丘田ミイ子

母になっても「自分」でいい。そう教えてくれたある演劇の取り組み【親子で劇場へ通い続けた私の7年間/後編】

ライターの丘田ミイ子です。
前回は、子どもがいても観劇を諦めない!【親子で劇場へ通い続けた私の7年間/前編】として、第一子の娘が生まれてから5歳までの年月を振り返りながら、劇場の託児所の活用術子どもの成長とともに楽しんだ親子観劇の記録をお伝えさせていただきました。

【後編】となる今回は、第二子の妊娠を機により感じるようになった母としての生きづらさと、自分の時間や生き方との向き合い方に焦点を当て、そんな時期に大きなパワーをもらった演劇についてご紹介をしたいと思います。

このコロナ禍の折、観劇へ行くのは不安という方も多いと思いますが、全ての人が心から安心して劇場の椅子に座れる日に備えて、今だからこそ伝えたい想いをのせて引き続きお送りしたいと思います。

今の生き方を固めてくれた女優さんたちとの出会い

(写真右から)パショナリーアパショナーリアを主宰する町田マリーさんと中込佐知子さん 撮影:近郷美穂

「母になっても演劇をあきらめない」という私の決意がより確かなものになったのは、2017年、第二子を妊娠中のこと。「2人いると、さすがにこれまでの頻度での観劇は厳しいかも」と弱気になっていた矢先でした。

クラウドファンディングのサイトで、舞台や映像で活躍する女優の町田マリーさん中込佐知子さんが「家庭と演劇の両立」を掲げて立ち上げた「パショナリーアパショナーリア」という団体を知ったことがきっかけでした。旗上げ公演にあたり、公演の託児費用と小中高生のチケット料金無料化を目指すプロジェクトは、長年自分自身が悩み、そして願い続けたことそのものでした。ご自身も母としての顔を持つお二人が演劇から世の中を変えようするそのパワーに心を揺すぶられ、迷うことなく参加をしました。

そんな社会へのメッセージが込められたプロジェクトを成功させた旗揚げ公演『絢爛とか爛漫とか-モダンガール版-』は、昭和初期の東京で文筆家を目指す4人の女性の物語でした。仕事と結婚、友情に恋愛、そして人生に迷う赤裸々なその姿は、今を必死に生きる私たちにそのまま重なる普遍的で温度感のあるメッセージが込められているように感じました。

『40才でもキラキラ!』 撮影:近郷美穂

その後のパショナリーアパショナーリアの公演も全て観劇していますが、毎回胸を強く打たれるのは、“親子演劇”にとどまらない工夫の連続です。あくまで母へ捧ぐ演劇でありながら、それを遂げるべく、同行する子どもを飽きさせないための演出がそこかしこに仕掛けられ、45分で大人と子どもの心をそれぞれ違ったアプローチで掴むという至難の技を個性豊かな演者さんたちが愉快に成し遂げて行きます。

『6姉妹はサイコーエブリデイ』 撮影:近郷美穂

家庭と自分の狭間で戦う女性たちの葛藤を描いた物語を進行させながら、親子で笑う瞬間も散りばめられた演劇。これまでに見たことのなかった演劇の形。それらは仕事と育児の傍ら、自分を諦めないことに奔走する私生活と重なり、笑いながら泣けるような瞬間の溢れる時間でした。自分の生き方そのものを肯定してくれるような作品に出会えたこの時、演劇を愛する自分を諦めずにここまできて良かったと心から感じました。

ひとりの時間を過ごすこと、”自分”として生きることに前向きでありたい

小劇場の見学をさせてもらった時、特別に入らせてもらった照明ブースより

私たちは親子であるだけで別の人間です。子どもが観たいものと私が観たいものも当たり前に違います。だからこそ、同じ気持ちは分かち合って、違う感覚を面白がって一緒に生きていけたらいいなと思います。

子どもと一緒に観たいもの、一人で観たいもの。愛する子どもと、子どもよりも付き合いの長い自分とどう手を取り合って生きていくか。いつしか私の観劇には、そんな人生のテーマが宿るようになりました。初めての親子演劇で「じかんどぼろう、こあいねえ」と言った娘は、今年小学生になりました。多くの演劇に設けられる「未就学児NG」という壁を突破する年齢になり、ついに隣り合って劇場の椅子に座ることのできる今日がやってきました。

今、これを読んでいる人の中には、妊娠中や出産したばかりの方、まだまだ手のかかるお子さんのいる方もいらっしゃるかもしれません。そんな時期だからこそ、自分と自分の挟み撃ちに遭ったとき、ひとりの時間を選ぶことに前向きであってほしい。

ひとりになりたい自分を抱きしめ、人や芸術の力をかりながら、少しでも楽しく過ごしてほしい。そんな願いを込めて、このコラムを演出家・平田オリザさんの言葉で結びます。多くの母が、自分を諦めることなく、今日より豊かな明日を生きていけますように。

「子育て中のお母さんが、昼間に、子どもを保育所に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指をさされない社会を作ること」
(『下り坂をそろそろと下る』/講談社より抜粋)

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