を伺いながら、国を問わず今すぐ実践できるデンタルケアの具体的な対策など、美しく健康な歯を保つためのヒントをお届けします!

忙しい日本の女性たちに伝えたいデンタルケア3つのポイントとは

家事、育児、仕事と忙しいLEE世代の女性たち。お子さんを始め家族や自分自身の歯の健康を保つために、どんなことを心がけると良いかと問いかけたところ、実際に日本で子育ても仕事もされてきた星先生ならではの温かな答えが返ってきました。

星淳子ナターリア先生

星 淳子 ナターリア先生 ブラジル国タウバテ大学歯学部卒。日本へ留学後、私立奥羽大学歯学部、国立東京医科歯科大学で歯科医療に携わる。日本在住歴は25年以上、日本で3人のお子さんを育ててきた母でもあり、現在は平成30年に設立したH&Aコンサルティングの代表を務め、主に大手企業ブラジル駐在員や家族に対するポルトガル語教育や現地文化のレクチャーなどを通したサポートに従事している。

ポイント① 半年に1回、歯の健診に行くこと

「日本の女性たちは非常に頑張り屋さんだと感じます。私が若かった頃に比べ今は働いている方もたくさんいらっしゃいますが、ブラジルの様にお手伝いさんがいるわけではないことが多く、パートナーやご家族の手伝いがあるにしても、日々やるべきことは山ほどあるという状況だと思います。」

ただ、歯のトラブルは全身に影響を及ぼす場合もあり、時間を作ってできれば半年に1回は歯の状態をチェックしてほしいと話す星先生。

「体の健康診断はまだしも、たとえ自治体から無料で健診が受けられる案内があったとしても、日本では虫歯など具体的に気になるとことがない限り、歯の健診には行かない方がまだまだ多いと感じています。
歯は、痛くなってからではなく、とにかく定期健診が大切です。今悩んでいる方が多い歯周病も、始まりは歯肉炎です。ちょっと血が出ているけれど、そこまで痛くないから大丈夫かな…など先延ばしにしているうちに歯周病になってしまった方はたくさんいらっしゃいます」

子どもたちやご家族のためにも、体はもちろん歯も良い状態を保ち、忙しくてつい後回しにしがちなご自身のことも大切にして欲しいという言葉が印象的でした。



ポイント② 正しくデンタルフロスを使うこと

オンライン取材の様子

星先生は日本に住んでいるため、取材当日は12時間の時差を超えてオンラインでインタビュー!

多くの歯医者さんが推奨されている通り、星先生も「歯ブラシだけでは取れない歯と歯の間の汚れを取るためには、デンタルフロスが必須!特に25歳以降、大人になってから正しい方法でフロスを使うことが、健康で美しい歯を保つ秘訣です」と話します。
ブラジルでは街中でも念入りにデンタルフロスまでしている姿をよく見かけますが、日本では毎日の歯磨きにフロスを使う方が少ないと感じるそうです。

おそらくフロスの必要性と正しい使い方を教わる機会がないことが大きな原因で、実際、診察時に使ってみてくださいと言うと間違った方法で使う方が非常に多かったと話します。

そこで、星先生に正しいデンタルフロスの使い方を伺ってみました!

デンタルフロスの選び方は?

様々な種類があるデンタルフロスですが、星先生のオススメは「ワックス付き」で「無香料」もの。

「糸がワックスでコーティングされているので初めての方でも歯の間に入れやすく切れにくく、また使った後に自分でニオイを確認することも大切なので香りなどがついていないものをお勧めします。
トラブルがないと変なニオイはしませんが、例えプロではなくても普段と違うニオイがしたら必ずわかります。3日くらい様子を見て状況が変わらないようだったら、一度歯医者さんで診てもらった方が良いでしょう」

フロスのポイントは「使うたび場所をずらす」こと

1回に使う長さは指先から肘くらいまで3~40cmが目安と言われることが多いですが、あまり長いと扱いづらいため、本人の使いやすいさを優先してOK。それよりも、1回使うたびに場所をずらしていくことが大切なポイントなのだとか!

「長年フロスを愛用されていても、糸の同じ場所を使って掃除をしている方がいらっしゃいますが、それだと菌を移すことになりかねません。糸を左右の指に2〜3回巻きつけ、指と指の間を1~2cm程度の長さにして掃除をし、私は左手の指の糸をくるっと巻いて右側から新しい糸を引き出し、次の歯間を掃除します」

デンタルフロスの使い方

一度に長く糸を出して使うよりも、糸が足りなくなったらその都度新しく出せばよいとのこと。

ちなみに子どもへのフロスの必要性についても伺ったところ、「小さいほど歯の隙間が大きいため食べ物も残りにくく、きちんと歯磨きをしていれば歯ブラシが歯間へ入るため無理にする必要はない。ただ年齢が上がって歯も生え変わる10歳前後以降はフロスをした方が良い」とのことでした。

ブラジルでは「予防歯科」を重視

日本の歯科医療の技術、使用する器具の品質の高さなどは目を見張るものがあるそうですが、ブラジルと日本で感じた大きな違いのひとつに「予防歯科」への考え方があるといいます。

