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RAG FAIR・土屋礼央さんと考える、LEE世代が直面しがちな夫婦・育児・仕事の問題

  • 藤本こずみ

2021.03.28

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LEE世代が抱える悩みにアプローチ

アカペラグループ・RAG FAIRの土屋礼央さんが、エッセイ『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』を上梓。前回の著者インタビューに続き、今回は、LEE世代が直面しがちな3つの問題について考える企画にご登場いただきました。

『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』 土屋礼央・著 1430円/KADOKAWA

 

著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』では、お悩み相談を通して、自身の経験や工夫を綴っている土屋さん。“自分の考え方次第”で、家族との関係をよりよいものにしてきたエピソードには、結婚生活に悩む人々へのよきアドバイスが詰まっています。そこで、今回は、妻と小学生の息子と暮らす土屋さんに、同年代でもあるLEE世代の悩みを聞いていただくことに。

夫婦は、物理的には離れても精神的にはひとつになれるのが理想

まずは、「夫婦編」。このところ、コロナ禍により「夫婦の距離感が変わった」という話をよく耳にします。「家族で一緒に過ごす時間が増えた」「夫婦で育児に向き合えているのを実感する」という明るい声もある一方で、「夫が在宅勤務するようになって、昼食作りなど家事の負担が倍増」「平日に同じ屋根の下で夫が仕事をしていると、仕事や家事の合間に自分だけゆっくりするのも憚られ、家に居場所がないような気がしてくる」と嘆く声も。思いがけない出来事を経て変わってきた夫婦の関係、どうバランスを取っていけばよいのでしょうか。

「わが家の場合は、幸いステイホーム中にも大きな問題は起きなかったんです。僕が“家は妻のもの”だと思っていること、前回もお話ししたように妻に何かを期待しないようにしていること、がよかったのかも(笑)。もうひとつ、このお悩みを聞いて、僕には自宅に音楽活動をするための作業場があるのもラッキーだったな、と気づきました。家での仕事中は作業場にこもっているので、僕も集中できるし、妻もこちらのことは気にせず自分のペースで過ごせているはず。

今の状況にストレスを感じるなら、一度、物理的に空間を分ける方法を考えてみるのはどうでしょうか。『私は休憩中は昼ドラを見たいの。でも、それだとあなたの気が散るよね。だから、仕事部屋を作りましょう』、と。そのために、思い切って模様替えやリフォームができたらベストですよね。わが家でも、外出が難しい今は、家をどこよりも楽しく快適な場所にしたいと考えていて。そのためにお金を使うのは、すごく有意義じゃないかと思うようになったんです。最近は、リビングにハンモックを導入! 家族にとって新しいくつろぎスペースができました。

とは言え、模様替えやリフォームはなかなか難しい。そんな場合は、僕も愛用している、ワイヤレスのマイク付きイヤフォン・AirPodsと、パーツをつけることでサイドの視界を遮断できる集中メガネを、そっと差し出すことを提案します(笑)。これがあれば、目にも耳にも余計なものが入らなくなるので、特別な空間はなくても、仕事に集中できる環境を作ってあげられるはず。

ただ、僕は、このご時世、夫婦は物理的には離れてみるのもありかもしれないけれど、精神的にはひとつになれたほうがいいと思っているんです。やはり、まずは夫婦での話し合いが必要。その上で、相手を変えるのではなく、自分や環境を変える方法を見つけられたらいいですよね」

育児の大変さを、一人で抱え込むのはもったいない!

続いては、「育児編」。子どもは、もちろん愛おしい。でも、慌ただしい毎日の中では、ちょっとしたことで叱りすぎてしまったり、話を聞き流してしまったり……。あとから自己嫌悪に陥る、というのは、LEE世代の“育児あるある”。そこに、夫の協力不足などの問題が加わると、悩みはさらに複雑化。今は、SNSなどを通して他人の子育てぶりや暮らしぶりを知ることができるため、簡単に情報を入手することもできる反面、タイミングや受け取り方によっては自分の日常との差に落ち込んでしまうことも多いようです。

