飯田りえ

「しつけのため」と思ったその行動、実は体罰かも…?しつけ・体罰・虐待の違いとは【子どもへの体罰禁止が法定化】

少しずつ日常を取り戻しつつある今日この頃ですが、緊急事態宣言による外出自粛の期間は、家族全員がストレスを抱えながら家にこもらざるを得ない状況でした。この状況下で問題視されていた中の一つが、家庭内でのドメスティック・バイオレンス(DV)と児童虐待のこと。社会的な不安が拭えないまま、これから第2波、第3波がやって来ることを考えても…これは決して他人事ではなく、誰にでも起こりうることだと思います。そして、社会全体として、決して目をそらしてはいけない課題なのです。

4月から体罰禁止が法定化、何が 「しつけ」 で、何が 「体罰」 なの?

このコロナ禍であまりニュースに取り上げられていませんでしたが、児童福祉法などの改正により子どもへの体罰禁止が法定化され、2020年4月から施行されています。体罰は国の法律で禁止されているのです(これに伴い、体罰全面禁止国として日本も59ヶ国目になりました)。

そもそも、しつけと体罰、虐待の違いってなんでしょう。

虐待にまで至らなくても、自分が「しつけ」だと思っている行動も、日常的に度重なれば子どもにとっては苦痛なのでは…? イライラしてきつい言葉で怒鳴ってしまったり、普段はスルーできていることでもつい、くどくどと注意してしまったり…これって「体罰」? 混同している自分がいました。

そこで今、改めてしつけと体罰、そして虐待について考えておく必要があると思い、公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部 西崎萌さんにお話を伺いました。前後編でお伝えします。

西崎萌さん●1987年生まれ。大学卒業後、民間企業勤務、教員を経て大学院で教育学修士号取得。2017年4月セーブ・ザ・チルドレン入局。国内事業部子ども虐待の予防事業でたたかない、怒鳴らない、ポジティブな子育ての啓発活動や政策提言活動に従事。3児(小1、年中、1歳)の母。

子どもにとって苦痛で不快な行為は、どんなに軽くても全て「体罰」です

__今回のコロナの影響で虐待などの問題が懸念されていますが、そもそも、しつけや体罰、虐待の違いはどう捉えたら良いのでしょうか?

西崎萌さん(以下、敬称略):親が「しつけ」のためだと思っていても、子どもに痛みや苦しみを与え、身体になんらかの苦痛や不快感をもたらす行為はどんなに軽いものであっても「体罰」に該当します。体罰は決して許されない行為で(親以外の監護教育権を持たない人も含めて)すべての人に該当します。

__どんな軽いものでも…ですか。例えば?

西崎:子どもがいけないことをしたら、手の甲を叩く、もしくは、お尻を叩く…日本では昔からよく見る行為だと思いますが、これは体罰です。子どもに不快感を与え、罰として与えているので、どんなに軽くても体罰に該当します。

___なるほど…!ではしつけはどう言う定義でしょうか。

西崎:子どもを尊重しながら、社会で生きていくための必要なことを教えることです。暴力を使わず、わざと子どもを傷つけなくても、子どもを尊重しながら話し合うことができる。これが”しつけ”だと考えています。

具体的な「体罰事例」を見ると…ハッとさせられた

__厚生労働省のHPに具体的な体罰の事例が載っていましたが、正直、ハッとされられました。

これらは全て「体罰」です

  • 言葉で3回注意したけどいうことを聞かないので頰を叩いた
  • 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
  • 友達を殴ってケガをさせたので、同じ王に子どもを殴った
  • 他人のものを取ったので、お尻を叩いた
  • 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
  • 掃除をしないので、雑巾を顔に押し付けた

子どもの心を傷つける行為

  • 冗談のつもりで「お前なんて生まれてこなければよかった」など子どもの存在を否定するようなことを言った
  • やる気を出させると言う口実できょうだいを引き合いにしてけなした

西崎:ちなみにどんなことにハッとしましたか?

__叩いたりつねったりが体罰に当たるのはわかりますが、やはり言葉でしょうか。「きょうだいと比べる」とか…私も普通に言われていたし、今も言っている気がします。

西崎:私も3人の男の子を育てているので、自分が受けた教育や子育てを自分の子どもにしてしまう気持ちもよくわかります。ただ、今となっては研究が進み、日常的にひどい体罰を受けていると前頭前野が萎縮し、聴覚野に異常が起こる…と言うことが、科学的に証明されているのです。

こう考えてみてください。昔は「この薬を飲むといいんだよ」と効果があると思い与えていた薬が、実は最新の研究を重ねていくと「劇薬だった」ことがわかりました。それでもまだその薬を与え続けますか?

