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高木綾子

国内のゴミは国内でリサイクル!新たなサスティナブルファッションを実現する豊島の『WAMEGURI』「ゴミを”捨てる”から”手渡す”へ」

  • 高木綾子

2022.02.06

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(右から)環境省『ファッションと環境』タスクフォースリーダー 岡野隆宏さん 豊島株式会社 溝口量久さん・間所孝介さん モデレーターの一般社団法人unisteps共同代表 鎌田 安里紗さん

異常気象や災害など、年々深刻化する気候変動への危機感から、世界中で環境問題への関心が高まっています。

そして、私たちの生活に密接なファッションにまつわる問題も、身近なメディアを通じて、本当によく目にするようになりました。

私自身も、商品回収ボックスや、フリマアプリの活用など、微力ながらもゴミを減らす努力をしていますが…やっぱり出てしまう不要な服。指定日に収集へ出すべきか、他に何か手段があるのか迷うのが現状です。

生活を彩り、豊かな気持ちにさせてくれるファッション。そのファッション産業はいま、どんな課題に直面し、私たちは今後どのような意識を持つべきか?ヒントを探るべく、繊維のプロ「豊島」が主催する「第三回サスティナブルファッションセミナー」に参加しました。

世界の洋服のおよそ73%は廃棄され、焼却・埋め立てに使われているのが現状です

環境省『ファッションと環境』タスクフォースリーダーの岡野隆宏さん

環境省『ファッションと環境』タスクフォースリーダー 岡野隆宏さん

「ファッション産業は、製品が作られてから廃棄されるまでの一生が、複雑かつ長いことが特徴です。そして、その様々なステージで、加工や輸送における環境負荷が大きく、国際的にもとても問題視されています」と語るのは、環境省の岡野隆宏さん。

「例えば、繊維を作る紡績や染色などの過程では、大量の水を使用し、世界の繊維産業による温室効果ガスの排出量は、全ての国際線と海運を合わせた量を上回っています。

そして、製品になってからも、洗濯によるマイクロプラスチックの流出、また、不要なアイテムが、リユース、リサイクルされずに大量廃棄されていることも大きな問題となっています。

今、世界の洋服のおよそ73%は廃棄され、焼却・埋め立てに使われているのが現状なのです」(岡野さん)

大量生産、大量消費、大量廃棄…
作り続けることは経済成長には結び付かず、様々な課題も

大量に作り、消費し続けても、経済成長と結び付かず低価格化が進んでいるという経済的な問題。さらに、生産拠点のほとんどは海外へシフト。国内の工場が衰退するばかりでなく、海外の劣悪な労働環境下で製造されているという社会的な側面も改善が求められています。

「ファッション産業の課題は環境・経済。社会問題が絡み合いとても複雑です。今まさにSDGsとして、統合的な向上が求められているのです」(岡野さん)

大量に生産され、消費、廃棄される洋服たち。その解決策としてまず思いつくのは”リサイクル”、”リユース”などですが、実際の規模はとても小さく、なかなか進まない状況にあるそうです。

「古着も、海外輸出されているものが殆どで、国内でのリサイクルやリユースはほんの一部です。実際に循環して新しいものになるというものは、まだまだニュースになるくらい珍しいのが現状なんです」(豊島株式会社 溝口量久さん)

国内で出た資源は国内で循環する「WAMEGURI」プロジェクト

ワメグリプロジェクト

そのような状況を、業界の中から変えていく。この春、豊島から新たに「WAMEGURI(ワメグリ=和・廻り)」プロジェクトが開始されます。

「WAMEGURI」は、『日本で出た資源は国内で循環する』をコンセプトに、従来のペットボトルだけでなく、コットン、ウール、ダウンの4種類を回収。そして、裁断、紡績の全てを”日本国内”で行う環境に配慮したシステムです。

「かつて、ペットボトルはゴミでした。でも、今は、分別・回収しています。そういう習慣を、ファッションにおいても当たり前にしていきたいと考えています」(溝口さん)

回収されたコットン・ウールのリサイクル方法

リサイクルの一例。回収されたコットン・ウールのリサイクル方法

そうすると、気になるのがコスト面での問題ですが…?

