がんと暮らす

橋本奈美子さんインタビュー【後編】自分なりに納得できる方法で乗り越えて

LEE編集部

かつてLEEで活躍していたモデルの橋本奈美子さん。
2018年に乳がん診断を受けた橋本さんの、「読者の皆さんに闘病のありのままを伝えたい」という言葉から、がんとともに暮らしていくこと、また、がんの後も続いていく人生について、考えてみました。

がんとともに暮らしていくこと【前編】はこちら
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号の再掲載です。


モデル橋本奈美子さんインタビュー
がんとともに暮らしていくこと【後編】

橋本奈美子さん

モデル 橋本奈美子さん

1975年生まれ。10歳、2歳の2人の男の子の母。LEEなどのモデルとして活躍していたものの、33歳のときに第1子の妊娠、その後の出産を機に休業へ。育児に専念する。42歳で第2子を出産後すぐに、左胸にしこりを見つけて、乳がんが発覚。

私はそうはなれないかも……がん経験者の本に違和感

取材中、橋本さんが何度か口にしたのが「まだきちんと乳がんと向き合えていない」「考えるのが怖い」ということ。その心の葛藤が、あまりに大きいことがうかがえます。

「向き合うためにがん患者の会などに参加して、経験者の話を聞いてみたら?とすすめられることもあるし、実際にがん経験者の本を読んでみたりもしたんです。

多くの本には、がんになって周りにいる人のありがたみがわかった、がんになったことには意味があった、気づいたら空が青かった……などと書かれている。正直、空が青いって?と共感できませんでした。

自分はこの人たちのようになれるのか、もしかしたらなれないかもしれない。そう思うと、不安しかない。前向きになりたい気持ちはあるんですけどね。やっぱり自分で考えて乗り越えるしかないのかなと思っています」(橋本奈美子さん)

橋本さんは、左胸の全摘手術と同時に乳房再建手術も行いました。
これまでであれば、シリコンパッドを入れて再建できるはずが、シリコンパッドが輸入禁止となり、エキスパンダーを入れたままで、手術もいまだ途中。「左胸がない」ことへの喪失感も大きいようです。

「胸を切ったことはやっぱり大きな変化だし、うまく言えないのですが、女性でも男性でもないような、不思議な感覚があります。

バランスを整えるためには、妻でもお母さんでもない、自分自身と向き合わなければいけないのかなと。

なくなった胸を何か別のもので埋めないと、強くなれないし、本当に笑顔にもなれない。そんな気がしているんです」(橋本奈美子さん)

左胸がなくなり、大きな喪失感。何かで埋めないと、心から笑えない

なくした左胸への思いに突き動かされるように、少しずつ、自分なりの方法で動き出しているという橋本さん。

「まずはモデル時代にお世話になった人たちと疎遠になっていたので、その人たちに会おうと。

きちんと挨拶したい、後悔したくないと思ったのは、間違いなく乳がんになったからだと思います。その縁で実現した今回の取材は、私にとって大きな一歩です。

一方で、人付き合いは難しくて、昔からの友達やママ友が、私の病気を知ってあまり悩み相談などをしてくれなくなったんです。連絡も減った気がします。

『私の悩みなんてしょぼい。奈美子ちゃんのほうがもっと大変なのに』なんて本音を聞いて、落ち込むこともまだまだありますね」(橋本奈美子さん)

友人の間では聞き役が多かったのに、乳がんになったら悩み相談や連絡がぐっと減り寂しく思うことも。「病気になる前と同じように話してほしいですね」(橋本奈美子さん)

治療中に猛練習して編み物の資格を取得

また、乳がんになる前から続けていて、資格取得もしたという“編み物”が治療中、現在に至るまで心の支えに。

「以前は、家族が寝ている早朝に早起きをして編み物をすることが唯一の息抜きでした。静かな空間で編み棒がカチカチとぶつかる音が好きで、聞いているとストレスがサーッと消えていくようで。師匠について必死に練習して、苦手な計算、製図の勉強もして資格を取得しました。

資格は乳がんになってからのチャレンジだったので、師匠には今はあきらめたらと言われたのですが、最終的には師匠も教室の方々も支えてくれて、私はひとりじゃないんだと思えた。編み物をしていると乳がんのことは忘れられるし、前へ進めたような気がしました。

最近は、編み物を使ってアクセサリー作りをしていますが、再会したモデル時代の仲間の協力で、カタログを作ったり、そのための撮影をしたり。委託販売も始めて、いろいろとやりたいことがあるので楽しみです」(橋本奈美子さん)

「モデルはかっこよくて憧れの中村寿美ちゃんに依頼。写真で蝶をあしらったり左胸にこだわってしまう部分も。左はフランスに昔からある技法でレース糸を使ったイヤリング」(橋本奈美子さん)

お手製のイヤリングは人気のヘアサロン「ANNE HAIRDESIGN 中目黒」にて、委託販売をしてもらうことに。期限は特になく、サロンで展示・販売しています。

自分なりに納得できる方法で乗り越えて

「今後は、機会があればモデルの仕事も再開したいと思っています。子どものためにお金を残したいといった理由ではなく、心の自立のためにも、自分でお金を稼ぐことは大切な気がします。『この人は乳がんだから』というイメージも、払拭していけたらと思いますね。

私がしていることは遠回りかもしれませんが、本で読んだ誰かの方法ではなく、自分なりにやれることを、少しずつ積み重ねて。

乳がんを受け止めるってどういうことかまだ正解はわからないけれど、自分が納得できるやり方で、前へ進んでいきたいと思います」(橋本奈美子さん)

「長年の親友である五明祐子ちゃん。いろいろ気にかけてくれて、このときもスキンヘッドから久々に伸びた髪をカットしたいと思い、サロンに付き添ってくれました」(橋本奈美子さん)


イラストレーション/二階堂ちはる 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年7月7日発売LEE8月号『がんと暮らす』の再掲載です。

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