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津島千佳

京都で開催中!「約ネバ」コンビの漫画で「シャネル」の思いを伝える展覧会【MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか】

  • 津島千佳

2021.09.24

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「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021」にて、「MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」が開催中!

「約束のネバーランド」で大ヒットを放った原作者・白井カイウさん&作画家・出水ぽすかさんがシャネルというブランドからインスピレーションを受けて描いたコミック「miroirs」。

ジャンプコミックスから好評発売中の「miroirs」¥977。©白井カイウ・出水ぽすか/集英社

3つあるストーリーには、リトルブラックドレスや「シャネル N°5」、リップスティックなど「シャネル」のアイコニックなアイテムが散りばめられています。2021年春には東京・銀座の「シャネル・ネクサス・ホール」で「miroirs」と「シャネル」をより深く楽しむための展覧会も行われました

そして残念ながら足を運べなかった人に朗報! 毎年京都で行われている「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」にて春に行われた「MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」が開催中です。

京都らしい会場で、ガブリエルの先進的な精神を体感できる展示会

MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」のイメージムービー。©CHANEL

会場は呉服問屋が立ち並ぶ室町で江戸期から続く帯匠である「誉田屋源兵衛」の竹院の間と黒蔵。

「MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」の会場である「誉田屋源兵衛」。

明治期から大正期にかけての建物では、間口からは想像もつかないほどの敷地が広がります。この会場を選んだのは、モノトーンを基調としたモダンな「シャネル・ネクサス・ホール」と印象の違う、京都らしい場で展示したいとの思いから。木のぬくもりが感じられる竹院の間では「miroirs」の第1章と第2章が、黒蔵で第3章が展示されています。

複数の鏡が連なり、迷宮に迷い込んだと錯覚しそうなエントランスがお出迎え

鏡張りのエントランス。鏡に映る自分を見つめ直す意味も込められているのかも、などと考えてしまいました。

「miroirs」とはフランス語で鏡の意味。彼女のアパルトマンに続く鏡張りの螺旋階段の写真からインスピレーションを得た場面が漫画にもいくつも登場することもあって、鏡はエキシビションを象徴するモチーフです。

ガブリエルが住んでいたアパルトマンにある鏡張りの螺旋階段にてロベール ドアノーが撮影したガブリエルのポートレイト。© Robert Doisneau/GAMMA RAPHO

さらにウォールアートにはガブリエルの様々なポートレイトや名言、「miroirs」のために出水先生が描いた初期のラフ画なども。

「つねに引き算を 余計なものは付け足さない」など、シャネルのクリエーションに通ずるガブリエルの名言にドキッとさせられます。

このエキシビションの楽しみ方は「miroirs」に込められたメッセージと、漫画のインスピレーションソースとなったガブリエルの精神を追体験できるところ。展示も漫画だけでなく、ガブリエルにまつわるエピソードや資料で構成されています。



「miroirs」第1章「Sorcières –魔女–」

「miroirs」第1章は、読書家で空想することが好きだったガブリエルを投影した少女を主人公にした「Sorcières –魔女–」。

空想好きな少女が主人公の第1章。©白井カイウ・出水ぽすか/集英社

完成した漫画の1ページがどのようにして生まれたのか、出水先生による下絵、モチーフとなったガブリエルの写真が並べられています。

こんなに大きく引き伸ばした漫画の下絵を見るのは初めて。下絵でもかなり緻密に描き込まれています。

ガブリエルのアパルトマンには彼女が収集した様々な国や文化の調度品や書籍が今も残っています。クリエーションの源にもなった彼女が所有した調度品を映像で見ることも。

「miroirs」第2章「Menteuse –嘘つき–」

続く第2章「Menteuse –嘘つき–」は、自由気ままに様々なファッションを楽しむ女性が主人公。

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  • 乗馬が趣味だったガブリエル。第2章の主人公は現代風にアレンジしてバイカーに。©白井カイウ・出水ぽすか/集英社

  • 乗馬が趣味だったガブリエル。第2章の主人公は現代風にアレンジしてバイカーに。©白井カイウ・出水ぽすか/集英社

コミックの展示と日本庭園のコントラストが楽しい。©CHANEL

第2章の舞台は銀座。なじみのある風景が漫画の中で描かれています。

様々なファッションを楽しみながらも、香水は必ず「シャネル N°5」である主人公のため、こちらのコーナーではN°5にまつわる展示も。個人的に最も印象深かったのが、今年誕生100周年を迎えるN°5のボトルデザインの変遷。

歴代の「シャネル N°5」のボトルを展示。

華美なボトルに単純な香りのフレグランスが一般的だった1920年代に、ガブリエルはごくシンプルなボトルに複雑で奥行のある香りのN°5を発表します。時代に沿って、少しずつフォルムは変化していますが、シンプルで研ぎ澄まされたその美しさが変わることはありません。明らかに形状が異なるのではなく、ふたの大きさを修正した程度でわかりやすい変化ではありません。いかに最初のボトルデザインが優れていたのか。しかも最初期のボトル、直線的でとっても現代的なデザインです。

「miroirs」第3章の「Corneille noir –カラス–」

敷地の一番奥にある蔵を改装した黒蔵では、第3章の「Corneille noir –カラス–」を展示。墨色に塗られた黒蔵が、第3章のモチーフの一つでもあるカラスと共鳴します。

「miroirs」の漫画は通常の白黒原稿だけでなく、時折カラー原稿が挟み込まれる仕様。そのカラー原稿をつぶさに見ることができます。

ジェンダー規範に疑問を感じ、息苦しさを感じる主人公の男子学生に呼応するように、ガブリエルの資料はマニッシュな装いのポートレイトが多め。

ガブリエルのポートレイトで最もよく目にするであろうリトルブラックドレス姿のものも、第3章のパートで展示。©CHANEL

「翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすために、どんな障害も乗り越えなさい」との名言を残したガブリエル。その言葉を知らずに「自由ってのは古来勝ち取るものだ」とのセリフを考えた白井先生は偶然の一致に驚いたとか。©白井カイウ・出水ぽすか/集英社

そもそも男性用下着の気楽な素材だったジャージをアウターウェアに取り入れ、女性のバッグは実用性よりデザイン性が重視された時代にあってチェーンストラップをつけたハンドバッグを発表して女性の両手を自由するなど、クリエーションを通して女性の社会進出や解放を訴えたガブリエル。希代のファッションデザイナーであるだけでなく、偉大な発明家でもあると感じました。

発表と同時にセンセーションを巻き起こしたリトルブラックドレスを紹介する当時の雑誌。©CHANEL

ガブリエルの考えが堪能できるのはもちろん、出水先生の原稿が大きく引き伸ばされているので、単行本サイズでは気づかなかった細かな描き込みの発見もあります。「miroirs」を読んでからの方がより一層楽しめるエキシビション。「約ネバ」ファンのお子さんと一緒に遊びに行ってはいかがですか?

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021 MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」

開催期間/〜2021年10月17日(日)10:00〜18:00
休館日/木曜(9月23日は開館)
会場/京都府京都市中京区室町通三条下ル西側 誉田屋源兵衛 竹院の間、黒蔵
入場無料

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021 MIROIRS–Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」公式サイトはこちら

津島千佳 Tica Tsushima

ライター

1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。

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