LIFE

堀江純子のスタア☆劇場

情熱の人、甲斐翔真さん。音楽劇『クラウディア』Produced by 地球ゴージャス主演で「心で感じ、伝える」【堀江純子のスタア☆劇場】

  • 堀江純子

2022.07.12

この記事をクリップする

“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.16:甲斐翔真さん

岸谷五朗・寺脇康文が主宰する演劇ユニット“地球ゴージャス”によって2004年に初演、2005年には地球ゴージャス10周年記念の際にアンコール上演され、約12万人の観客を動員した伝説の作品『クラウディア』。再演を希望する声が高まっていくなか、満を持して18年ぶりの復活です。桑田佳祐が本作のために書き下ろした『FRIENDS』ほか、サザンオールスターズの数々の楽曲で綴るジュークボックスミュージカルに集いし、豪華な若き精鋭ヴォーカリストたち!

なかでも記憶に新しい2022年度版『next to normal』で、“激動のゲイブ”と評させていただいた甲斐翔真さんが、物語の主人公、細亜羅(ジアラ)を演じられると!! 甲斐さんの歌のパワーに魅了されていたので、「これはお話伺わないと!」と、スタア☆劇場にお招きいたしました。

かいしょうま●1997年11月14日生まれ。東京都出身。高校在学中にスカウトされ、2016年『仮面ライダーエグゼイド』の仮面ライダーパラドクス役でデビュー。仮面ライダーシリーズの映画を始め、数々の映像で演技経験をしっかりと積み、2020年『デスノート THE MUSICAL』(夜神月役/村井良大とWキャスト)で舞台初主演を果たす。そこからは『RENT』ロジャー、『マリー・アントワネット』フェルゼン伯爵、『ロミオとジュリエット』ロミオ、『next to normal』ゲイブなど、大人気ミュージカルに次々に大役で出演。2022年11月‐2023年1月ミュージカル『エリザベート』では、皇太子ルドルフ役が控えている。

地球ゴージャスは体育会系

──壮大な愛の物語、『クラウディア』。細亜羅という大きな役が巡ってきましたが、禁じられた愛や国を背負う細亜羅をどのように捉えていますか?

「細亜羅は主人公ではあるんですが、いろんな人に影響され……惑わされて……そんな状況下、自分自身を疑いながらも、最終的に大事な何かを見つけていく……そんな役だと思っています」

──絶対的王者ではないけれど、迷いがある若者だからこそ、我々は共感したり感動したり。

「その、迷い、怯えがあるからこそ見ていて面白く、魅力のあるキャラクターだと思います。多くの感情を持っているのが細亜羅ですね。細亜羅の心の動きをお客様が感じてくだされば、と。演じてはいるんだけど、演技を超えた本気度と言いますか、目の前で“何かが起きている!”というような芝居を目指しています」

STORY:愛を禁じられ、戦いに明け暮れる「根國」と「幹國」という2つの民族しかいない世界。神親殿という神が定めた絶対の掟に背いて、二つの恋が芽生えた。民族を超えて密かに育まれる愛と、自覚せぬままお互いを想い合う愛。二つの愛はやがて、その「世界」そのものを揺るがすことになっていく・・・」

 


──地球ゴージャスについては、どんなイメージが?

「体育会系ですよね。皆さんすごく体が動く! 頭の先から足の先まで120%神経を張り巡らせて作品を作っている、そんなイメージがあります。地球ゴージャスの稽古は、マット運動なんかもするんですけど、(岸谷)五朗さんがおっしゃってたことに、なるほど!と思いました。

普段、床と同じ目線になることってあまりないことじゃないですか。でも、侍とか戦をしている人たちって、地に足を付けて、いつ自分が斬られるかわからない状況で全神経を研ぎ澄ませているんですよね。その感覚を味わうためにも、マット運動ってめちゃくちゃ大事なものだと」

──確かに。現代の生活のなかで、大地に寝転がることって、まずないですもんね。

「そうなんですよ。マット運動するのにも深い意味がある。昔、出演者でもないのに、地球ゴージャスのマット運動の稽古に参加させてもらったことがあったんですけど、出演者として稽古をするようになって、その意味その重要さがわかりました」

ひとりカラオケで7時間の高校時代

──『クラウディア』と言えば、サザンオールスターズの楽曲で紡ぐジュークボックスミュージカルとしても話題になり、甲斐さんの歌も見どころですが。甲斐さんのキャリアから考えて、歌が…歌が上手すぎやしませんか!?

