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藤原千秋

【家の殺菌・消毒】ウイルス対策は、おうちの洗剤で、できる!

  • 藤原千秋

2020.05.09

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おうちのウイルス対策に、疲れていませんか?

「最近、手が荒れて荒れて、もうガサガサなんです…」

つい先日。リモート打ち合わせ中に、うかがった言葉。

 ご家族にエッセンシャルワーカーの方がおられるAさんは、毎日、玄関まわり、水回り、リビングや寝室に至るまで希釈した次亜塩素酸ナトリウム水溶で消毒をがんばっています。

希釈した次亜塩素酸ナトリウム水溶液はスプレーボトルに入れ、拭く布は素手で持って、直接手には触れないように、布に少しずつシュッシュとして濡らし拭いているそう。

 それでもアルカリの成分は強くて、少しずつ手の皮膚を荒らしてしまっているのでしょう。

それを聞いて、「Aさん、朗報があるんですよ!」と大声を出してしまいました。

「きっとAさんの家にもある、もっと手を荒らさないような、”普通の洗剤”でも、新型コロナウイルスって、不活化できるんです!」

 

ウイルスと細菌は違うもの!

Aさん「え、ほんとですか? っていうか、普通の洗剤って、殺菌できるんですか?!

筆者「いや、殺菌はできません

Aさん「意味がわからないんですが」

そう。この部分、とても混乱している方が多いのですが、新型コロナウイルスを含む「ウイルス」と、私たちがよく「バイ菌」と呼んでいる「細菌」や「真菌(カビなど)」って、全く異なる存在なんです。

 

「細菌」や「真菌(カビなど)」は、「生き物」です。
でも「ウイルス」は、「生き物」ではない
と言われています。

「ウイルス」が「生き物」ではないなら、「殺せません」
でも、「細菌」や「真菌(カビなど)」は、「生き物」ですから、殺せます。

「ウイルス」は、人間など「生き物の細胞の中」 でのみ増えます
一方、「細菌」や「真菌(カビなど)」は、培養実験皿の中や、濡れたハンカチや、まな板の上や、人間などの体内や、皮膚の上でも、増えます。

人間などの生き物の細胞の中に入り込んで増えた「ウイルス」は、増えると飛び出て別の「細胞」のなかに入り込んで、どんどん「ウイルス」に侵された「細胞」を増やしていきます。そうしてある一定の数まで増えたとき、私たちは「発症」します。

そうして増えた「ウイルス」は、咳やくしゃみなどの「だ液」や「鼻水」、「血液」、それから「吐しゃ物」「うんち」などとも一緒に、「発症」した身体の外にも飛び出してきます。

たとえば「ゴホゴホ」という咳で飛び出した、だ液に含まれる「ウイルス」は(いろいろな条件によって一概には言えませんが)、例えばドアノブやエレベーターのボタンの上などにあっても、数日もの間「他人の細胞に入り込んで、そこでどんどん増殖する力」を失わないままであることがあります。

それでは困るので、私たちはなんとかして、この「ウイルス」の「他人の細胞に入り込んで、そこでどんどん増殖する力」を失わせようとします。

そのために、「消毒用エタノール」という薬品の持つ、「脂肪を溶かす力」で「ウイルス」を壊したり、「次亜塩素酸ナトリウム」という薬品の持つ、「強力にタンパク質を酸化させる力」で、「ウイルス」を壊したりしようと、がんばっているわけです。

ちなみに、この営みを、「消毒する」といいます。

「ウイルス」と「細菌」「真菌」は違うものですが、「消毒用エタノール」「次亜塩素酸ナトリウム」は、「細」や「真」を「消毒する」こともできます。ですから、「消毒」のうち、菌に対する一部を指して「殺菌する」ということもあるわけです。

筆者「おわかりでしょうか? ウイルスは殺菌できない、っていう意味!」

 Aさん「はい、なんとか!」

筆者「じゃあ、本題は、ここからです!」

 

「界面活性剤」が、「新型コロナウイルス」を、壊す!

