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佐々木はる菜

性教育する際のリアルな疑問をサッコ先生に直撃!/【「小学生と考える『性ってなに?』」著者、高橋幸子先生インタビュー/後編】

  • 佐々木はる菜

2020.12.20

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大切とわかっていても、我が子に伝えるとなると戸惑いも出てしまう、心と体や「性」にまつわる話。

そんなテーマについて科学的にポジティブに伝えてくれる「サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える『性ってなに?』」の著者であり、産婦人科医で性教育の普及のため尽力されている高橋幸子先生(サッコ先生)へのインタビューを前編に続きお送りしています。

「サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える『性ってなに?』」書影

幼いうちから性教育をするメリットや、早いうちに正しい知識を伝える必要性などお伺いしてきた【前編】に続き、【後編】では、親から子どもへの性教育について、実際にどんなふうに伝えれば良いかなど、より具体的なアプローチをお伺いしていきます。

サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える『性ってなに?』」を読む子どもたち

8歳5歳兄妹と共に性について話す中で出てきたリアルな疑問についてもお答えいただきました!

これまで幅広い年齢のたくさんの子どもたちに実際に性の話をしてきたサッコ先生だからこそ答えられる、子ども達の未来に寄り添う言葉たち、たっぷりとご紹介していきます!

子どもたちと読んで良かったポイントは?

小学校低学年でも理解できる読みやすさ

日本の学校教育では盛り込まれない、ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を参照した内容ですが、「からくん」「ここちゃん」というふたりの小学校4年生がサッコ先生と共に学ぶという親しみやすいお話。漢字には全てルビがふってあり、子どもにもわかるシンプルな言葉で書かれているため、お子さんだけでも読みやすいと思います。

小学生男子への性教育

前編でお伝えした通り、まず自分ひとりで楽しく読み終えた8歳息子は、私が取材でお会いできると知ると、「サッコ先生にお手紙を書く!」と、面白くて素敵な本を書いてくれた御礼を伝えることにしました。

高橋幸子先生インタビュー

お会いしてすぐ子ども達と読んだ話をしたところ、息子たちの感想や反応を気にしてくださっていたサッコ先生。お手紙をお渡しすると、とっても喜んでくださいました!

内容はとても具体的でわかりやすい

まずは体の器官の名前やプライベートゾーンについての説明、そして「おへそのひみつ」という話をきっかけに、赤ちゃんがどうやってできるかや思春期の体の変化、そして異性への興味や性の多様性といった心の話、最後に「困ったときには」という形で性被害や病気への心構えについても触れられています。

例えば「性器の正しい洗い方」の説明や、精通、勃起、包茎、月経、おりもの、セルフプレジャーについてなどを、具体的かつ子ども達にもわかる言葉で丁寧に伝えてくれる内容でした。

幼いうちから学ぶ大切さを実感

親が助けられる、「性教育の教科書!」

産婦人科医で科学者でもあり、たくさんの子ども達に実際に性教育の授業をされてきたサッコ先生による温かな言葉が詰まった本は、まさに「性教育の教科書」!
正しい知識を正しく伝えてくれるこの1冊があると、子どもから何か性に関する質問をされた時も、その正しい説明を元に落ち着いて話をすることができます。

体の基本、性器について

「性器が特別なのではなく、体の他の部分と同じように大切な器官のひとつ」。当然のことですが、妙に特別扱いしてしまうことで逆にうまく伝えられないことがあったと感じました。(『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』より)

子ども達の理解という面ではもちろんですが、私が素晴らしいと感じたのは、親として「こんなふうに話せばいいんだ」と学べたことです。
実際、男の子の体の変化についてよくわかっていない点もありました。もちろん夫に委ねても良いのですが、男の子の体と心がどんなふうに成長していくかという知識は、少し先の未来に向けて私自身の心づもりにもなりました。

「赤ちゃんってどうやってできるの?」の答え方って?

まだ子ども達と3人でお風呂に入ることが多い我が家ですが、体を洗う時などに自然な流れで本から学んだ話などをしています。
ただ、時にはどう答えて良いか悩む質問を投げかけられることも…そんな時にどう答えれば良いかというサッコ先生からのアドバイス、まとめてご紹介します!

高橋幸子先生

Q:「精子をどうやって女の人の体の中に入れるの?

