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堀江純子のスタア☆劇場

古川雄輝さん、舞台と〇〇への愛を叫ぶ!『室温~夜の音楽~』主演インタビュー【堀江純子のスタア☆劇場】

  • 堀江純子

2022.06.30

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“堀江純子のスタア☆劇場”
VOL.15:古川雄輝さん

 

ケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出で生み出した『室温~夜の音楽~』。 2022年版は河原雅彦を演出に迎え、主演・古川雄輝で甦る、新たなる『室温』。

集団暴行による殺人事件が12年後の被害者の命日に動き出す…… しかし、単なるホラーで終わらないのがKERAさん作品。 ホラーコメディと銘打ったこの作品は、構成はホラー、会話はコメディという、登場人物の不気味さにハマる作品です。

主演の古川雄輝さんに対し、絵に描いたような好青年のイメージを持ってきましたが、『室温』では、古川さんのどんな一面を見せてくれるのでしょうか? 話を伺う限り、作品からして一筋縄ではいかなそうです。

最終的に残っていくエンタメは舞台だと思う

ふるかわゆうき●1987年12月18日生まれ。 東京都出身。 7歳から学生時代、カナダ、アメリカNYですごし、ミスター慶應グランプリ、、キャンパスターH★50withメンズノンノ審査員特別賞を経て2010年役者デビュー。 2013年主演ドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』が中国で大ヒット。 『俺たちの明日』『イニシュマン島のビリー』『神の子どもたちはみな踊る after the quake』など舞台演劇でも活躍。主演を務める映画「劇場版 ねこ物件」が8月に公開予定。

 

──コロナ禍の舞台演劇はなかなか強かったと思います。 今年になって一気に延期になっていた作品が上演されたり、古川さんのお芝居もナマで味わえることになり、演劇ファンとして嬉しい限りです。

古川「日本国内では変わらず一番テレビが強いと思いますが、海外だとほとんどテレビを見ない国も多くなってきていて。 コロナ禍で日本も配信が増えましたよね。 SNSを始め、ショート動画も流行って、エンタメの在り方が変わっていくなかで、自分は最終的に残っていくエンタメは舞台だと思うんですね。

舞台観劇を好む人はお金を払って劇場に観に行く…… その形式は大昔からほぼ変わらぬまま、今も新作が世に出続けている舞台って、すごく強いと思うんですよ。 役者にとって舞台は、どんな時代でも生き残っていける場所なのかなと思っています」

──演劇を観に行かない、行ったことがないという方もいますけど、一度、劇場に足を運んで、エンタメに満たされた経験がある人って、頻度はそれぞれでも劇場からそうは去らない気がしますね。

古川「コロナで中止、延期の連続を経て、余計に劇場に行きたい気持ちは高まっているんじゃないですかね。 ステイホームでたくさんテレビや配信は見てきたはずですから(笑)。 観劇するだけじゃなく、この場所のこの劇場へ行くこと自体、アトラクションになりますよね。 地方の方が観劇のために東京まで遠征をして、観劇後はホテルに一泊して… なんて、旅行の味わいもありますし。 そういう楽しみも加味した強さが舞台にはあると思います」

毎回環境が違うなかでずっと戦っている

 

──古川さんは映像主体の役者さんと思っている読者も少なくないとは思うのですが。古川さんにとって舞台出演は、お仕事のなかでどのような位置づけに?

