LIFE

モヤモヤしているのはうちだけ? パパとママのジェンダー問題

【文筆家 清田隆之さん】細かい価値観もすり合わせて定期的に夫婦関係をメンテナンス

  • LEE編集部

2021.09.29

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子どもに「男の子だから、女の子だから」という価値観を押しつけたり、夫が妻に「女性が家事、育児をして当たり前」というバイアスを持っていると、子どもに受け継がれてしまう可能性も。

昨今、議論を呼びがちなジェンダー問題、夫婦間のジェンダーバイアスについて、文筆家・清田隆之さんにお話をうかがいました!

この記事は2021年8月7日発売LEE9月号の再掲載です。


文筆家 清田隆之さん
男性目線からジェンダー問題について発信。双子のパパになり意識が強く

文筆家 清田隆之さん

文筆家 清田隆之さん

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。1200人以上の恋バナを聞き集め、恋愛とジェンダーをテーマに執筆。著書に『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』(晶文社)など多数。
『さよなら、俺たち』¥1870/スタンド・ブックス

家事、性的同意、風俗、夫婦別姓などさまざまなテーマに根づく男性問題を掘り下げたジェンダーエッセイ。
『さよなら、俺たち』¥1870/スタンド・ブックス

あえてジェンダーギャップを生かして妻の気持ちを軽く

あえてジェンダーギャップを生かして妻の気持ちを軽く

ジェンダーをテーマに文筆活動を行う清田さん。 ’19年に双子が誕生して2児の父に。妻の妊娠中に、これまでにないほどジェンダーギャップを感じたと言います。

「桃山商事というユニットでこれまでに1200人以上の恋バナを聞いてきて、夫婦間のジェンダーギャップの話もよく耳にしていたので、自分なりに意識はしていたのですが……。

つわりで気持ち悪そうで、おなかが大きくなれば歩きにくく、転びそうになると大丈夫かなと心配して。体調も何も変わらない自分と、妻との違いがあまりに大きくて驚きました。

妊娠中に妻が3週間ほど入院もしたのですが、自宅に一人でいると、妻が妊娠中だということをうっかり忘れそうになってしまったり、のびのびと仕事できちゃったりで……! これはかなり意識して父親になるということを自分の中に構築しなければ、と思いました」(文筆家 清田隆之さん)

家事・育児の分担を更新。細かい価値観もすり合わせて

産後はあらためて話し合って、家事・育児の分担を更新したそう。

「家事は、妻が洗濯の仕方やたたみ方にこだわりがあるのでまかせて、僕は料理全般を担当。

あらためてやってみると、料理って作ることだけが仕事じゃなくて、ストックなどを把握しておいて献立を決めて、調味料がなくなれば買い足し、いつも同じだと栄養的にどうかなと思うから今日は魚で、ここよりあっちのスーパーのほうが安いなとか、考えるべき要素がいくつもあるんですよね。
点ではなく流れで家事をとらえるようになるまで試行錯誤の連続でした。

育児は、妻は帝王切開でまだおなかの傷も痛そうなのに、夜中も3時間に1回の授乳をしなくてはいけない。双子なのでずれると1時間半おきとかに起きなければならず、どう考えても妻一人じゃ無理なので、最初からミルクメインで育てました。

毎日ひたすら睡眠不足でしたが(笑)、双子がまだ小さな頃は、哺乳瓶の乳首だけをちょうど僕の胸のあたりでおしゃぶり代わりに吸わせ、おっぱいを吸わせているような感覚になったりして(笑)。全然違うとは思うんですけど、母乳ってこんな感じかなと思いながらやっていました」(文筆家 清田隆之さん)

特に育児に関しては、有無を言わさず“命の責任者”になってしまう妻との意識の差を感じるとも。

「妊娠してすぐもらうのが“母子手帳”だし、生まれてすぐ赤ちゃんの生命をまかされるプレッシャーは相当なものでは……と。

妻は育児に対してケアの意識が強く、より丁寧に、安全にと思っている感じがします。一方の僕はタスクのようにとらえてしまう部分があった。

例えば、哺乳瓶をはさめる授乳クッションを買ってハンズフリーでいこう!とか合理化に走ってしまうのですが、妻の反応が微妙なんですよね。まずは手探りでやってみて、具体的な困りごとに直面してから改善していきたいというのが彼女の考えでした。

アイテムでも何でも、きちんと手順を踏んで取り入れることが大切だなと。ただ双子なので、限られた時間や体力の中ですべて丁寧にやっていくのはやはり難しい。なので、適度にゆるめるための働きかけも大事かなとは思っています」(文筆家 清田隆之さん)



“よく気づく側”に負担が偏ることは絶対に避けたい

“よく気づく側”に負担が偏ることは絶対に避けたい

恋バナ収集でさまざまな男女の関係性やトラブルを見てきた清田さん。定期的に話し合って、夫婦関係のメンテナンスをすることの必要性を痛感しているそうです。

「話し合いにもいろいろあると思うのですが、何を買おうかみたいな実務的なことではなく、お互いをどう思っているかということは定期的に話しておいたほうがいいなと。

例えば、妻はエコへの意識が高く、無駄な梱包や運送のコストを考えてあまり宅配を使いたくないみたいなんです。僕は仕事柄もあって、本とか宅配でガンガン買ってしまう。そのへんの違いを認識しておくと、僕が本を買うときに生活必需品もまとめて注文しようかな、とか意識ができる。価値観の細かいところを積み重ねて、共有するのが大切かなと。

こういう生活の問題って、どうしても大雑把なほうが得をするというか、気づいたほうがやって、それが続いて習慣になっちゃうと思うんです。夫婦の負担に差ができて不満が爆発する!というケースが大半で、そうなったら手遅れだと震え上がっています(笑)。

コミュニケーションを面倒臭がらず、できるだけ重症化する前に話し合ってメンテナンスすることは、今後も続けていきたいですね」(文筆家 清田隆之さん)

夫婦ともにフリーランスで働いているので、お互いまとまった育休は取らずに仕事復帰。

夫婦ともにフリーランスで働いているので、お互いまとまった育休は取らずに仕事復帰。
今年から保育園に入園して、双子が代わる代わる体調を崩すという新たな壁も。

清田さんの夫婦間ジェンダー問題との向き合い方

1. 家事は部分的にではなく、一連の流れですべてを担当

2. 夜中の授乳にも起きて妻まかせにしない

3. 生活習慣のこだわりや価値観を定期的に話し合う


撮影/露木聡子 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2021年8月7日発売LEE9月号『パパとママのジェンダー問題』の再掲載です。

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