A:「男性の体の中には赤ちゃんのもとが半分あって、女性の体の中にも赤ちゃんのもとが半分あって、そのもとを男性がペニスを使って女性の膣の中に届けてあげると、女性のおなかの中で赤ちゃんのもとともとが一緒になって赤ちゃんになり、それが大きく育ったら生まれてくるんだよ」と伝えています。おそらく、快楽を伴うといった話が伝えにくさを感じる理由のひとつではないかと思うので、私はいつも、片手で丸を作ってその中に1回人差し指を入れる動作をしています。そして併せて「例えば鮭は、メスが産んだ卵の上にオスが精子をばーっとかけていくけど、人間はこの人!って決めた相手に確実に精子を届けるために、体の中に直接入れるんだよ」などと話してみると、伝えやすいのでは。
また、「セックスって気持ちいいの?」と聞かれた時は、この人と決めた相手とならば気持ちいいよと伝えても良いのではと思います。

Q:「赤ちゃんが出てくる穴を見たいから、ママのを見せて」(これは、去年小1だった息子から筆者が真面目に頼まれたこと。もちろん断りましたが、先生にお話してみることに。)

A:これは、親子でもプライベートゾーンは守るものという話をすれば通じると思います。他にも「パパとママもセックスしているの?いつどれくらいしているの?」といった質問も同じ類。例えばふたりお子さんがいるならば「あなたたちが生まれているということは2回はしているけれど、あとはプライベートなことだから話さないよ」と伝えてみてはどうでしょうか。

Q:「プライベートゾーンって『エッチなところ』でしょ?」

A:大抵の場合は大人の反応を面白がっている場合が多いので、どうして『エッチ』だと思ったか逆に質問してみるといいかもしれないですね。

Q:「どうしてプライベートゾーンを触ろうとする人がいるの?」

A:伝え方が難しい質問ですよね。みんな普通は守って隠している場所だからこそ、逆にどうしても気になって見たくなってしまう人もいる。あなただけの大切な場所だから、嫌だと思ったらはっきりNOと言ってね。そして怖いと思ったらちゃんと周りに相談してという話を繰り返し伝えてあげてください。

「正しい知識」のひとつとして、淡々と伝えられるように

これまではどこか恥ずかしさがありましたが、「幼いうちから伝えた方がいい!」と心から思えたこと、そしてサッコ先生の本やお話のおかげで、子ども達に対して「大切なことなんだよ。疑問や困ったことがあったら、いつでも何でもママかパパに聞いてね」と伝えられるようになりました。

「お医者さんは体の科学の専門家なので科学者でもあり、みんなは『からだこころ研究所』の科学者、サッコ先生の助手!」という説明は、本を読んだ息子にとっても面白く感じたようでした。(『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』より)

子ども達もまだ年齢が幼いこともあり、「ふ~ん、そうなんだ!」「面白いね!」と、他の学びと同様に素直に聞いてくれます。中学生など大きくなってからだとやはり、親から性についてこんなふうに話すことは難易度が高くなるだろうなと感じます。

「子どもから質問された時こそ、大切なことを話すチャンスだと思います」と、私の質問にも親身に答えてくださったサッコ先生。我が家も折に触れてこれからも話し続けたいと思います。

親も関心を持ち、共に学ぶ大切さ

親の私も、性についてもっと学ばなきゃ!

体について学んだあとは、「ところで『性』ってなんだろう?」という問いかけから始まる「心」の部分についてのお話が始まります。深いテーマについてわかりやすく説明されているからこそ、大人の私たちも改めて様々なことを考えさせられるパートだと感じました。(『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』より)

本や今回のインタビューを通して実感したのが、私自身の知識不足です。
中でも心に残ったのが「性の多様性」についてで、本の中で書かれていた「性には4つの側面がある」という伝え方がとてもわかりやすく非常に勉強になった一方、「例えば我が子が同性婚を望んだ時に受け止められるだろうか」と思ってしまったことで気づかず持っていた偏見などを省みる機会にもなり、どんなふうに自分をアップデートしていくべきか、サッコ先生に伺ってみたところ、「子どもの権利」という視点のお話をしていただきはっとさせられました。

「私も息子が通っていた保育園の園長先生に言われたのですが、『子育ては3歳まで』で、後は神様からの大切な預かりものとして大事に育てる。自分のものではなく、いつ自分の手元を去って行ってもおかしくなくて、その子に主体の権利がある。そう考えると、お子さんが誰とパートナーシップを結ぼうと親が関与することではない…もちろん、なかなかそう簡単にはいかないと思いますし難しい問題ですが、ただ私自身もそういう考え方を教えてもらっておいて良かったなと思っています。」

そもそも、セックスって何歳からしていいの?

