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駐妻ライター佐々木はる菜の海外で見つけた「暮らしのヒント」

実は歯科医療先進国!ブラジルで学んだ美しく健康な歯を保つヒント・前編【駐妻ライター佐々木はる菜の 海外で見つけた「暮らしのヒント」Vol.4】

  • 佐々木はる菜

2022.11.19

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駐妻ライター佐々木はる菜の海外で見つけた「暮らしのヒント」

ブラジル街中の至る所で見かける「歯磨き姿」

ブラジルへの海外転勤が決まってからたびたび耳にしていたのが「ブラジルの歯科医療はすごく進んでいる」という話。30代後半に入ってから歯茎のトラブルが続きデンタルケアへの関心が高まっていた私は、駐在中に治療や矯正、ホワイトニングなどを始めるご家庭も多いと伺い密かに楽しみにしていました。

こちらに来て3か月が過ぎましたが、ブラジル人の方々はとにかく笑顔が印象的!そして口元や歯並びがとてもきれいで、ショッピングセンターのお手洗いなど街中でも、食後に念入りに歯を磨き、デンタルフロスまでしっかりしている姿をよく見かけます。

今回は、私自身も実際にブラジルの歯医者さんへの通院を始めた中で感じた、日本との興味深い違いを体験レポート。さらに美しく健康な歯を保つため今すぐ実践できるヒントを歯科医の先生にインタビュー!
歯科医療先進国ブラジルを通して学んだデンタルケアのポイントを、前後編に渡ってお伝えしていきます。

歯科のレントゲン撮影だけで18枚!丁寧な診察が印象的

歯科医の先生

私がブラジルでお世話になっている、歯科医のYara Migliorança Munhoz Zamperlini先生は、ご家族で歯科医院を営まれています。ご両親や旦那様それぞれが異なる専門分野を持ち、家族で連携・協力し合いながら患者さんと向きあう、その正確で適切な診断と治療が幅広い年代から多くの支持を集め、地域の方はもちろん日本人も多く通っている先進的なクリニックです。

主治医はYara先生ですが、治療が始まりまず訪れたのはレントゲン専門の病院でした。
ブラジルではひとくちに歯医者といっても「レントゲン」「神経治療」「矯正」など細かく分かれており、必要に応じて専門のクリニックに足を運びます。

口全体と部分的な写真を合わせ18枚も撮影があり驚きましたが、それらをもとに、どこにどんなトラブルがあり、どのような治療の選択肢があり、どんなスケジュールで進め、治療費はいくらかかるのかなどを、細かく説明してくれました。

歯医者さんに通うのが楽しみになったブラジル生活

歯科医の先生と患者の写真

治療が始まってから感じたのは、日本に比べて一回の診察時間が長いこと。そして先生方がとてもフレンドリーで、治療後にコーヒーなどを出してくださることも多く、ゆっくり時間を取って気になる点や要望などもしっかりと確認してくれます。

最初お会いした時にまるでモデルのような美しさが印象的だったYara先生ですが、9歳の女の子と1歳になる男の子のお母さんでもあり、とても気さくで、私の家族やライターの仕事についても興味深く話を聞いてくださいます。
日本にいた頃は「歯医者さんが好き」とはとても言えなかった私、今でも治療に対して緊張することはありますが、ブラジルに来てからは歯医者さんに通うことが楽しみの一つになっています。

「歯への意識が高いブラジルでは、患者1人あたりの診療時間が平均1時間と長く、歯科医は時間をかけて質問をし、たくさん話を聞きます。これは症状を理解して原因を見極めるだけでなく、患者さんと人間関係を築きながら、それぞれが叶えたい希望を正確に理解しようとする姿勢の表れだと思いますし、治療を通じて医師と患者さんが親友関係になることも珍しくありません」

と話すのは、今回インタビューさせていただいた日系ブラジル人で歯科医の星 淳子 ナターリア先生です。

星淳子ナターリア先生

星 淳子 ナターリア先生 ブラジル国タウバテ大学歯学部卒業後、日本の私立奥羽大学歯学部へ留学し小児歯科を学ぶ。その後、国立東京医科歯科大学で研修生として神経治療に携わる。日本での結婚・出産を経て約15年間、主に大手企業ブラジル駐在員や家族に対するポルトガル語教育や現地文化のレクチャーなどを通したサポートに従事し、平成30年に独立。現在はH&Aコンサルティング代表を務める。

ブラジルで歯学部を卒業後日本に留学し、医科歯科大などで治療の現場にも携わり、日本で結婚され3人のお子さんを育ててきた星先生。日本在住歴は25年を超え、歯の専門科として、そしてひとりの母として、双方の歯科医療の現状とそれぞれの良さを熟知されています。



「笑顔は名刺」まず口元を見るブラジル文化

「日本人は相手の感情を理解するために目を見ることが多く、例えば日本で使われている絵文字の多くは目を強調していますよね。一方でブラジル人を含む欧米人は、目元だけではなく口元にも注目します。ブラジルで生まれ育ち、今では日本での生活の方が長くなった私ですが、未だに相手の口元を見る癖があります」

星先生もおっしゃる通りで、私もブラジルに来てから口元を意識することが増えました。
ブラジルの人たちは目が合うと必ず笑顔で挨拶をしてくれます。さらに現地では英語もほとんど通じずポルトガル語が基本となるため、自分の言語が不自由だからこそ、意識して大きく笑顔を作り挨拶をしたり、口をはっきり動かし表情を大げさにしたりしています。