「自分の子どもが小学生になった今、ようやく思えるようになったのは、“育児が大変なのはいいことだ”ということ。育児が大変であればあるほど、子どもの成長は喜びになるし、子どもへの愛情は深いものになる。ただ、その大変さを一人で抱え込んでしまうのはもったいないと思うんですよね。育児のモヤモヤ・イライラは、夫にぶちまけてしまいましょう! 僕は、ぶちまけられました(笑)! 最初は『そんなに理不尽に怒らなくても……』なんて思っていたんですが、時間をかけて、喧嘩もして、妻の“家族より大切なものはない”という一貫した考えを、本当の意味で理解できるようになった気がします。『こんなこと分かってもらえるかな』『離婚問題に発展するんじゃ?』なんて不安もあるかもしれませんが、子どもというかけがえのない存在がいる以上、夫側も簡単には諦めたり投げ出したりしないと思いますよ。

それから、あとで自己嫌悪に陥ることをしてしまうのは、目の前のことでいっぱいいっぱいになっているのも原因だと思うので、客観的・長期的な視点を持つように意識してみるのもいいかも。例えば、自分がどんなことに腹を立てたのか紙に書き出してみるとか、自分の人生が終わる時にどうありたいか考えてみるとか。人の意見や方法は、参考にするのはいいけれど比較はしないようにすることも、大事なんじゃないでしょうか」



“今の自分だからできる仕事”が、絶対にあるはず

最後は、「仕事編」。LEE世代は、結婚や出産を経て、家庭に入ったり働き方を変えたりと、仕事面でも“第二の人生”を考えることを迫られる時期。夫婦問題や育児問題も絡み合い、専業主婦になった人からは『このままでいいのかな』、働くことを選んだ人からは『家庭との両立が難しい』というような声が寄せられます。妻側だけの悩みかと思われたこの問題にも、土屋さんは寄り添ってくれました。

「これは、立場や性別には関係なく生じる問題だと思いますよ。僕自身も、独身時代は仕事のことだけ考えていればよかったけれど、結婚して子どもも生まれてからは、なるべく早く帰って家事育児の分担をこなさなければいけなくなった。『全部が中途半端になる!』と思ってしまいそうになった時、“自分は大谷翔平だ”と考えることにしたんです(笑)。大谷選手は、投手としても打者としても活躍する二刀流。そのスタイルには賛否両論あるかもしれないけれど、みんな大谷選手のことは大好きだし、その存在は栗山英樹監督が言う通り“ロマン”なんですよね。僕たちも、既存の仕事の在り方にはまらず、自分にしか味わえない人生を追求するべきなんじゃないかな、って。

あとは、昔の自分と今の自分を比べないこともポイント。僕自身も、これを言葉にして本にも書くことができてよかったと感じているんですが……仕事に関しては、ピークは過ぎたと考えていいと思うんです。そうしないと、『あの頃みたいに働きたい、でもできない』と永遠に満足できなくなってしまう。これは残念なことですよね。僕たちは、一度、頂上まで登って、下山した。今後は、その過程で得たものを活かして、新しい道へ進むのか、また別の山に登るのかを考えていけばいい。専業主婦として誇りを持って家族のマネージメントという仕事をするのも、働き方を変えて次の挑戦をするのも、どちらも素敵だと思います。昔より仕事にかけられる時間は減っていても、そのぶん、知恵や経験は豊かになっているはず。“今の自分だからできること”は、絶対にあると思いますよ!」

力強いエールが、心に響いた人も多いのではないでしょうか。結婚、育児、人間関係……何かがちょっとうまくいかないと感じている人は、ぜひ『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』をチェック! 自分自身で問題を解決するヒントが、見つかるかもしれません。

RAG FAIR 土屋礼央さん

PROFILE●土屋礼央(つちやれお)1976年9月1日、東京都生まれ。2001年、RAG FAIRのメンバーとしてメジャーデビュー。2011年よりソロプロジェクト・TTREをスタート。音楽活動以外にも、ラジオ出演やコラム執筆など、多方面で活躍中。TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』他に出演中。最新著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が好評発売中。

藤本こずみ Kozumi Fujimoto

ライター

1979年、兵庫県生まれ。雑誌やWEBで、インタビュー、ライフスタイル、占いなどの記事を執筆。趣味は、テレビドラマ鑑賞&リラクゼーションスポット巡り。夫、長男、長女との4人暮らし。兵庫・東京の二拠点生活に挑戦中。

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