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飯田りえ

モンテッソーリ式子どもの見守り方に感動!世界的教育法のドキュメンタリー映画『モンテッソーリ 子どもの家』監督インタビュー

  • 飯田りえ

2021.02.18

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今をときめく著名人・世界的リーダーが受けていた教育

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画

シュタイナー、サドベリー、イエナプラン…。公的な学校教育ではなく、「第三の場所」として子ども主体の教育を育む”オルタナティブ教育”が注目されています。その中でも最も古くから知られているのがモンテッソーリではないでしょうか。イタリア出身のマリア・モンテッソーリが20世紀初頭に考案した教育法で、今では世界140カ国約30,000校で実践されています。LEE読者の方でもお子さんが通っている(もしくは通わせたい)方も多いのでは?

日本では藤井聡太棋士、海外ではAmazonのジェフ・べゾスやGoogleの創業者ラリー・ペイジ&セルゲイ・ブリン、マイクロソフトのビル・ゲイツやオバマ元大統領まで…!今をときめく著名人や大手IT創業者たちが幼児期に受けていたのがモンテッソーリ教育、と聞くと、やはり気になりますよね。

モンテッソーリって…実際、どんな教育なの?

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画

まずは「おしごと」をイメージするのではないでしょうか?
包丁やアイロンがけなど生活に根付いた練習から、数や言語、感覚…とジャンルは様々。たくさんあるおしごとの中から自分がやりたいことを選び、教師は個々の能力を伸ばすサポート役として一人ひとりと寄り添います。3歳〜6歳の異年齢でクラス編成されているのも特徴的です。

実は、私もモンテッソーリ幼稚園出身で、楽しく「おしごと」に取り組んでいたことを今でも覚えています。しかし、年長の時に引っ越しで、公立幼稚園に転園。これまで自分のやりたいことを自分で決めていたので、「どうしてみんなと同じことをやらなくちゃいけないの?!」と幼いながら抵抗していました(苦笑)。それでも、自分で選択して主体的に動くと言うことは今でも私の核となり、子育ての基盤にもなっています。

おしごとにハマる様子が一目瞭然!

一方で、子どもが一人静かにおしごとしている様子から、世の中的には「早期教育(もしくはお受験対策)」というイメージがあるかもしれません。でも、それだけで捉えていると非常にもったいないなぁ、と思います。幼少期は何か人に教えてもらう、と言うよりは、自分自身がやりたいことを自ら選び、熱中していく中で成長します。一見、難しそうなおしごとでも、本人的にはやりたいことを夢中になって取り組んでいるので、とにかく目をキラキラ輝かせて楽しそう。

そんな様子が垣間見えるドキュメンタリー映画「モンテッソーリ 子どもの家」が2月19日(金)から全国の映画館で公開されます。おしごとに熱中している様子、あと子どもたちを集中に促す先生の手腕が、まさに一目瞭然なのです。

ご自身がお子さんを育てる上でモンテッソーリ教育に出会ったアレクサンドル・ムロ監督は、フランスで最も古くからあるモンテッソーリ学校を2年3ヶ月にわたって撮影(最終的には国際モンテッソーリ協会の教師養成研修を受けるまでに)し、ドキュメンタリー映画に仕立てました。「ぜひお話を伺ってみたい!」と言うことで、フランスにいらっしゃる監督にオンラインインタビューさせていただきました。



モンテッソーリを学んだ監督へオンラインインタビュー

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画 監督

___子どもたちの成長を見守り続けるのは、非常に忍耐力が必要だったと思いますが、最も苦労されたのは?

アレクサンドル・ムロ監督:私はとても忍耐強い方ですが、自分が「こういうシーンを撮りたい」と思い、ずっとカメラを構えていても、なかなか思うようにその瞬間が撮れず、その時は苦労しました。思い描いているシーンがあっても、それはカメラが構えている場所よりもずっと遠くの方で起こっていて(苦笑)。それはフラストレーションが溜まりましたね。

___子どもは思っているように動いてくれませんからね…!

ムロ監督:マリア・モンテッソーリの書いた中で最も好きな本「The Secret of Childhood」があります。その中に「子どもはいつも私たち大人の計画に背くものなのです」とありますが、まさにその通りだと思います。

___監督がモンテッソーリ教育と出会って変化したことは?

ムロ監督:一番大きいのは、自分に自信を持てたことですね。私は子どもにはなんでも自分でやらせたいので、家族には「そんなこと子どもにやらせるなんて!」と言われていましたが、決して間違っていなかった。自分がやってきたことを肯定されて嬉しかったです。