古川「確かに振り返れば映像作品のほうが多くはなりましたが、でも実は、デビューは小劇場なんです。最初は仕事がまったくなくて(笑)、演じるだけじゃなく劇団員の方々と一緒に舞台設営もやってました(笑)。まだ何もわからない自分に、舞台演劇のノウハウを教えていただきありがたかったです。

そのあともう1本小劇場作品の仕事をしながら映画のオーディションを受けて、そこから映像に行ったので舞台、映画と役柄を追求できるところから始められたのはよかったと思います。初のテレビドラマはスピード感が舞台や映画とはまるで違って、付いていくのが大変でしたね。

舞台は稽古期間があるというのは大きくて、今の自分にとっても成長できる場所です。役柄について、ひとつひとつの台詞まで深く追求することができる場所。だからこそ壁にもぶち当たりますけどね。その壁を乗り越えて成長する…トレーニングの場だと思っています。役者の先輩方を拝見していても、舞台で場数を踏んだ役者さんはやはり映画でもドラマでも圧倒的にお芝居が上手だな!って思います」

──役者さんって、きっとずっと学びの場にいらっしゃるんでしょうね。

古川「人も場所も役も同じなままってことはなく、毎回環境下が違うなかで、ずっと戦ってますね(笑)。すごく大変ではあります」



舞台の世界観に連れていってくれる感覚が好き

STORY:田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢(堀部圭亮)と娘のキオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受けて殺されたキオリの双子の妹・サオリの命日に、海老沢家には様々な人が集まってくる。巡回中の近所の警察官・下平(坪倉由幸)、海老沢のファンだという女・赤井(長井短)。タクシー運転手・木村(浜野謙太)は腹痛を訴えて転がり込み、そこへ加害者の少年のひとり、間宮(古川雄輝)が焼香をしたいと訪ねてくる。この日をきっかけに過去の真相が浮かびあがってくる…。

──『室温~夜の音楽~』でもまた新たなる出会い、学びが?

古川「長井(短)さん以外は、皆さん今回が初めてご一緒しますね。『室温』はホラーコメディということで、ホラーであり、クスッと笑えるところもあり。どちらにも振り切っているところがあります。12年前の拉致、監禁、暴行で死亡した女性の命日に集まった人たちが織り成す奇妙な物語で、自分は加害者で、刑期を終えてお線香をあげにきた間宮を演じます。何が本当で嘘か、曖昧な世界があります。

舞台って観ている間はその世界観に連れていってくれるじゃないですか。そういう舞台のマジックも含めて、不思議な世界に誘われる感覚が好きで。この物語もそういう魅力があると思います」

超超~玄人向けでありつつ、誰でも楽しめる『室温』

──『室温』は2001年に初演。今回は河原雅彦さん演出ということで、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが作り上げた世界に新たな奇妙さが加わりそうで!

古川「そこに生音の魅力も加わるんですよね。初演は“たま”さんが音楽を担当されていたんですが、今回は、出演者に浜野謙太さんが、そして音楽は在日ファンクってところも見どころなんです。出演者としては、おそらく音楽につられ、体が動く瞬間もあるんじゃないかと…楽しみにます」

──生オケでミュージカルはあたり前の形式としてありますけど、『室音』はホラーとコメディ、そしてファンク!!と、現代が生み出した新しいエンタメで。ミュージカル苦手意識民には、ぜひ『室音』をきっかけに、生のいい音楽と演劇の科学反応を知っていただきたいなと。

古川「ミュージカルが苦手で、舞台さえあまり観に行ったことはないって人にも、非常に楽しめるものになっていると思います」

──洒落た感じのものが好き、ライブが好きってだけでも、観るべきかと。在日ファンクの、通常ではない音楽の形を聴けるだけでもお得です!

古川「そうだと思います。自分もこれは友達に“観にきてよ”って言いやすいなと思いました(笑)。終演後に会っても、“楽しかったでしょ!”って言える(笑)。演劇って、手法だったり内容だったり、例えば古典的なものとか、かみ砕くのに非常に難しいものも多く、それはそれで演劇好き、戯曲好きの人の興味を掻きたてる良作だとは思うんですけど、『室温』はいい意味でそっちじゃない。でも実は超超~玄人向けでもあり、エンタメとして誰もが楽しめる。自分はそう思います」

趣味で厳しいことはしたくない

──古川さんは、“これが自分の好きなもの”って言えるものはありますか?

古川「自分は…そうですね、おじちゃんが好きなものはだいたい好きですね」

──お、おじちゃん?

