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子どもが英語を好きになる方法

【子どもの英語学習】幼児期は日本語を伸ばすことが最重要!親ができることは?

  • LEE編集部

2020.08.17

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教室や通信教材の増加など、ますますヒートアップする子どもへの英語教育。小学生から英語の授業が必修となり、焦るママも多いのでは?

育児真っ最中のLEE100人隊の3人が、英語教育の専門家・鳥飼玖美子さんに、英語学習にまつわるさまざまな疑問や噂をぶつけました!

この記事は2020年2月7日発売LEE3月号の再掲載です。


英語教育の専門家 鳥飼玖美子さんに質問!
英語学習はいつ始めるべき?親ができることは?

(LEE100人隊 右から)
LEE100人隊TB 季絵さん
5歳の女の子、1歳の男の子のママ。自身も語学が好きで、高校では英語コースを選択、大学ではドイツ語を学んだ経験が。

LEE100人隊No.039 りここさん
10歳、3歳の男の子のママ。3歳の息子は最近まで英語の保育園へ。英語教育に興味はあるものの何から始めるか迷い中。

LEE100人隊TB mieさん
11歳の女の子、5歳の男の子のママ。最近、娘が英語を習い始めたものの、中学校目前で親のかかわり方が気になる!

「英語は小さいときから始めたほうがいい」は誤解

mie うちは11歳の女の子と5歳の男の子がいるのですが、娘は英語塾、息子は幼稚園で英語と触れ合う時間があります。

季絵 私は自分が中学校の授業で英語が好きになり、英語コースがある高校に通ってある程度話せるようになったこともあって、そこまで早くから英語を始めなくてもいいかなと。5歳の娘と1歳の息子にはまだ何もさせていません。

りここ わが家には10歳と3歳の男の子が。下の子は引っ越す前の2歳までは英語の保育園に通っていて。常に外国人の先生がいて、保育園ではほとんどの時間で英語を聞いて過ごしていました。

鳥飼 どうしてその保育園を選んだのですか?

りここ 小さい頃から英語に耳を慣らしておいたほうがいいかなと思って……。

鳥飼 英語を始めるのは早いほうがいいというのは、実は、研究や調査では立証されていないんです。
言葉を習得するためには10歳くらいまでが大事だといわれますが、それは英語などの外国語ではなく母語の話。それが誤解されて伝わってしまったようです。
英語はさておき、幼い子どもにとって最も大事なのは母語。思考のベースとなり、いずれ英語を学ぶ際の基礎にも。たとえるなら、母語はOSで、外国語はアプリなので、基本ソフトであるOSがしっかりしていないと、アプリをいろいろ入れてもうまく動かないんです。
日本語がしっかり確立していると、英語を学んでも抽象的なことを理解したり、話したりがスムーズにできるようになります。

りここ そうなんですね!3歳を過ぎると、LとRの発音の違いなどが聞き取れないと聞いて焦っていました。

鳥飼 確かに、発音は小さい子どもほどすぐに覚えます。親の海外赴任などで幼い子どもが海外で生活すると、大人が驚くほどすぐに日常会話は話せるようになる。
でも、その時点で母語が身についていないと、何年たってもそこ止まり。学校で学習のために使う英語や、将来仕事で通用する大人の英語はなかなか習得できません。

mie 英語を学ぶために、まずは日本語が大切だなんて意外でした。子どもが母語をしっかり身につけるために、親ができることはありますか?

鳥飼 子どもは、大人の言葉を聞いてたくさん吸収しています。特に親を通して、社会でどう言葉が使われるかを学びます。
お母さんは先生と話すときはこういう言い方、ママ同士で話すときはこう、私に話しかけるときは……と理屈ではなく学んでいるので、ある程度意識をしつつ、たくさん子どもに話しかけて会話をしましょう。
また、絵本の読み聞かせも大事。子どもは、気に入ると同じ絵本を何度も「読んで」と言いますよね。大人は「また同じもの?」と思いますが、何か子どもが気になることや、言葉が身につくきっかけがあるのかもしれない。できる限りつき合ってほしいなと思いますね。

小学校の英語が始まり習得語数がぐんと増える

りここ 焦らなくてもいいということはわかったのですが、小学校でも英語の授業が始まると思うと心配になります。

鳥飼 確かにそうですね。これからは否応なしに小学校から英語が始まり、学校によっては1年生から英語活動、5、6年生では教科に。検定教科書を使って授業があり、試験をして、成績もつく。大変になるとは思います。

季絵 私たちよりも早く、小学生から英語を始めてどのぐらいの英語力が身につくのか……。親世代よりも英語ができるようになるのでしょうか?