__その様子は、映画の冒頭シーンにもありましたね。

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画

ムロ監督:あと、4歳から文字や数字を教えるのは早すぎるのでは?と初めは思っていましたが、子どものポテンシャルは想像以上に大きい。大人にとっては「子どもは小さな存在」と思われがちですが、そんなことは決してありませんね。大切なことに気付かされました。

__監督のお子さんは違う幼稚園に通ったそうですが、モンテッソーリ教育を受けさせたいと思いませんでしたか?

ムロ監督:もちろん行かせてあげたいと思いましたが、私が住んでいた地域になかったのと、学校によっては完全に私立なので学費も高い。あとは、教師が十分に訓練を受けておらず、モンテッソーリと言いながら、十分なモンテッソーリになっていないところがありますから。

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映画の中で出てくるクリスティアン先生は15年以上のキャリアがある経験豊かな先生です。(国際モンテッソーリ協会AMIの教師養成にも携わっている)彼は子どもたちを理解するために自分の学びも欠かさず、そして、いつもクラスを美しくパーフェクトな状態にして子どもたちを迎えています。

子どもたちの目を輝かせるシーンから、たくさんの学びがある

__監督が一番好きなシーンは?

ムロ監督:ジェロくんが入れものから入れものへとお米を落としているシーンがあるのですが、本人がすごく楽しそうで幸せそうで…大好きなシーンです。「手でモノを動かす」ことが、こんなにも喜びを感じて目を輝かせる表情をするんだ、と彼から学ばせてもらいました。

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画

あと、二人の子どもの関係が感動的でしたね。ジェロがオレンジジュースを作って女の子にあげたり、教材を一緒に使ったり、自発的に相手を助けてあげたるシーンがよかった。

__私たちも子どもたち同士の関わり方に感動しました。子どもたちや先生の声のかけ方が非常に素敵でした。

ムロ監督:手を後ろに回して待つことや、声のトーンを落として話すなど、クラスで過ごすときのルールがあります。子どもたちはそれをしっかり身につけているんですよ。

フランスの教育にまつわる問題点とは?

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画

__日本でもモンテッソーリはじめ、オルタナティブ教育が注目されていますが、従来型の教師主導型の公教育がほとんどです。フランスでは教育にまつわる中で、どんな問題がありますか?

ムロ監督:まず、教師と言う職業がなかなか認められない問題があります。給料も低いし、教師のための教育も質が低かったり、継続した研修がなかったり…、教師を支える側に問題があります。

あと、モンテッソーリなどを幼稚園で導入したいと考えても校長の同意が必要で、3つの学年を1つにまとめなければなりませんし、教材を買うためにはそれだけの資金がかかるので…、取り入れたくても取り入れられない。乗り越えなければならない問題はたくさんあります。

__やはり、どこの国でも同じような問題はあるのですね…。最後に、この時の撮影は2016年でコロナ前でしたが、今はどうやって作品作りを?

ムロ監督:次の作品では、日常生活の中での子どもがうける暴力をテーマに映画を撮っているのですが、人には会えないし、ホテルにも泊まれない、あらゆる施設やその家族にも会えない状態なので、撮影をストップさせて、今はとにかく本をたくさん読んでいます。あとは、女性の友人と一緒にフランス漫画を作っていて、私がシナリオを描いていますよ。

__世界中が大変な時期ですが、多くの大人がこの作品をみて、子どもたちへのまなざしがやさしくなればいいな、と思いました。ありがとうございました!

とにかく子どもを見つめる視点がやさしく、信頼して見守っている様子が伝わります。この目線を自分に置き換えて持ってみると、いつもだと見逃している子どもの小さな変化や、成長に気づかせてくれました。子どもとの関わり方、見守り方に悩み、わからなくなった時に、そっと寄り添って教えてくれる、そんな映画だと思います。モンテッソーリ教育に興味がある方だけでなく、子どもに関わるすべての大人に見てほしい作品ですので、ぜひ!

モンテッソーリ 子どもの家 場面写真 ドキュメンタリー映画

 

『モンテッソーリ 子どもの家』
配給:スターサンズ、イオンエンターテイメント
監督・撮影・録音:アレクサンドル・ムロ
日本語吹替:本上まなみ/向井 理
2021年2月19日(金)新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国公開
© DANS LE SENS DE LA VIE 2017

飯田りえ Rie Iida

ライター

1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。

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