似たような例として挙げてくださったのが、スウェーデンでは15歳を「性交同意年齢」と定めているというお話でした。子どもが性行為をすることも「子どもの権利」のひとつとして捉えられており、だから15歳までに性についてしっかり学ばせるし、15歳になったら避妊や性感染症の検査を無料でできるなど、年齢の線引きが明確だからこそ適切に対応できている側面もあるといいます。
日本はそういった部分が曖昧なため困っている子ども達に正面から手を差し伸べられないところもあり、今その法整備が行われているところだといいます。

「保護者の皆さんも是非そういうニュースなどに興味関心を持ち、どうすれば子ども達を守って行けるのか考えてみてほしい。まだお子さんが小さい場合も、思春期を見据えて今の幼少期の子育てをしてほしいと感じます。」

今の時代に合わせて自分もアップデートしていきたい

著書の中で紹介されている、サッコ先生オススメの本や情報サイトなどもチェックしていますが、中でも私が一番オススメしたいのが、先生が監修もされているAbemaTVドラマ「17.3 about a sex」です。

タイトルの「17.3」は女性の初体験の世界平均年齢だそうで、青春恋愛ドラマ的なときめきもありつつ、若者たちが抱える性の問題を真正面から描いています。
セックスなどだけではなく、私自身の理解が追い付いていない「性の多様性」などについてもしっかりと触れられています。どのテーマも、主人公である3人の女子高生が共に悩み学びながら成長していく過程で自然に考えを深めていくことができ、若い世代だけでなく全世代に観ていただきたいドラマだと感じています。

本の中には、周りの大人にインタビューしてみよう!というワークもあり、他にも「生まれたときのことをリサーチしてみよう!など」様々な「MISSION」が用意されています。本に直接書き込むことができるので、自分だけの“教科書”を作っていける楽しみも!(『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』より)



性教育は、より良い人生のための「ライフスキル」

たくさんの子ども達と接してきたからこその想い

日本でも「性教育」に対する意識は少しずつ高まっており、これまでもそういった本を何冊か読んできました。
ただ今回これだけ心を動かされたのは、病院や学校でたくさんの子ども達と実際に接してきたサッコ先生の言葉から「子ども達を守りたい、より良い人生を歩んで欲しい、そのために正しい性教育が必要だ」という熱く温かな想いを強く感じたからだと思います。

人との違いや多様性といった部分も含めて、自分を認め、好きになり、大切にするための知識を伝えてあげること。それによって、周りのことも自分同様に大切にできるようになること。
そして病気や犯罪といった大きなリスクや危険から身を守る力を育み、緊急時には助けを求めることのできる環境を作ってあげること…全ては、これからの時代にますます求められることだと感じています。

サッコ先生から息子へのお返事

息子のとっておき、LEE付録の「鬼滅の刃」一筆箋に書いたお手紙。

後日、なんと息子宛にサッコ先生からお返事をいただきました。
素敵な本を書いてくださった御礼を伝えると共に、お医者さんであるサッコ先生がなぜこういった本を書かれたのか伺いたいと考えた息子。ただ息子自身もまさか直接お返事をいただけるとは思わず、驚き、喜び、何度も読み返していました。

お返事には「たくさんの子どもたちに伝えたいことがあったからこの本を書いた」という先生の想いがつづられていました。
大学病院という場所についての説明、そしてそこでお医者さんとして難しい患者さんたちに出会って、幼いうちから自分の心と体を大切にする大事さを伝えたいと感じたこと。サッコ先生が直接伝えられる子どもたちは限られてしまうけれど、本にすればより多くの子どもたちに伝えることができると考えたこと。そして出版社の方や読んでくれた息子にも感謝の言葉が書かれており、自分も周りも大切にできる素敵な大人になってね!とメッセージがありました。

子ども達の未来のために行動を止めない姿と、そんなお忙しい中でも目の前のひとりひとりに真摯に向き合っていらっしゃることを改めて感じ、一緒に読んでいた私は涙を堪えきれずしばらくこっそり泣いてしまいました…

「性教育はライフスキル、生きていく上で大切な知恵やマナー」

子ども達がのびのびと成長していくために、是非この本がより多くの方のもとに届くことを心から願っています。

佐々木はる菜 Halna Sasaki

ライター

1983年東京都生まれ。小学生兄妹の母。夫の海外転勤に伴い、ブラジル生活8か月を経て現在は家族でアルゼンチン在住。暮らし・子育てや通信社での海外ルポなど幅広く執筆中。出産離職や海外転勤など自身の経験から「女性の生き方」にまつわる発信がライフワークで著書にKindle『今こそ!フリーランスママ入門』。

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