我が家の子どもたちもブラジルの歯医者さんでブラッシング指導を受け、それを機に10歳息子が丁寧に歯磨きをするようになったのは印象的な出来事でしたが(詳しくは【前編】参照)、ブラジルでは例えば歯ブラシの選び方といったことまでアドバイスがあり、定期健診のたび必要に応じて、歯並び、トラブル、矯正などそれぞれの問題に適した道具とケアの仕方などを、時間をかけて丁寧に指導するそうです。

また妊娠中から子どもへの予防歯科の話をするそうで、歯に良い食べ物から指しゃぶり・おしゃぶりの影響など、様々なトラブルの可能性や原因についてお母さんたちにしっかり知識をつけるといいます。そのため実際に子育てが始まってから我が子のデンタルケアへのアプローチに迷いが出にくいようです。

いわゆる歯科矯正が盛んなのも、単に見た目の問題だけではなく、歯並びが良い方がケアしやすく、結果的に虫歯などのトラブルが出にくくなるから積極的に行う方が多いそう。
幼い時期からマウスピースなどを活用して口全体の筋肉や噛み合わせの矯正をする治療が人気を集める理由も、小さい頃の方が調整しやすく、思春期など成長してから長い期間矯正器具を付けなくて済むなど、先を見越して本人の負担やトラブルをなるべく少なくするためで、とにかく非常に「予防」へ力を入れているそうです。

私自身も30代半ばになってから歯のトラブルが増え、「もう少し早くから対処していれば良かったのでは」と知識不足を反省した経験があります。一度痛い目を見てからは積極的に歯科健診に行くようになりましたが、それまで歯医者さんは虫歯の治療に行く場所でした。

一概には言えませんが、日本とブラジルの大きな違いは「予防歯科」に対する考え方ではないかという星先生のお話には、非常に納得感がありました。

ポイント③大人も子どもも「自分の歯を好きになること」

歯磨きをする女の子

娘も、ブラジルの歯医者さんをきっかけにフロスをしたがるように。まだ毎日仕上げ磨きをしているので基本的には私がフロスをしていますが、自分でもトライしています。

日本では「子どもが歯磨きを嫌がる」といった記事をよく見かけ、実際に周りでも悩んでいる方がいらっしゃいました。思い返すと私も一時期、息子を押さえつけるようにして仕上げ磨きをした覚えがあります。

我が子へのデンタルケアのポイントを伺ったところ、星先生は「ちょっと変な言い方かもしれませんが」と前置きして、こんな話をしてくださいました。

「私はまず、自分の歯を好きになることが大切ではないかと思います。ただ口の中にあって食ベ物を噛むだけの存在でなく、折に触れ鏡に向かってお子さんと一緒に歯を見て、自分の大切な一部だと伝えることから始めてみてはいかがでしょうか」

日本が大好きだという星先生ですが、日本の社会は何事においても「皆がやっているから自分もやらないと」「ちゃんとさせないといけない」といったプレッシャーが強いと感じ、「しなければならないことが多い」ことが忙しいお母さんたちへ更にストレスを与え追い詰め、「なぜそれをしなければならないのか」まで考えたり伝えたりする余裕がないように見える時があると話します。

「ブラジル人は何事も『それをすると何が良いのか』『しないとどんなデメリットがあるのか』納得しないと行動しません。
また今の子どもたちは、ただ『歯磨きしなさい!』と言っても、なかなかやってくれないのではないかと感じます(笑)一緒に鏡を見ながら、『歯磨きすると口がさっぱりするね!』『ちゃんと磨いたから、この歯のこの部分が綺麗になって、バイ菌もいなくなって気持ち良いね!』『歯が汚れたままだと気持ち悪いよね、そしてバイ菌のせいで虫歯になって痛くなったり、ここに歯がなくなって隙間があいちゃったりしたら嫌だよね、おいしくご飯を食べるためにもちゃんときれいにしようね』など前向きな声がけを続けていると、だんだんとお子さん自身が納得して自分の歯を、そして自分を大切にしようと考えるようになると思います」

「本人をやる気にさせる」歯磨きのコツは子育てに通じる?!

歯磨き指導の様子

先生のお話を伺いながら思い出したのは、やはり息子の変化です。

それまで私が口うるさく言ってもきちんと磨かなかったのに、健診時に教えていただいたことをきっかけに以前よりも歯を大切にするようになったことは本当に大きな収穫でした。おそらくまた適当になってしまうとは思いますが、定期的に健診を受け先生に診ていただき話をすれば、きっとその都度「ちゃんとやらなきゃ」と思い、徐々に正しいデンタルケアを身につけていけると確信しています。

我が家の子どもたちはもうだいぶ大きくなってしまいましたが、親の仕事はただ「歯磨きしなさい!」と言うことではなく、子どもたちに歯の大切さを伝え、最終的には本人が納得して自分から進んでデンタルケアをするように習慣づけていくことなのだと改めて痛感しました。
そして「本人がやる気にならない限りやらない」という事実は、子育ての様々なことに通じるとも感じます。

平均寿命が延びている現代、歯は「健康寿命」を大きく左右するとも言われています。
まずは毎日のデンタルフロスと共に、しばらく歯医者さんに行っていないという方は、近々ぜひ一度、歯科健診の予約を入れてみてはいかがでしょうか?

実は歯科医療先進国!ブラジルで学んだ美しく健康な歯を保つヒント・前編【駐妻ライター佐々木はる菜の 海外で見つけた「暮らしのヒント」Vol.4】

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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