最近はワクチン接種も進みマスクをしている人はほとんどいなくなり、親しくなるとかなり近い距離で話すことも多く、変な話ですが日本にいた時以上に口臭等がないかも気になり始め、日々の歯磨き時に加え外出前など頻繁にマウスウォッシュもするようになりました。

「ブラジルは欧米、アジア、アフリカ、先住民、混血の人々が入り混じる多民族国家で、まさに『人種のるつぼ』。それぞれ背景にあるカルチャーや文化が違うのが当たり前だからこそ、誰かと出会って知り合うための入り口となる『笑顔』は何より大切!『笑顔は私たちの名刺である』というのは、ブラジルのスローガンのひとつです」

また貧富の差が激しい格差社会という一面も持つブラジルでは、全国民が無料で医療を受けることができるSUS(スス)と呼ばれる公的医療保険制度があります。SUSに対応する病院であれば軽い症状から大きな手術まで無料で治療ができ、歯に関しては虫歯などだけでなく、申請が通ればインプラントや矯正もできるそう。デンタルケアへの意識が高く皆に権利があるからこそ、積極的に治療する人が多いといいます。

ブラジルの子どもたちが歯医者を嫌がらない理由

ブラジルの小児歯科医の診察

ブラジルでは医師も歯科医も女性が多いそうで、特に歯科医は5割以上が女性なのだとか!子どもたちがお世話になっている歯医者さんの先生も二児の母でもある素敵な女性です。

我が家の子どもたち、特に7歳娘は歯医者さんが苦手で、ブラジルでの定期健診でも最初は治療を怖がり嫌がっていました。
そんな娘を持つからこそ印象的だったのが「ブラジルでは、治療や健診のためだけではなく、まずは歯科に慣れさせ、先生と信頼関係を築くために歯医者さんへ連れていく」という話です。

「大人でも治療を怖がる方がいるくらいなので、お子さんが時に歯科でパニックになってしまうのは仕方がないこと。だからこそ小児歯科の先生たちは特に、患者さんである子どもたちにとって、自分は敵ではなく味方だと感じてもらうために心を砕きます。そうやって定期的に歯医者の先生と関わりを持っていると、いざ治療が必要となった時には信頼関係もできており、器具などにも慣れているため、怖がらないし暴れることもありません

また子どもたちの診察で感激したのが、たとえ相手が7歳でも納得するまで説明し、これから行う治療についてしっかり見通しを持たせてくださる姿勢と、歯磨き指導です。

心配性でいちいち怯える娘に対して、「この機械は先が尖っているけれど、振動して水が出て汚れを取るだけ」「これは先にブラシがついているから痛くないよ」など、実際に指先に器具を当てて「痛くないでしょ?ちゃんと説明しながらやるからね!」と確認までしながら丁寧に不安を取り除いてくださいました。

10歳息子が突然、きちんと歯磨きするように!

ブラジルで歯磨き指導を受ける男の子

そしてもう一つとても嬉しかったのが、先生が子どもたちに直接、丁寧にブラッシングの指導をしてくださったことです。
日本でも歯医者さんによっては実施されているとは思いますが、我が家の場合はここまで丁寧にやっていただいたのは初めて!歯へのブラシの当て方、角度、磨くのが難しい歯のカーブ部分のやり方など、鏡を見ながらしっかり指導していただきました。

これまで私がいくら言ってもなかなか丁寧に歯磨きせず、「仕上げ磨き」の年齢も脱しつつある10歳息子ですが、先生に指導いただいてからは鏡を見ながら自分なりにきちんと磨くようになりました。
そんな様子に嬉しさを隠せない私に向かって彼が言ったのは、「だって、これまでは誰も正しい磨き方なんて教えてくれなかったもん」という言葉。
折に触れ私なりに伝えていたつもりなのですが…歯科医でのブラッシング指導と先生の偉大さを感じた瞬間でした。

様子を見る日本と治療を勧めるブラジル

専門的な視点と双方の国で暮らした経験を交えながらブラジルと日本の歯科医療について様々なお話をしてくださった星先生ですが、何度も繰り返されていたのが「どちらの国の治療が良い悪いというような話ではなく、文化的な差も大きく影響している」ということです。

「例えば日本では、なるべく歯は抜かない、ダメージがあっても小さい場合は様子を見て、いじり過ぎないほうが良いと判断されることが多いと思います。
一方、笑顔などをより重要視するブラジルは、ちょっとでも気になる点があって口を開けなくなったりコンプレックスを持ってしまったりするよりは治療をお勧めするという傾向が強いと感じます。だからこそ美容歯科も進んでおり、賛否両論あるものの、ブラジルでは歯科医がボトックスやヒアルロン酸の注入を行えることなども、特徴的ではないでしょうか」

日本から越してきて間もないからこそ、より興味深く感じる様々な違い。「歯」に対する考えひとつとっても、文化的背景が大きく関わっていると実感しています。
ただやはり、歯への意識が高いブラジルから学ぶべきことは多いと感じるからこそ、【後編】では、国を問わず今すぐ実践できるデンタルケア対策など、美しく健康な歯を保つための具体的なヒントをお届けします!

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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