__それは与えませんね…。

西崎:子どもに悪影響になることはやめて、新しい育て方を学びませんか?とお伝えしています。

__しつけ、そのものの考え方を変えましょう、ということですね。

西崎:子どもが悪いことをしても短絡的にお尻を叩かれただけでは、「なぜ悪いことをしたのか」と考えるよりも「親に怒られ、叩かれるからやめよう」という思考回路なります。結果、理由がわかっていないので、また似たような行動をしてしまいます。子ども自身が納得して、なぜダメだったかを学んでいく。それが社会で自立して生きていくため、親ができるサポート=「しつけ」ではないでしょうか。

4月から施行されている体罰禁止法とその背景

__体罰禁止の法定化についてですが、2019年6月に成立され2020年4月から施行しています。こちらの法定化に至った経緯を教えていただけますか?

西崎:セーブ・ザ・チルドレンとしては2008年から体罰等によらない子育ての啓発活動を始め、体罰禁止を政府に働きかけていました。体罰や子どもの発達に悪影響を及ぼすという「科学的な観点」と「子どもの権利」という観点からです。実際に世論を動かしたのは、2018年に東京都目黒区で起こった5歳の少女の虐待死事件と、2019年に千葉県野田市で起こった小学4年生の少女の虐待死事件です。子どもたちは大人に対してSOSを発していたにも関わらず、”しつけ”を名目に親たちは児童相談所の職員や学校との面会を避け、子どもたちを助けられなかった…。この2つの悲しい事件が大きなきっかけとなりました。

__本当に居た堪れないニュースでした…。

西崎:この事件が起きるまで、多くが「虐待まで理解できるけれど、体罰禁止までは…」と消極的な反応でした。「お尻を叩かないと、子どもは言うこと聞かないでしょう」という国会議員もいました。また、私たちが2017年に全国2万人の大人を対象に実施した調査では、「しつけのために子どもに体罰をすることにどう思うか」と言う問いに対して、6割の人が何らかの場面で子どもに対して体罰をすべきである」と回答し、社会的に体罰が容認されている状況でした。しかし最近、福井大学の友田明美教授の研究や著書『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版)が脚光を浴び話題に。虐待による脳への影響が科学的に証明されてきたのですが、そんな中で起きてしまった2つの虐待死事件。これらが重なり、社会を一気に動かしたのです。

__あれから、地域で子どもたちを守ろう・育てよう、と言う動きが少しずつ見られるようになりましたね。

体罰は虐待へと繋がってしまうのか…?

__体罰と虐待の関係性はいかがでしょうか?

西崎:痛みを伴う体罰をし続けると耐性ができてしまいます。効果がないともっと強い痛みが必要となり、結果的に虐待につながるのです。子どもは体罰を避けるための知恵をつけ、そこから逃げることを考えてしまいます。やはり、痛みを伴って子どもに教えることには限界があるのです。

__親もエスカレートしてしまう心理状況になってしまう?

西崎:最初は「正座しなさい」だったのが、次第に効かなくなります。すると次はお尻を叩き、今度は手が拳になって、激しく暴行になっていくケースも…。目黒区の事件も「しつけのため」と親たちは証言していました。最初は軽い体罰だったのが、虐待にエスカレートして死亡してしまうまで、行為が至ってしまったのです。

__体罰を繰り返していると、エスカレートして虐待はつながってしまうのですね。まずはそこをしっかり認識することからスタートですね。(後編へ続く)

しつけと体罰の違い、そして、体罰が常習化すると虐待へと繋がってしまう…、この関係性が整理されて明確になりました。何よりも”子どもの権利“に立ち返った時に、一人の人間として尊厳を持って向き合えているかどうか。そこが念頭にあるかどうかですね。これは親子間だけでなく、世の中の全ての大人が、子どもの権利を、尊厳を、当たり前に考えられる社会になってほしい。そう切に願います。後半はより具体的に、コロナ禍における子どもとの向き合い方や、自分のストレスを貯めない方法などを伺いましたので、こちらもぜひ。

体罰の詳しい情報はこちらのサイトをご確認ください。

セーブ・ザ・チルドレンHP「どうなる?子どもへの体罰禁止とこれからの社会」

厚生労働省HP「体罰等によらない子育てのために」

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