「消毒用エタノール」という薬品の持つ、「脂肪を溶かす力」で「ウイルス」を壊したり、「次亜塩素酸ナトリウム」という薬品の持つ、「強力にタンパク質を酸化させる力」で、「ウイルス」を壊したりすることを、別の言い方で「不活化(ふかつか)する」と言います。

この難しそうな「不活化」が、街中で普通に売られている「洗剤」でも、可能なことが、先日、北里大学の研究グループから報告されたのです。

「洗剤」というのは、油汚れ、皮脂汚れなどといった、さまざまな汚れ成分を、水に溶けやすくする「界面活性剤」という薬剤を主成分とした製品のことです。

 私たちが通常、住まいの床の水拭きや、壁の水拭きや、トイレの便器や床掃除などに使う当たり前の「洗剤」が、なぜ「新型コロナウイルスを不活化させることができるのか?」というと、「新型コロナウイルス」が「エンベロープタイプ」という、「脂肪の膜に覆われたタイプ」の「ウイルス」だからです。

油や脂といった「油脂」を「溶かす」ことのできる「界面活性剤」は、「新型コロナウイルス」を「壊す」ことができた、ということなのです。

身近な洗剤商品での、この結果に加えて、洗濯洗剤の効用(ウイルスがついた服も洗剤で洗えば、不活化できること)や、「消毒用エタノール」の薄め度なども、だいぶ緩くて大丈夫そう(エタノール濃度50%でも不活化できると考えられる)ということも、わかりました。

「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」ほどの強力な薬剤を使わなくても、普段の掃除の流れの中で「新型コロナウイルス対策」ができるということは……

Aさん「朗報ですね!!!」

どうか、みなさんも、この「朗報」を、参考にしてみてください。

***

ただし、余談ですが、「界面活性剤」は、細菌やカビの「エサ」になることがあります。「細菌やカビは、ウイルスとは違う!」ことを、どうかどうか念頭に置いておいてください。

また「消毒」「不活化」できるかどうかとは別に、「ウイルス」を「洗い流す」「拭き取る」作業には意義があります。手洗い、掃除、できるところから、こまめに行っていきましょう。

***

この記事に書いてある内容を、より深く詳しく知りたい方に参考になる資料をおしらせします。

●新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)令和2年5月1日時点版(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

●医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)不活化効果について プレスリリース 掲載日:2020.04.17 北里大学

https://research-er.jp/articles/view/88171


●どんなウイルスで、どのように感染するのか? 新型コロナウイルスのそもそも論(峰宗太郎医師(病理専門医)・薬剤師・研究者)

https://news.yahoo.co.jp/byline/minesotaro/20200421-00174406/?platform=hootsuite


 ●細菌とウイルスは違うって知っていますか?(弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座准教授 齋藤紀先)

https://www.asahi.com/articles/ASJD1541DJD1UBQU005.html

 

●今さら聞けない 「ウイルスと細菌と真菌の違い」(近畿大学病院 輸血・細胞治療センター )

https://www.med.kindai.ac.jp/transfusion/ketsuekigakuwomanabou-252.pdf


●どこがどう違うのか…
「滅菌」「殺菌」「除菌」「抗菌」などの用語(日本石鹸洗剤工業会 (JSDA))

https://jsda.org/w/03_shiki/a_yougo_1.html


 
●新型コロナウイルス、60°Cで 1時間加熱しても生存…夏にも高い感染力が予想(ワウコリアニュース)

https://news.yahoo.co.jp/articles/0316b007ed0813f6298f1ca858062546bdc0698f


●新型コロナ、サージカルマスクの表面で7日間感染力を示す 一般的な消毒方法はいずれも有効、香港大学の研究(2020/4/17 大西淳子=医学ジャーナリスト)

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100031/041700679/?fbclid=IwAR3Nm_IlpN6fwHHYuCA0pB6jAq7KPPaNzNwV5JQ-LJTHvq2B9utg0cUal1Q


●新型コロナ感染症:ウイルスはどれくらい長く物質上にいるのか~残存率低下の条件とは(石田雅彦  | ライター、編集者

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20200414-00173146/?fbclid=IwAR3DH5iOb6p1QiZHRC_riOSvELrnRffBcY_6YFTpGm9K-9-Px1V_bCWbAS0

藤原千秋 Chiaki Fujiwara

住宅アドバイザー・コラムニスト

掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。

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