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【がん治療Q&A】早期緩和ケアとは?医師に痛みを伝える際のポイントは?

  • LEE編集部

2020.11.04

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「一般的ながんの情報は数十年前からアップデートされていない」とがん専門医の勝俣範之さん。

経験者や専門家に聞いた、がんになる前に知っておきたい向き合い方。今回は、「早期緩和ケア」について、お話をうかがいました。

この記事は2020年7月7日発売LEE8月号の再掲載です。


勝俣さん・桜井さんがレクチャー
早期緩和ケアとは?どういうものですか?

教えてくれたのは・・・
日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授 勝俣範之さん

日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授 勝俣範之さん

腫瘍内科医としてがん患者の治療、悩みの相談に乗る。日本の抗がん剤治療の第一人者。共著『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』(ダイヤモンド社)では、科学的根拠に基づいた効果のあるがんの標準治療法を紹介。

キャンサー・ソリューションズ(株)代表取締役 桜井なおみさん

37歳で乳がんになり治療と仕事の両立が困難に。経験を元にがん患者の就労を支援するCSRプロジェクトを開始。その後キャンサー・ソリューションズを設立。著書に『あのひとががんになったら―「通院治療」時代のつながり方』(中央公論新社)。

緩和ケアというと、もう助からない患者の終末期医療、ホスピスという印象があります。本来の緩和ケアとは、一体どんなものなのでしょうか?

緩和ケアには誤解が多く、抗がん剤などの薬が効かない末期がんの方へのケアだと思っている人がまだまだ多いです。(勝俣さん)

「最近の常識は、積極的な治療と並行して行うもの。緩和ケアも、手術、放射線治療、抗がん剤の3つと並んで、4つ目の標準治療と考えていいと思います。
緩和ケアは緩和支持療法とも言い、抗がん剤の副作用を抑えることも含めた、患者さんのQOLを高めることが主目的です」(勝俣範之さん)

緩和ケアは痛みをやわらげるケアなので、終末期だけに限りません。(桜井さん)

「治療をやめた後ではなく、むしろ抗がん剤などの治療をできる限り無理なく続けるために、取り入れるべきだと思います」(桜井なおみさん)

緩和ケアで痛みを取ることで生活は変わりますか?その必要性とは?

患者のQOLを上げるためには、痛みを取ることは必須。(勝俣さん)

「それだけではなく、緩和ケアで痛みやつらさが軽減されると、延命にも効果があるのではという世界の研究もあります。がんとうまく付き合う、共存するために欠かせないと思います」(勝俣範之さん)

歯が痛いと仕事ができないように、痛みはパフォーマンスを下げます。(桜井さん)

「がんになっても仕事を続けるうえでも、緩和ケアはとても大事です。
体の痛みはしっかり取っていくべきだし、心の痛み、心配がある場合も遠慮せずに緩和ケアの専門医に相談してほしいですね」(桜井なおみさん)



がん患者が緩和ケアを受ける際の心得や、痛みを先生に伝える際のポイントはありますか?

我慢が一番よくないので、痛みの症状は隠さずに医師に伝えてください。(勝俣さん)

「日本人は控えめでなかなか正直に伝えられないことが多いのですが、それは忙しくて言いにくい雰囲気を作っている医師にも問題があると私は思っています。
主治医に遠慮することはないと思いますよ。特に抗がん剤は医師が処方する薬の中で最も副作用が大きく、副作用で亡くなるケースもあるのです。
副作用の早期発見、早期治療がマストなので、痛みはすぐに相談しましょう」(勝俣範之さん)

最近では、手術で入院した際などに緩和ケアの先生が病室に来てくれることも多いと思います。その際には、かっこつけなくていいので、痛みの状態を詳しく伝えること。(桜井さん)

「チクチク痛い、ズキズキ痛い、こんなことをしたときに痛いなど、ここが痛いあそこが痛いと思いつくままに話してください。
私の場合は、手元の雑誌に載っていた人体解剖図を見ながら、ここがこう痛いと伝えていましたよ。手術で切った場所ではなく背中が痛くて不思議だったのですが、実は神経がつながっていたことが判明。
聞いてみるとわかることも多く、痛む理由を聞くだけで安心できることも。正確に伝えれば、痛み止めなどの対処もスムーズです。
体の痛みだけではなく、眠れない、気持ちがざわざわするなど心の症状も、見過ごさないでください。
日本人は我慢強く、痛みがあってこそ治療効果が高い、痛みを乗り越えるといいことがあるなどと考えがちですが、そんなことはありえません!
経験しなくていい、不必要な痛みもたくさんあるので我慢は禁物です」(桜井なおみさん)


イラストレーション/二階堂ちはる 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号『がんと暮らす』の再掲載です。

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