「現在、リサイクルする衣料品は店頭で回収を予定しています。しかし将来的には、クリーニング店や学校など、回収拠点を増やしていく。また国や多くの企業と協力し、回収拠点、選別拠点、粉砕拠点を増やすことも目標にしています。

拠点を増やして、回収・リサイクルのためのコストを下げる。そうすることで、このプロジェクトを持続的に循環させていきたいと考えています」(豊島株式会社 間所孝介さん)

また、企業や行政からのアクションを待つだけでなく、今後は私たち生活者の協力も欠かせないと間所さんは語ります。

「リサイクルされやすい素材を選ぶこと以外にも、洋服の回収時、ボタンやファスナーは取り除くなどの分別時の習慣が私たちの中に定着していくこと。日本で出たものは、国内で循環させるのが当たり前だよね、という「常識」や「文化」を、このプロジェクトをきっかけに作っていけたらと考えています」(間所さん)

ちょうど先日、LEE12月号「家庭のごみを減らす4つの工夫」の記事を読んで、今まで可燃ゴミとして出していた紙箱、紙袋をリサイクルに出し始めた我が家。確実に可燃ゴミの量が減り、「もっと早くやっておけば…」と思ったばかりです。

コットンやウールも、誰もが当たり前に持っている素材。この「WAMEGURI」は多くの人がチャレンジできるシステムになりそうですよね!



日本近海のプラゴミは世界平均の27倍!
海洋プラスチックゴミの再利用にも着手

数で見るプラスチック問題

また豊島では「漂着ペットボトルを回収し、資源にする。」をテーマに日本の海岸に漂着した海洋プラスチックゴミを集め、リサイクルする取り組みにも着手しています。

「便利で安全な生活をするためにプラスチックは必要。でも日本のプラごみは年間で940万t。そのうち、マテリアルリサイクルされているのは22%です。しかもそのうちの18%は海外輸出。国内でリサイクルされているのはわずか4%しかありません」(豊島株式会社 中村 洋太郎さん)

UpDRIFT™プロジェクトでは様々なボランティアや環境団体、自治体、リサイクラー、デザイナーなどと協力し、海洋プラスチックゴミから、できる限りマイクロフリースを出さない再生繊維の開発を開始。現在は、沖縄の石垣島をはじめとし、様々な場所でビーチクリーンの活動をしているそうです。

次々に仲間を増やし、活動を広げている中村さん。「いつかは、ゴミを拾わなくていい海岸、ゴミからリサイクルする必要のない社会になることが本当の理想です」と語る言葉はとても印象的でした。

ビーチクリーンをする中村さん

ビーチクリーンをする中村さん。右下は、サーフィンが趣味の俳優の駿河太郎さん。この企画に賛同し、自身が関わるブランド「NEW ORDER」でも、UpDRIFT™を採用した製品を発売予定。

『捨てる』という概念が、『手渡す』という意識を持てるような社会に

セミナーの最後、「捨てる時に、これがどうなっていくのかということが意識できるような社会を目指していきたい」と語る岡野さん。

「『捨てたら』ゴミだけど、『渡せば』資源。これからの時代には、不要になったものを『捨てる』ではなく、『次の人に手渡し』することが実感できるような仕組みを様々な企業、国が連携してつくり、そんな文化が根付いた社会にしていきたいと考えています」(岡野さん)

捨てるだけだった不用品の行き先に選択肢が増えること。生産背景や作り手に興味を持つのと同じく、手放した後の行き先がわかることは、私たちがアクションに参加をするモチベーションにも繋がりそうです。

”沢山あること”が豊かさではない時代に

”モノを沢山持てば幸せ”という概念が変わりつつある今の時代。特に自粛生活が続いたコロナ禍では、「本当に好きなものをしっかり選びたい」という価値観にシフトした人も多いのではないでしょうか?

一つのアイテムを長く愛用すること。「適量」を知り、「適正価格」で手に入れること。また、リサイクルなど環境に配慮した素材など、長い目で見た買い物の基準を持つこと。

そして何より、それらをサポートする取り組みに注目し、積極的に参加をしていくことは、ファッションの新しい楽しみ方の一つにもなるのではないかと感じました。

豊島株式会社

https://www.toyoshima.co.jp

高木綾子 Ayako Takagi

ライター/LEEキャラクター

1981年生まれ。百貨店バイヤー、ヴィンテージショップなどファッション業界を10年経験。その後、LEEキャラクターになったことをきっかけに同世代の女性に役立つ情報を伝える仕事に興味を持ち、ライターの道へ。夫の仕事の関係で2020年より東京から香川へ移住し、ファッションや子育てのほか、四国地方についても執筆。2児の女の子ママ。

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