鳥飼 今後は、英語の授業時間数も増えますが、習得語数がぐっと増えるんです。
今まで、中学、高校で約3000語だったのが、小学校で700語、中学校で1000語、さらに高校でも覚えて、最終的に5000語までもっていこうとしています。現状の3000語さえ大変で、高校に入る段階で英語嫌いになっている子も多い。現場の先生たちはかなり厳しいと考えています。
しかも、小学校では文法は教えず、定型文の暗記が中心。それでも疑問文も否定文も出てくるし、助動詞も使う。文法を教えないで覚えさせるのも無理があるのではないかという声もあります。

季絵 これで英語を話せるようになるのか、聞けば聞くほど戸惑います。

mie 子どもをサポートしたいけど、私も英語が得意ではないのでどうしたらいいのか……。

鳥飼 小学校では英語が専門ではない学級担任の先生が教えますから、学校側が焦ったり、うまくいかないこともあるかもしれない。
まずは親が冷静になって子どもを見守って。テストの結果だけ見て「どうするの、こんな成績で」などと子どもを責めないこと。少しのことですぐに英語嫌いになってしまいます。

りここ つい言ってしまいそう。気をつけないと!

鳥飼 小学校の英語の教科書にはQRコードがついて、スマートフォンで読み取ると発音が聞けるようなので、子どもが発音がわからないと言えば一緒に聞いたり、動画でネイティブスピーカーの英語を確認したり。文法がわからなくて混乱していたら、簡単な文法の本を読んでみたり。
親が教えなければ落ちこぼれると意気込まず、子どもと一緒に調べて学ぶ姿勢で寄り添って。小学生の間はできるだけ遊びにして「英語って楽しい」と思ってほしいと思います。



英語は目的ではなく手段。動機があれば話せるように

季絵 私は自分が英語が好きで勉強したこともあって、旅行などで使うぐらいなら、中学校の3年間で習う英語でなんとかなると思うのですが、いかがですか?

鳥飼 そのとおりです。小学校から英語は始まりますが、やはり子どもの英語学習のメインは中学校での英語。子ども時代から引き続き暗記力は素晴らしいし、そのうえ、ある程度は母語が確立している。
日本語ではこうだけど英語ではこう言うんだなとか、カタカナのあの言葉は英語だと違う意味になってしまうなど、自分で分析しながら吸収できる。中学で英語の基礎をしっかり身につけておくと、将来、英語が必要になったときに先に進むことができる。
本格的に英語を習得して話せるようになるのはそのときでも遅くないんです。

mie 先日ママ友から「高校受験のときに、英検準2級取れていないと推薦がもらえないよ」と聞いて、中学でそこまで!?

鳥飼 そんなことはないんですよ。英検は、本来は大学入試を受ける段階で準2級程度だといわれています。
テスト対策ばかりになっても本当の英語力は身につかないので、まずは親がそういった噂に一喜一憂しないで。社会、学校、親からのさまざまなプレッシャーで子どもは英語に苦手意識を持ってしまう。嫌いにさえならなければ、大人になって商社に勤めて海外勤務になった、理系だけど論文を英語で読みたいとなれば、子ども自ら英語を勉強します。
よくいわれますが、英語は目的ではなく手段。英語を使って何かしたいという動機づけが大事です。

mie うちの娘はまだ11歳ですが、ミュージカルの習い事をしていて。ミュージカルの本場は英語だし、英語が話せたら武器になると知って、勉強しています。

鳥飼 子どもが好きなことと英語が結びつくといいですよね。子どもが自発的にやりたいという動機づけがないと続きません。

季絵 子どもに留学させたい場合も焦らないほうがいいですか?

鳥飼 子どもが本当に行きたいと思ったときが行き時です。
言葉を身につけるには最低でも1年間は留学してほしいと思うのですが、その間、言葉が通じない、ホームステイ先の家族とうまくいかないなど泣きたいことが山ほど出てきます。
1年たたずに途中で帰ってきてしまうケースもあり、挫折感を味わうことも多い。やはり子ども自身に強い思いがないと。

りここ まずは親が冷静に判断することが大切ですね。

鳥飼 英語が話せると異文化への窓ができて視野が広がるし、特に英語でニュースが読めると取れる情報量や質が変わります。東日本大震災のときは、日本よりも海外のニュースのほうが具体的な原発の情報や危機的状況を伝えていたんです。
やっぱり英語が読める、話せるようになるのはいいことだし、おすすめはしたい。子ども自身がそれに気づくことができるように、親は押しつけないこと。英語が嫌いにさえならなければ、将来いくらでも取り戻せます。


撮影/細谷悠美 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2020年2月7日発売LEE3月号『子どもが英語を好きになる方法』の再掲載です。

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