「ええ(笑)! いや、僕はただカラオケが好きな人…だったんです。ひとりでカラオケに行って、ひとりで7時間とか歌い続けて(笑)。でも確かに、急に出てきたヤツなのに、何かいい作品にばかり出てるぞ、って思われたかもしれないですよね(笑)。そう言われても返す言葉がないぐらい、作品には恵まれると自分でも思っています」


──今年だけでも、春は『next to normal』のゲイブ、現在、18年ぶり奇跡の復活を果たした名作、地球ゴージャス『クラウディア』では主演、細亜羅を。そして、秋に控えているのは『エリザベート』の皇太子ルドルフ。怒涛の名作続きです!

「本当に光栄です。嬉しく思っています」



心、感情が動く歌、演技でなければ意味がない

──小さい頃から、歌っていらっしゃったんですか?

「小さい頃はただただ音楽が好きで聴いていました。お気に入りだったのは、ディズニーソングのベスト盤とか、スタジオジブリ作品の名曲集。物心がつく前から自然と家には音楽が流れているなかで育ってきた…そんな感じですね」

──そんな素敵な環境が幼い甲斐さんに自然といい影響を与えてきたんでしょうね。加えて、強靱とお見受けするノドも、授かりものですよね?

「どうなんでしょう(笑)? カラオケで気持ちよく歌えるのと、ミュージカルで歌うのでは違いますからね。今も歌は勉強中ですよ(笑)」

──『next to normal』では、感情の思うまま自由自在に声が出ていらしたような印象があり、出ない音なんてないように聴いておりました。

「ゲイブのナンバーは基本、キーが高いんですよ(笑)。それは大変でしたね~。もとから今のように歌えてたわけではなくて。初舞台の『デスノート THE MUSICAL』のときは本当に苦労しました。今、自分で見たら耳を塞ぎたくなりそう(笑)。思い返すと反省点がたくさんありますね。

舞台のお仕事を本格的にやるようになってからボイトレを始めて、今も続けているので、トレーニングをして、だんだん出したい声が出せるようになって、それが舞台上でもできるようになって…と段階を踏んでます(笑)。今、舞台上で歌うことへの慣れ、自信をようやく持ててきたところですね」

──もうひとつ、甲斐さんを素敵だなと思ったのは、歌うときの動きがいきいきしていて。歌と動きのバランスが非常にいいなと!

「ホントですか! 歌にしても動きにしても、心、感情が動いてのことでなければ意味がないって思っていて。動きに関しては、スポーツ推薦で高校に入ってサッカーをずっとやってきたので、そのおかげもあるのかな? 素人時代のカラオケ好きとサッカー生活が今、役に立っているのかもしれないですね。とにかく、僕は歌が好きなんですよ。仕事であったとしても本音で言えば、気持ちとしては、仕事として歌いたくないと思うほど」

いかに、その世界に当たり前のように存在できるか?

──ゲイブ、ルドルフ、そして細亜羅という役は特に、役になりきるにはちょっと異質な生涯を背負った男たちですよね? そういう場合、役作りはどのように?

「役になりきるというよりは、世界観に入り込むって感じのほうが強いかもしれませんね。物語の世界がたとえどんなに異質で、僕の日常とはかけ離れていても、いかに、その世界が当たり前のように存在し、そこであたり前に役として生きられるかを大事にしています。例えばゲイブは、彼の存在を幻想ではなく魂と置き換えました。役が生きるその世界にどう存在するか、考えて設定をして。そこに感情を乗せていきます」

──役、作品に対する想いが情熱的ですね。

「熱いですかね(笑)? 自分の感情が動くだけじゃなく、お客様の感情も動かして、驚かせたい、って想いはありますね。でもやっぱり難しいですよ……心でわかって歌うって。もちろんミュージカルの舞台に立てる楽しさやお客様から拍手をいただいたときの喜びもちゃんと感じている上で、ですけどね。ここ最近は、もっと深いところまで掘り下げたいっていうマインドが強くなってきています」

──何か、きっかけが?