古川「車、ウイスキー、ゴルフ、服、麻雀……だいたいの男が通るであろう、しかもおじちゃんになったときに好きになるだろう、ってものですね(笑)。もともとは積極的にそういうのを好きになろうとしたんです。この仕事をしていく上で欠かせない人とのお付き合い、特に先輩との付き合いが苦手で。

それが、麻雀を始めてみたら、自然と目上の方と麻雀を通じて仲良くなれたんです。先輩との雑談のなかで、麻雀やるんですか、今度ご一緒しましょうと。1回一緒にやればいい関係性が作れたりして。ゴルフもそれで始めたんです。お酒、ゴルフ、麻雀ができればだいたいの目上の男性とは仲良くなれると(笑)。人付き合いで悩んでた若いときに、見出した楽しい答えでした。お酒も昔はカルアミルク一杯ぐらいしか飲めなかったのが、今ではウイスキーを楽しめるまでになれましたよ(笑)。

挙げたなかでも、たまらなく好き、っていうのは車かな。仕事場に自走で行くので。コロナ禍ということもあり、車はひとりになれる空間っていうのもよくて。今のブームは車ですね」

──女性目線で言いますと、彼や夫が車好きの場合、ありがたい場合と、困る場合とありまして。後者はハマりすぎ、お金かけすぎ問題です。

古川「おそらく自分は前者ですね。ものすごくコスパのいい車に乗ってます。Uターンもしやすい車ですし、燃費もいい。何十年前の、この古いエンジンがいいんだよ~、ってほうの車好きじゃないです」

──いいですね!

古川「車に関しては、最先端のものが揃っててほしいです。危ない車も駐車しにくい車もイヤですね(笑)。自分はお金を払ってまで、趣味で厳しいことしたくないんですよね。旅行も快適にすごせるところに行きたいですね」

──インドとかアフリカとかではなく、ハワイ?

古川「そういうことです(笑)。インド、アフリカより絶対にリゾート地です。何なら、極力時差もないほうがいいですね。だから、ハワイはちょっと時差がキツいなと。行くなら韓国でグルメか、ハワイで何もしないか、国内で温泉。この3つですね(笑)」

初めてインタビューさせていただいた古川さんは、賢さを伴って苦手を克服し、「トークは苦手です」と言いながらもきっと、諸先輩方に可愛がられているのだろうなと、そんな印象を受けました。『室温』という独特な世界で、河原雅彦さんという奇才とタッグを組んだ古川さんは、どのような表情を見せてくれるのでしょうか? 

舞台『室温~夜の音楽~』

作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽・演奏:在日ファンク
出演:古川雄輝 平野綾 坪倉由幸 浜野謙太 長井短 堀部圭亮 ・ 伊藤ヨタロウ ジェントル久保田

●東京公演

日程:2022年6月25日(土)~7月10日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
料金:S席9,500円 A席7,500円 (全席指定・税込・未就学児入場不可)
主催:関西テレビ放送 サンライズプロモーション東京
お問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)

●兵庫公演

日程:2022年7月22日(金)~24日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(兵庫県西宮市高松町2−22)
主催:関西テレビ放送 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター
運営協力:サンライズプロモーション大阪
お問合せ:芸術文化センターオフィス 0798-68-0255(10:00~17:00 / 月曜休 ※祝日の場合は翌日)

企画・製作:関西テレビ放送

「舞台『室温~夜の音楽~』」公式サイト 「古川雄輝」公式サイト

撮影/富田一也

堀江純子 Junko Horie

ライター

東京生まれ、東京育ち。6歳で宝塚歌劇を、7歳でバレエ初観劇。エンタメを愛し味わう礎は『コーラスライン』のザックの言葉と大浦みずきさん。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『エリザベート』『モーツァルト!』観劇は日本初演からのライフワーク。執筆はエンターテイメント全般。音楽、ドラマ、映画、演劇、ミュージカル、歌舞伎などのスタアインタビューは年間100本を優に超える。

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