「ミュージカル『October Sky -遠い空の向こうに-』あたり……からかな。板垣(恭一)さんという演出家さんと出会って、役作りを簡単に終わらせたくない……って強く思うようになりました」

心でわかる作品、それが『クラウディア』

──出演作の『RENT』も然り。甲斐さんが出会っている作品、役はどこか哲学的なところ、あるように感じます。

「ああ……そうかもしれないですね。哲学的な部分は変わらぬまま、18年前に生まれた『クラウディア』が今のお客様にどう映るか、僕がどう表現できるのか、ですね」

──18年前の『クラウディア』を拝見しているのですが、私、それが地球ゴージャス初観劇だったので、当時、新しい演劇、ミュージカルの形としての新鮮な息吹、スケールの大きさに圧倒されたことを覚えています。

「18年前とはお客様の意識も役者の意識も違うでしょうし、肌で感じるものもまた新しい何かがあると思います。『クラウディア』こそ、“心でわかる”というのがキーワードになる作品だと思いますね。『クラウディア』の舞台に立つ役者として、頭で理解するだけじゃ理解できない何かを背負って、細亜羅として生きたいですね」

──『クラウディア』を始め、地球ゴージャス作品は、人を愛することであったり、戦争、環境問題と、宿題をいただいて劇場をあとにするイメージが強いんですよね。

「そうですよね……。『クラウディア』は“愛”がテーマにありますけど、異次元の物語のようで、“愛”を掲げた世界って、実は現代と変わりはないって思いました。『クラウディア』も愛を阻む大きな問題がありますが、現代もコロナ禍で好きな場所に行って、好きな人に自由に会えなかったり、家族にさえ会うのが難しくなったり。実際、戦争が起きている世の中で、いろんなことが滞ってもいる。小さな愛が人知れず踏み潰されているかもしれない今、18年前よりもより共感性は大きく強くなっているんじゃないかと」

──愛って、不偏ですよね。『ロミオとジュリエット』だって、知ればどの世代の人も泣けるわけですし。

「そう、“愛”はいつだって……ですよね。その変わらない“愛”が『クラウディア』のなかにあるので、しっかりと心で感じて、お客様にお届けしたいと思います。ご覧になったことがある方にも、初めての方にも“地球ゴージャスって、すごいじゃん!!!”って思わせたい。その想いはどの作品に出るときも変わらず、それが僕が出演する意味、と思って頑張ってます……なんて大口叩きつつ(笑)、毎回、必死にヒリヒリしながら何とか着地してるんですけどね(笑)」

お話してみて思ったのは、甲斐さんその人こそ激動の人、情熱の炎を心の中で燃やしている人であると。

演じること、歌うことへの熱い想いはもちろんのこと、地球ゴージャス作品が持つメッセージ性の話から、環境問題に及んだときに、「食べ物は絶対に残さない」という強い心がけがあることを語ってくれました。「食べる物って元を辿れば多くの人が関わって、真心を込めて作られたものなのに。食べることにも困っている人は世界にたくさんいるのに、自分で注文しておきながら残すなんてありえない!」と社会に対しても熱い想いがある彼は、地球ゴージャスというプロジェクトの真ん中に立つべくして、選ばれた人。

真っ直ぐで熱い気持ちはこのまま、さらなる活躍を期待しています。個人的には、『ミス・サイゴン』のクリスを演じる甲斐さんを、いつの日か観てみたいです。

Daiwa House Special 音楽劇「クラウディア」Produced by 地球ゴージャス

脚本・演出・振付:岸谷五朗

出演: 大野拓朗/甲斐翔真(W キャスト) 廣瀬友祐/小栗基裕(W キャスト) 田村芽実/門山葉子(W キャスト)
美弥るりか 上山竜治/中河内雅貴(W キャスト) 平間壮一/新原泰佑(W キャスト) 湖月わたる 他

主題歌:サザンオールスターズ「FRIENDS」

楽曲協力:タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント

衣裳:山本寛斎事務所

ヘアメイク:冨沢ノボル

振付:原田 薫 大村俊介(SHUN) 藤林美沙

殺陣:島口哲朗(剱伎衆かむゐ)

●東京公演

日時:2022年7月4日(月)~7月 24日(日)
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

●大阪公演

日時:2022年7月29日(金)~7月31日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール

●お問い合わせ:

チケットスペース 03-3234-9999(平日 10:00-12:00/13:00-15:00

企画・制作:アミューズ

●こちらも併せてお読みください

押しも押されもせぬ宝塚トップスターから女優へ。望海風斗さんが実力を存分に発揮した『next to normal』

地球ゴージャス『星の大地に降る涙』。“反戦”がテーマの舞台に、母となった笹本玲奈さんが考えたこと【堀江純子のスタア☆劇場】

『クラウディア』公式サイト 「甲斐翔真」公式サイト

撮影/富田一也

堀江純子 Junko Horie

ライター

東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる